「アフターコロナ、日本人は笑い方を学びにセミナーへ」フランスでの報道が話題に。

Society & Business 2023.07.16

2023年2月、日本でマスク着用の考え方が見直された。3年間で「顔パンツ」化したマスクに隠れて暮らすことに慣れた日本人は幾つかの自然な振る舞い、特にどう笑顔を浮かべるかを忘れてしまったようだ。※フランス版「madame FIGARO.fr」の記事を翻訳。

 

笑顔トレーニングスクールが日本で大流行。Twitter@Reuters

笑顔を学びなおそうと呼びかける笑顔トレーニングが日本で人気を呼んでいる。2022年末から受講者が急増し、4倍になったところもある。フランスではマスクを外して1年以上経つが、日本では最近までマスク着用が強く推奨されていた。しかしながら今年の2月、政府は公共の場でのマスク着用を個人の判断に委ねる決定を下した。

これより新たな動きが生まれた。顔を隠して暮らすことに慣れた日本人の多くは制約から解放されても笑顔をどう浮かべればいいのかわからない。こうして2023年2月以降、多くの日本人が慌ててボディランゲージ講座に駆け込み、忘れかけていた笑顔をトレーニングすることで世界に適応しようとしている。

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幸せになるために

「笑顔レッスン」はマンツーマン、あるいはクラス形式でおこなわれる。テーブルに座った参加者には、まずマスクを外すことに慣れてもらい、次に表情筋のトレーニングをおこなう。6月5日、ロイター通信社は、川野恵子さんの笑顔トレーニング講座を取材した。取材当日は東京のアートスクールの学生十数名が受講しており、めいめいが小さな鏡を持って、川野さんが見守るなかで目を細め、歯を見せて笑う練習をしていた。

川野さんの会社「笑顔育」では「ハリウッド式笑顔術」を提唱している。商標登録もされているこのメソッドでは表情筋を動かし、「三日月型の目元」や「丸みを帯びた頬」を作り、上歯8本を見せる練習をする。顔認識ソフトを使い、受講生の笑顔チェックもおこなう。レッスンを受けにくるのはマスクを着用しつづけることに慣れてしまった販売員が多いが、採用面接を控えた若者もいる。

笑い方を学び直すことは「ソーシャルスキル」トレーニングになるだけでなく、幸せになることにもつながる。「笑顔は幸せの代名詞です。意図的に表情筋を動かすことで脳に信号が送られ、たとえ幸せだと感じていなくてもポジティブな感情をもたらします」と川野さんはロイターの記者に語った。

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ポストコロナ時代

川野さんは医療系の資格を持っているわけではない。だがもう何年も前から笑顔レッスンをしてきた。単にポストコロナ時代の流行りに乗っているわけではないのだ。マーケティング分野のトレーナーとして活躍後、2017年より老人ホームや民間企業で笑顔レッスンを始め、やがて個人レッスンもおこなうようになったことを、5月15日のニューヨーク・タイムズ紙に語っている。個人からの依頼では、最高のコンディションで結婚式に臨みたいとか、就活を有利にしたいといったニーズがあるそうだ。

川野さんが指摘するように日本ではフランスと異なり、笑顔を浮かべる習慣がコロナ前からあまりない。ニューヨーク・タイムズ紙に対し、川野さんは「日本では笑顔よりもお辞儀が重視され(中略)、日本人女性の中には、食べたり笑ったりする時に口元を隠す人もいます」と語っている。日本で西洋文化は大いに受容されているが、笑顔は主に西洋文化に根ざしたものだそうだ。

いずれにせよ、マスクの着用が個人の判断に委ねられても相変わらずマスクを愛用する日本人が多いのは驚くにあたらない。5月におこなわれた調査で日本人の4人に3人が、主に衛生上の理由から、これからも「顔パンツ」マスクを使いつづけると回答している。

text: Léa Mabilon (madame.lefigaro.fr)

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