ロシアで長期に拘留されている、アメリカ人バスケ選手の運命とは?

Society & Business 2022.07.11

米女子プロバスケットボールリーグ(WNBA)のブリトニー・グライナー選手は、7月7日にロシアの裁判所で行われた第2回公判で起訴内容を認めており、ロシアで最長10年の禁固刑を科される可能性がある。

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ロシアの首都モスクワ近郊のヒムキ裁判所に到着したブリトニー・グライナー。(2022年7月7日)photo:AP/Aflo

米女子プロバスケ界のスター選手、31歳のブリトニー・グライナーがロシアで何ヶ月も拘留されている。グライナー選手の同性婚の相手、シェレル・グライナーも言う通り、同選手はオリンピックで2度、アメリカチームに金メダルをもたらした「アメリカの英雄」だ。ところが今年の2月17日、モスクワのシェレメチェボ国際空港で大麻オイルを所持していたとしてロシア当局に逮捕された。祖国からも家族からも遠い地で、これからどんな運命が待ち受けているのかはまだわからない。7月7日、モスクワ近郊のヒムキ裁判所で開かれた第2回公判裁判で、本人は弁護士の助言のもと、起訴内容を認めた。今後、最長で10年の懲役刑に処される可能性がある。

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逮捕の経緯

米女子プロバスケットボールリーグ(WNBA)のフェニックス・マーキュリー所属スター選手、ブリトニー・グライナーは今年の2月、ユーロリーグの試合出場のためにロシアに到着した。仏「リベラシオン」紙によれば、これまでもロシアのUMMCエカテリンブルグでプレーしており、同チームと共に女子ユーロリーグで4度優勝している。モスクワの空港の税関で、ニューヨークから到着したグライナー選手のバッグから「特殊な匂いのする液体」の入ったカートリッジが発見され、大麻オイルであることが判明した。身長206 センチのグライナー選手は、その場で手錠をかけられ逮捕された。だがロシアは3月6日まで、グライナー選手を逮捕したとは公に認めず、ロシア連邦関税局は「米NBAの選手で米国ナショナルチームメンバーとして2度、オリンピックで金メダルを獲得した選手」を拘束していると説明するにとどめていた。

彼女の名前が公表された後、代理人のリンゼイ・カガワ・コーラスは、米スポーツ専門チャンネルのESPNの取材に対し、グライナー選手が家族や所属チーム、WNBA、NBAと「緊密に連絡を取っています」と語った。また、「裁判中であるため、詳細はお話しできませんが、帰国が実現するように働きかけているなかで、選手の心身の健康状態が最大の懸念事項です」とも述べていた。

4ヶ月に及ぶ拘留の末、グライナー選手の裁判が7月1日にロシアでようやく始まった。アメリカ代表チームとして2014年と2018年の女子バスケワールドカップで優勝に導いた経験も持つ彼女への支援を多くのスポーツ関係者が表明している。2022年のNBAチャンピオン、ステフィン・カリー選手は「とにかく今は彼女を家に帰さないと」と語った。釈放を求めるネット署名運動も始まり、すでに319,737人ほどの署名が集まっている。

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バイデン米大統領への手紙

本人も懸命にこの状況から逃れる道を探っており、7月上旬にバイデン米大統領に手紙を送った。「ずっとここにいるのではないかと思うと、ぞっとします。お忙しいことと存じますが、どうか私や、他の抑留されている人たちを忘れないでください。どうか、私たちを家に帰すためにお力添えをお願いいたします」と訴えかけた。

さらに、これまで一度だけ大統領選の投票に行ったことがあり、それは2020年で、バイデン大統領に投票したこともつづられていた。「あなたを信じています。自由になってやりたいことがたくさんあります。私を助けてください。妻に会いたい。家族に会いたい。チームメイトに会いたいのです」と手紙にはあった。米デジタルメディアの「ザ・カット」の記事が指摘するように、グライナー選手がロシアで逮捕されたことは、「著名アスリートであること、そしてLGBTQ+(性的マイノリティ)の黒人女性としてのアイデンティティ」を抜きにしては考えられない。ウラジーミル・プーチンは、ずっと同性愛反対を貫いており、2020年に「すべての人のための結婚を合法化することはない」と発言している。

 

トップアスリートの拘束条件や厳しい処遇の詳細が明らかになってしまうため、手紙の全文は公開されていない。彼女の弁護士によると、ロシア当局の管理下で、米国との間のやりとりは許されているとのことだ。

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囚人交換の可能性

アメリカでは現在、多くの人がグライナー選手の解放を求めている。ホワイトハウス報道官、カリーヌ・ジャン=ピエールは「ブリトニー・グライナーを安全に連れ戻すために全力を尽くします」と言うが、果たしてどのように実現可能なのだろうか。2月24日にロシア軍がウクライナ侵攻を開始したわずか数日前、ロシアで逮捕されたグライナー選手は今後、外交や政治の取引道具となる可能性が十分にある。

そうした意味で、いくつかのシナリオが考えられ、米国やNATOとの緊張関係が続くプーチン政権に利用される可能性は否定できない。ニューヨーク・タイムズ紙では「ウクライナ侵攻をめぐってワシントンとの間に先が見えない政治的・経済的対立が続くなか、ロシアは著名なアメリカ国民を拘束することで自国に有利な一手を打ったのかもしれない」と二人の記者が口をそろえて指摘した。早くも囚人交換の相手として、2012年に米国で懲役25年の判決を受けたロシアの武器商人、ヴィクトル・バウトの名前も噂されている。

text: Léa Mabilon (madame.lefigaro.fr)

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