アートを生涯の仕事に選んだ女性たちのリアルボイス。 アート界で働く次世代をサポートし、日本のアート界を活気づけたい。

Society & Business 2023.01.11

ギャラリスト、キュレーターなどアートに関わる仕事はさまざま。一般には伝わりづらい、アート業界で働く人々はどんなきっかけで仕事を始め、どのような想いで働いているのか。世界を舞台に活躍する4人の女性の声を訊いた。


山下有佳子 / ACKディレクター

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profile
1988 年、東京都生まれ。京都で茶道具商を 営む家庭に生まれる。慶應義塾大学法学部卒業後、 ロンドンのサザビーズ・インスティチュート・オブ・アートにてアート・ビジネス修士課程を修了。サザビーズロンドンでのインターンを経て、サザビーズジャパン勤務。2017〜2022年「THE CLUB」のマネージングディレクターを務める。2020年より京都芸術大学の客員教授に就任。2022年「Art Collaboration Kyoto」プログラムディレクターに就任。

 

アートに関わる仕事を始めて10年、着実にキャリアを積んできた山下有佳子。京都の古美術商を実家にもち、小さな頃からアートが身近にあった彼女がアートビジネスに興味をもったきっかけは、小学生の頃に観た荒木経惟の写真展。「ヌードの写真が美術館で展示されており芸術作品として評価されているということを知り、ハッとさせられた瞬間でした」

サザビーズジャパンでは抽象画家、白髪一雄の作品が 3,905,500ユーロ(約5億円)で売れたパリのオークションを担当し、GINZA SIX内のギャラリー「THE CLUB」では日本では知られていない海外のアーティストを積極的に紹介した。そして、昨年スタートしたアートフェア「Art Collaboration Kyoto(ACK)」のプログラムディレクターに抜擢される。ACKは日本と海外、アートと異分野、行政と民間といった“現代アートとのコラボレーション”をテーマにした、昨年スタートしたばかりのアートフェアだ。「アート界全体を構造としていま一度勉強したい、業界をよくしていくことがこれからアート界で働く次の世代に繋がる、そう思っていた時にACKの話をいただきました。京都は芸術系の学校が多く、新しい才能が集まっている街。若い世代や子どもの美術教育のサポートに力を入れながら、ACKの個性と意義をしっかり確立していきたいです」

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大学で法学部に進んだ理由は?

アートビジネスやファッションに興味がありましたが、それを学べる大学はない。だったら、今後絶対に自分からは行かないであろう世界に飛び込んでみようと、法学部の政治学科を選びました。

仕事においての夢や目標は ありますか?

いますごく興味があるのは、これからアート界で働く次世代のサポートや、子どもの美術教育。子どもの教育はACKでも取り組みますが、ライフワークにしていきたいと思っています。何年後かには、他の仕事と同様にアートの仕事に就くことが当たり前になっている仕組みができていてほしい。そして、 日本のアート業界をニューヨークやロンドンに並ぶような国際色豊かなものにしていきたい。

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ファッションを好きになったのは、オートクチュールの一点ものに芸術性があることに気付いたから。アートを仕事にしようとサザビーズの大学院に留学し、自身が最年少という環境の中、タフさや専門知識を身につけた。 ©Courtesy of Sotheby’s

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2014年、サザビーズパリでのオークションの写真。現代美術のセールスを担当し、戦後日本を代表する抽象画家である白髪一雄の作品「激動する赤」が約5億円で落札された。©Courtesy of Sotheby’s

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アート界で働く上での悩みや葛藤はありますか?

日本のアート界が抱える、新卒後の働き方や入り方がわからないという問題。私自身アーティストを支えるアートビジネスに関わりたいと思ったけれど、それを学べる場所がなく、サザビーズの大学院に留学しました。大学で専門知識や英語力を培っても、アルバイトとして働くしかないので、その才能を繋ぎとめることが難しい。個人的な経験としては、年功序列で男性が圧倒的に多い世界なので、自分が薦めるものにどう説得力をもたせるか苦労しました。

仕事を通じて、喜びややりがいを感じるのはどんな時?

アートやアーティストの新しい価値を創っていくのが仕事。自分たちがいいと信じたものを世の中に発信して認められた時に、喜びや達成感を感じます。いつも大切にしているのは、新しいことにチャレンジして突き進む気持ち。ACKも新しい挑戦だからみんなで創り上げていく楽しさがあるし、アートを違う分野に繋げることもおもしろいです。

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GINZA SIX内のギャラリー「THE CLUB」では新たな才能を見い出し発信する場所として、日本のアート業界の活性化に貢献。

コロナ禍で、アート業界はどう変わったと感じますか?

情報のグローバル化で薄まっていた個々の感性に立ち返り、見直すきっかけになりました。30〜40代の新しいアートコレクターが増えたことはうれしい変化だと思います。

*「フィガロジャポン」2022年9月号より抜粋

アートを生涯の仕事に選んだ女性たちのリアルボイス。

text: Natsuko Konagaya

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