同じ仕事、同じ習慣......抜け出した方が良いタイミングとは?
Society & Business 2023.01.10
セキュリティゾーンは名前の通り、安心だと感じられるゾーンのこと。しかしその中にいる者を閉じ込めたり、やる気を失わせたりする可能性もある。そこから脱出するためのサインを見逃さないようにしよう。
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セキュリティゾーンから抜けだした方がいいと示してくれる5つのサイン。photography: Getty Images
数年前から同じ時間帯に、同じ同僚と同じ仕事をしている。それは暖かいスリッパのような、なんとも心地よい日常。金曜になると同じレストランに行き、日曜のジョギングコースは2年前から変わっていない。あなたはきっと“セキュリティゾーン”の中にいるのだろう。それは「慣れ親しんだ、安心を感じるゾーンです。日常の中にある居心地がよい一連の習慣のことです」と臨床心理学者、セリアンヌ・モレールさんは説明する。
しかし物事を円滑に進めてくれるこの枠組みは、私たちを閉じ込めている可能性も。それを伝えるサインがいくつかある。日常的に重さを感じる、退屈だと感じる、習慣を変えたり慣れていないことを面倒だと思う、もしくは恐怖を感じる。徐々にモチベーションや自信をなくし「落ち込んだり不安を感じたりするようになることもあります」と心理学者は言う。身体や脳が送る危険信号をリストアップしてくれた。
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今まで居心地よかったものがそうではなくなってきた
まず注意すべきサインの一つは、それまで小さな気がかりでしかなかったものが、自分の成長にブレーキをかけていると気づいた時だ。つまり小さな支障がだんだん大きくなり、心を支配するようになり、害を及ぼすと気づいた時。例えば新しいアパート探しに立ち向かうのを恐れるが故に家の小さな欠点には目をつぶっていたが(大都市でのアパート探しは、まるでジャングルに挑むような闘いにもなり得る)、それが耐え難いほど大きくなった時だ。アパートの欠点がアパート探しの面倒さを上回ったら、変化を起こすタイミングだ。「不快さを感じることは、行動に移る起爆剤となり得ます」と心理学者のセリアンヌ・モレールさんは言う。
苛立ちを感じる
不快感や苛立ちを頻繁に感じるようになったら、それはルーティーンを変える時が来たことを示している。心理学者から見ると、それは今の状況が耐えられなくなったというサインだ。「仕事の同僚に我慢できなくなったり、雑音や満員電車が耐えられなくなったり。色々なことが受け入れがたくなってきます」と専門家は説明する。この苛立ちは、モチベーション一般の低下につながることもある。「朝起きるのがつらくなったり、疲労を感じたりするかもしれません」
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不安や悲しみを感じる
現状が気に入らなくなり、変化が必要だと感じ始めると、極端な形で不快感を覚えるようになる。「パニック、圧迫感、悲しみを感じたり、過敏になって泣き出してしまったりすることがしばしば起きるようになります」とセリアンヌ・モレールさんは説明する。
自信をなくしてしまう
自分に自信を持てないと、日常の中に逃避しまうことがある。「ルーティーンを管理できていることに安心し、別の生き方はできないと信じきってしまいます」。しかし、これは悪循環でしかない。あまりに長い間セキュリティゾーンに浸っていると、新しい方向に舵を切り、新たな環境に適合する能力があると信じられなくなる。「同じことを繰り返すルーティーンにとどまって行動を起こさない。自発的に行動できることを自分に証明しない。そのようである限り、自信を得ることは難しいでしょう」と専門家は指摘する。ほとんどの人は変化を恐れているとモレールさんは言う。しかし、恐れている時こそ挑戦してみるべきなのだ。「試さなければ、成功できることに気づけません」
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仕事がつまらない
職場ではセキュリティゾーンは何よりも魅力的なものだ。好きなポジション、完璧にマスターできるタスク、仲のいい同僚……日常の環境が与えてくれる快適さは確かに貴重なものだ。しかし、これはいとも簡単に“退屈”に変わってしまうこともある。自分の能力を最大限に発揮していないから、仕事によって活気づくことがなくなる。まるでピアノのソフトペダルを踏んでいるようだ。「それが普通です!」と女性リーダーシップのコーチであり、Leader Woman Impactというコミュニティの創設者シーヌ・ランズマンさんは言う。「新しいプロジェクトに移行する前の、職業上の進化サイクルにおける、最後のステージですから。」
進化しないことは、停滞を意味するわけではないと彼女は強調する。「そこから抜け出してもいいし、とどまることもできるということです」。しかし変化にうずうずし、十分なエネルギーがあるのなら、それは仕事の新しい目標に乗り出す時だ。「上司よりもうまくできると思うなら、責任のある地位につき、なんならリーダーになるタイミングですよ!」とシーヌ・ランズマンさんは後を押す。
セキュリティゾーンから抜け出すにはどうしたらいいの?
日常をひっくり返し、ある日突然全ての習慣を変える必要はない。心理学者のセリアンヌ・モレールさんは、むしろゆっくり一歩ずつ始めることをすすめる。
「“自分が変化するために、毎日できる小さな行動はなんだろう”と自分に問いてみてください」
習慣を変え、自信を取り戻してくれるなら、どんな変化でもよい。例えば朝10分早く起きる、日中に10分間の瞑想を取り入れる、日常的に運動をする時間を設けるなどを彼女は提案する。「考えるよりも動くこと! 仕事の面においては、研修を受けたり、新しいプロジェクトを始めたり、別のチームと企画をするタイミングですね」とランズマンさんはつけ加えた。
text: Lena Couffin (madame.lefigaro.fr) translation: Hana Okazaki, Hide Okazaki