ニュージーランド前首相、退任のスピーチで纏った「金色のマント」とは?
Society & Business 2023.04.11
ニュージーランド議会で前首相が4月5日、退任の挨拶をおこなった。感動的なスピーチの際に着用していた服にも、実は強いメッセージがこめられていた。
マオリとマオリ固有の挨拶「ホンギ」をするジャシンダ・アーダーン。(シドニー、2023年) photography: Don Arnold - Getty Images
ジャシンダ・アーダーンは37歳の時、ニュージーランド史上最年少の女性首相に就任した。2023年4月5日、議会で退任の挨拶をした前首相は白いドレスの上からエレガントなゴールドのマントをはおっていた。しかしながらこの装いは単に美的観点から選ばれたのではない。政治家として最後のスピーチに臨んだ前首相のマントは「コロワイ」と呼ばれるもの。ニュージーランドの先住民族マオリの伝統的な衣服で、一般的には羽毛などを装飾にあしらい、織物で作られる。出来上がるまで熟練者でも1年以上かかることがあり、偉大さと尊敬の象徴とされている。
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伝統的な衣服
「コロワイ」は、もともとマオリが家族代々受け継ぐ正装のマントだ。いろいろな種類があり、織り方ごとに名前が異なる。どれにも意味がある。マオリ固有の服とみなされていたが、20年ほど前から少し様子が変わってきた。平等の印として国賓級の政治家その他の要人への贈り物になったり、一般のニュージーランドの人々も特別な日に着たりするようになってきたのだ。今回、ジャシンダ・アーダーンは格調高いマントとして着用した。もっとも彼女がマオリの服を着るのはこれが初めてのことではない。
前首相がなぜこの服を選んだかと言えば、マオリの権利や文化を常に擁護してきたからだ。2018年には、失われつつあるマオリ語を娘に学ばせると宣言した。同年、イギリスのバッキンガム宮殿でのエリザベス女王の晩さん会で「コロワイ」を着用し、関係者を喜ばせた。
4月5日、この服を着た前首相は感動的なスピーチをおこなった。「私は、これまでとまったく違うことを証明できたと思っています。心配性で繊細で、優しくて感情がすぐに現れてしまっても大丈夫ということです。母親であろうとなかろうと、元モルモン教徒であろうとなかろうと、オタクでも泣き虫でも甘えん坊でも、それらすべてであってもここにいることができるし、指導者にもなれるのです」と。もちろん、「コロワイ」を着ていても。
text: Sarah Renard (madame.lefigaro.fr)