「癒やしと解放」の企業研修が、いま注目される理由。

Society & Business 2022.12.12

いま、ユニークな企業研修を提供し、注目を集める起業家がいる。銅鑼(どら)を使った瞑想「ゴングメディテーション®(Gong Meditation)」の日本初のガイドとして活躍するMana&Co.の小川麻奈さんだ。瞑想のセッションを取り入れた企業研修は、従業員のクリエイティビティを引き出しサステイナブルな環境を作ることに役立つと好評で、起業からわずか4年で一部上場企業や世界的ラグジュアリーブランドグループの研修にも採用されるまでになった。

麻奈さん自身、もともとはいわゆる“バリキャリ”のビジネスウーマン。日本とシンガポールで会社員として働き、2019年に帰国、起業。現在は「個人と組織の“ウェルビーイングな生き方・働き方”」に関わるさまざまな案件を手がけている。そんな彼女が「癒やしと解放のジャーニー」と表現する、起業までの道のりを聞いた。

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小川麻奈(おがわ・まな):株式会社Mana&Co. 代表取締役、セルフアウェアネス・プログラム・デザイナー/ゴングメディテーション®・ガイド、ヒプノセラピスト、組織開発コンサルタント。国内外で約12年ほど人材関連業界での経験を経て、 よりホリスティックに人と組織の可能性の支援をしたいという想いから株式会社Mana&Co.を設立、代表取締役に就任。ビジネスパーソン、アーティスト、日本初のゴングメディテーション®を提供するパイオニアとして活動し、受け手に深い安心感を与えるメディテーションガイドが好評。最近では身体性・全体性からアプローチする企業向けのリーダーシップ研修やセルフアウェアネス研修の企画・運営等含め「個と組織の”Well-being”な生き方・働き方」に関わる様々な案件を手がけている。上場企業や有名外資系企業を含め、各業界で活躍する経営者やビジネスリーダーなどをクライアントに多くを持つ。
https://manaandco.com/

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ビジネスウーマン、ゴングにハマる。

「麻奈ちゃんと話すと元気になる」——小さな頃からそう言われてきた小川さん。自分の特性を活かし、将来は人を元気付ける仕事に就きたいと考えていたという。大学卒業後は「働く時間が楽しくなるように手助けできる仕事に就きたい」と、人材関連業界に就職。さまざまな人の転職をサポートする傍ら、「転職以外でも自己実現できる場所を作りたい」と、女性が自分の“なりたい”をかなえられるコミュニティ「Girls Bee」を立ち上げるなど、人の“なりたい”を後押ししてきた。

そして30歳の時、自分自身の“なりたい”をかなえたいと一念発起。シンガポールの米国系人材企業に転職し、現地に移住。プロジェクトマネージャーとして働くことに。小さな頃からの夢だった海外生活は充実したものだった。英語を使ってさまざまな国籍の同僚たちと渡りあい、仕事にもやりがいを感じていた。

一方で、母国語ではない言語でのコミュニケーションと仕事で扱う膨大な情報量で、脳はとても疲れていたという。ゴングメディテーションに出会ったのはそんな頃だった。

ゴング(Gong)は日本語では銅鑼。さまざまな文化圏の儀式や宗教的な行事に古くから使われてきた楽器で、横たわってその音に心身を委ねるだけで、深い瞑想状態に導かれるという。ゴングの音は、脳を深いリラックスした状態に導き、短時間でも脳や身体の疲労回復、自律神経を整える効果があるとも言われており、海外では急速に普及しているメディテーションだ。

「ゴングの音を浴びると初心者でも深い瞑想状態になりやすい。日々いろいろ湧き出る感情も人間関係もリセットされると感じるんです。気が付いたら通うようになっていて。二週に一回は行きたい、月一回は行かないと気持ちが悪くなったんです」(小川さん、以下同)

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「なりたい自分になる」から「ありたい自分で生きる」へ。

シンガポールで働きながら、ゴングメディテーションに通い続けていた麻奈さん。ある時、休暇で訪れたバリ島で忘れられない体験をする。

「小さな原付でライスフィールドを走っていた時に、夕焼けがあまりにも綺麗で……。それを見てはっとしました。私こんな綺麗な夕日ちゃんと味わったことあったかな?って」

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人生のターニングポイントは、バリで見た美しい夕焼けだったという。photography: Mana Ogawa

それまでは、目標を掲げ、“なりたい自分”に向かってたゆまぬ努力を続けてきた。ところがその時、「目の前にある些細な幸せ、何でもない幸せを味わったことがあっただろうか?」と自問自答したという麻奈さん、「ゴングメディテーションを受け続けていて、身体や脳が解きほぐされていたことが、自分の感性に気づくことに繋がったんだと思います」と振り返る。

その時から、「なりたい自分を目指す」人生から、「ありたい自分で生きる」という人生にシフトしていった。「もちろん、なりたい自分に向かって頑張るジャーニーは楽しいし、時として必要な時はある。けれど、私が一番大事にしたい軸は、この瞬間に私がここにいて、この地球での現実を味わってハッピー!と毎日思って生きることだと気が付きました」

そして後日、ゴングメディテーションを受けている時に、ある考えが頭をよぎる。「ゴングメディテーションのガイドを私自身がやりたい。日本に帰って、ビジネスリーダーや恵まれたバックグラウンドがありながら世間体や社会のいろんな圧力にもがいている人たちを、ゴングメディテーションやそれ以外の方法でも支援したい。日本社会独特の圧力から解放されたら、きっともっとすごいことができる人たちがたくさんいる」

シンガポールに移住して4年弱。思い立ったらすぐ行動の麻奈さんは、仕事を辞めシドニーへ飛び、ゴングメディテーションのマスターの資格を取得。その後日本に帰国し、人と組織の“ウェルビーイング”な生き方・働き方を提案する株式会社Mana&Co.を立ち上げた。

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「ビジネスとスピリチュアリティの融合」

「あの人、悟りひらいちゃったのかな?」「スピリチュアルな世界に行っちゃったのかな?」——麻奈さんの突然のキャリアチェンジに驚く人もいただろう。ビジネスとスピリチュアリティは一見相反する要素にも見えるが、麻奈さんのテーマは「ビジネスとスピリチュアリティの融合」。ビジネス/スピリチュアルと分断するのではなく、頭、身体、心、そして魂にもホリスティックにアプローチすることこそ、個人、そして組織の可能性を引き出せると考えている。

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Mana&Co.が展開するサービスの一部は、麻奈さん自身がメインキャラクターとなり、その独自の世界観を演出している。その神秘的な雰囲気は、これまでの”バリキャリ”の麻奈さんとはまったく異なる。photography: Mana&Co.

「会社名のManaは、ハワイの言葉で“内なる力”という意味があります。Mana&Co.のコーポレートスローガンは『Believe in your power within. 内なる力を信じる』。私自身、自分が持って生まれた能力や個性・特性、そしてこれまで自分が培ってきた経験をすべて使いながら、個人や法人のクライアントに対し、あなた自身が持っている力を信じてください、とお伝えしています」

麻奈さんが展開するさまざまな事業のうち、主軸事業となりつつあるウェルビーイング領域の企業研修はいま、一部上場企業や世界的ラグジュアリーブランドグループの研修にも採用されている。法人クライアントからは、「数字だけではなく、一人ひとりの感性を体現できることが組織の理想の姿。社員の感性を耕したい」という依頼のもと研修をおこなっている。セッションでは、頭で理解し、心の深いところを探り、脳と身体をリセットするというアプローチを取っているという。

「ゴングメディテーションだけをやりましょう、となると瞑想やウェルネスに興味がある人にしか関心を持ってもらえない。でも、Mana&Co.の企業研修は、自分の可能性や生産性を最大化させていくために、まずは自分の身体や心を論理的に理解しましょう、という設計なので、ビジネスマインドの強い受講生のモチベーションも上げられます。さらに神経科学や脳の仕組みなどアカデミックな理論と私自分の経験を交えながら講義もしています」

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麻奈さんの企業研修は、瞑想やウェルネスに興味のある人だけでなく、ビジネスマインドの強い人にも好評だという。photography: Mana&Co.

社員が自分らしく働けるようサステナブルな仕事環境を整えたい、という理由で仕事を依頼する企業も多いという。

「ここ数年、社会全体で働き方や働く環境の柔軟性が高まり、処遇・待遇面と同じぐらい、『自分らしくいられる環境』かどうかを重視する人も増えているように感じます。だからこそ、社員がイキイキ自分らしく働ける環境を整えていくことが企業の急務。そうすることで短期での離職や、昇進を選ばないという現象を未然に防ぐことができます」

企業研修を通して、一人ひとりがその企業の中でどんな働き方をしたいか考えていける基盤を作りたい、そう麻奈さんは考えている。

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ありのままの自分でいること。

さまざまな活動を経て、「ありのままの自分」を大切にするようになったという麻奈さん。
「ありたい自分で生きること。仕事する時も、仮面つけたり無理したりしないで、ありたい自分の姿のままでいたい」と自身の美学を語る。

「ゴングメディテーションのセッションを広めてくださったのは、創業したばかりの頃に私のセッションに個人で来てくれた方たち。口コミで友だちをどんどん呼んでくれたり、うちの会社でもやってほしいと声をかけてくださったりして、セッションを広めてくれました。それはきっと、私自身がゴングメディテーションによって頭と心と身体、そして魂が解放されて人生が変わったという強い原体験があること、そしてそんな素晴らしい体験を、ひとりでも多くの人に体験してもらいたいという心の奥深いところの願いが、ゴングの音に載って伝わっていった結果なのではないかと感じています」

最近ではゴングメディテーション以外にも、「個人と組織の“ウェルビーイングな生き方・働き方”」に関わる案件に携わることも増えてきた。

「起業してから、ミラクルとしか思えないようなことが毎日起き続けて驚いています。いま、私が感じているのは、『自分の心の奥の本当の願い』を自分自身がかなえてあげようとする時、奇跡は本当に起きる』ということ。日々小さな『自分の心の願い』に耳を傾け続けてきたからこそ、いまがあると感じています」

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現在は鎌倉と東京との2拠点生活を満喫しているという麻奈さん。photography: Mana Ogawa

「日本社会に癒やしと解放を届けたい」と、Mana&Co.を立ち上げてまもなく4年。「この4年間で一番癒やされ、解放されたのは、私自身」と麻奈さんは振り返る。「自分から出てくるメッセージは一見、『誰かに対して価値提供したいこと』に見えるけれど、実はその価値を一番必要としているのは自分自身。この4年間で私自身の“癒やしと解放”が深まったので、来年からはより大きなエネルギーで、世界に“癒やしと解放”のエネルギーを届けられるように絶賛準備中です」

“自分の内なる力”を信じて前進する麻奈さん。その姿はこれからも、自分らしく生きたい、自分らしく働きたいと願う多くの人を勇気付けてくれるだろう。
 

text: Naoko Hattori

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