討議中も授乳可になったイタリア議会、その背景にあるもの。

Society & Business 2023.02.01

イタリアで、女性議員たちが討議中に授乳できることになった。議会の内部規律委員会による決定だ。左派だけでなく、極右政党からも勝利の声が上がった。

MF_breastfeeding.jpg討議中の授乳が認められたイタリアの女性議員たち。この措置に左・右両派の議員から勝利の声が上がっている。(写真はイメージ) photography : iStock

これまでイタリアの女性議員が授乳する際には、会議場を出て、廊下を渡り、隣接する専用室まで行く必要があったが昨年11月、イタリア議会の内部規律を決める委員会が、今後、女性議員は、議場内で母乳を与えることができるようになると発表した。女性が育児と仕事を両立させられる社会を目指すフェミニスト運動にとって、この新しい措置は重要なステップだ。

今回の法案を提出したのは、左派政党「五つ星運動」のジルダ・スポルティエッロ議員。『フランス・アンフォ』が報じたところによると、スポルティエッロ議員は「いかなる女性も授乳か仕事のどちらを取るかで選択を強いられることがあってはなりません。残念ながら、現在、この状況のせいで、女性たちは赤ちゃんが3~6ヶ月になると母乳育児を断念しています」と主張した。そうしたわけで、子どもが1歳の誕生日を迎えるまで、議場内での授乳が許可される運びとなった。

イタリアの右派政党「フォルツァ・イタリア」代表で欧州議会議員のリチア・ロンズーリ。

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極右のフェミニズム

この勝利は、左派にも右派にも歓迎されているようだ。今回の措置が発表されると、先の9月25日にイタリア首相に選出されたジョルジャ・メローニもさっそくコメントを発し、喝采を送った。先週発表された公式声明のなかで、極右政党「イタリアの同胞」党首であるメローニは今回の規定見直しに興奮を隠しきれない様子でこう述べた。「出産・育児、子ども、家族への配慮という点で重要なサインであり、仕事とプライベートのバランスを取るという方向へ一歩前進した」。しかし、改革の掛け声のもとに、表向きは左派と極右が同調しているように見えるものの、極右の政治信念は左派のそれとは異なっている。

メローニ首相は自ら唱える反進歩主義思想に信頼性を持たせるために、女性であり母親であることを選挙キャンペーンの基盤とした経緯がある。2019年秋の政治集会で彼女は「私はジョルジャ、私は女性、私は母親、私はイタリア人、私はキリスト教徒。誰も私からこれを取り上げることはできない!」と宣言した。いかなる場でも授乳できる環境づくりという発想は彼女の演説から必然的に導き出される結論だ。首相が今回の改正に同意したことをある種の解放と見るフェミニストもいるものの、保守派が第一党を占めるイタリアで、長い目で見ると、新しい形の押し付けを生むではないかと懸念する人たちもいる。ちなみに2019年にメローニ首相自身も同様の改革案を提起したことがある。

その上、メローニ首相はこの「何がなんでも母親」という理念を自ら完璧に体現している。母親としての役割を決して疎かにしない彼女は、昨年11月15、16日にバリ島で開催されたG20サミットに出席した際、6歳の娘を同行させたことで論敵たちの怒りを買った。論争が起きると、首相はすぐにフェイスブックでこう反論した。「この件で白熱した議論を交わしている人たちに、私は次のように聞かずにはいられません。“私の娘がどんなふうに育つかべきか、それがあなた方に関係あると思っているのですか?”と。なぜなら、改めてお知らせしますが、そうではないのです。私には自分が望むやり方で子どもを育てる権利があります。この国からひとりの母親を奪うことなく、この国のために私にできるあらゆることをする権利があります」

首相のこの反応に、わが意を得たりと頷いたのは、イタリアの右派政党「フォルツァ・イタリア」代表で欧州議会議員のリチア・ロンズーリだ。2010年に彼女は授乳が許可されているストラスブールの欧州議会での会議に娘のヴィットーリアを抱いて出席し、物議を醸したことがある。「仕事と家族の両立に関して、規則を定める立場にある公の組織こそ、手本を示さなければならない」と当時彼女はツイートしている。 では、母乳育児が結果としてより大きな性差別を助長しているとしたら?

text: Léa Mabilon (madame.lefigaro.fr)

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