配偶者の親友に恋した女性......彼女が迎えた末路とは?

Society & Business 2023.09.02

恋しちゃいけない相手がいるとすれば、それは配偶者の親友だ。そうとわかっていても思いを止められないのが恋というもの。妬み、罪悪感、不安……の物語。

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羨望、罪悪感、不安:配偶者の親友を好きになってしまったら。photography:whiteisthecolor / Getty Images/iStockphoto

フロリアンヌは毎晩、夢をみる。それは夫の親友と浮気している夢。目覚めるとなんとも言えない嫌な気持ちになる。「自分でも、なににムカついているのかわからない。隣に寝ている人の友だちに性的妄想を抱いたからなのか、違う相手とベッドを共にしているからなのか」とフロリアンヌはため息をついた。どちらの男性ともそのことを話したことはない。しかも行動は一切起こしていない。それでも自分のことを「夫の親友と寝る典型パターン」のように感じている。どうしてそうなってしまったのだろう。「この上なく自然にこうなった。最悪ね」と彼女は答えた。

37歳のフロリアンヌはラグジュアリー産業のインターナショナルバイヤーだ。7年前に39歳のジュールと結婚した。彼の方は全国ネットのテレビ局の管理職だ。夫の親友のマチューとは、夫とつきあいはじめてすぐに知りあった。「ジュールはひとりっ子だったから、仲良しの友だちが家族のような存在。その人たちに紹介される前からそのことは彼から何回も聞いたわ」とフロリアンヌ。だから夫の友だちにいよいよ会う晩はとても緊張した。「彼らの意見がどれほど重要かわかっていたから気に入ってもらいたかった。とりわけ毎日のように話に出ていたマチューには」と考えていたフロリアンヌの努力の甲斐あって、その晩は大成功、彼女はグループの一員として受け入れられ、特にマチューと仲良くなった。「それはある意味当然だった。彼はジュールの分身であり、趣味や好きになるものも共通していたから」だったのだが、年々一緒にパーティーや旅行に出かけるに連れ、仲はさらに深まった。「もちろん何もなく極めてちゃんとしたお付き合いよ」とフロリアンヌは釘を刺す。

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徐々に深まった仲

しかし2021年、父親ががんと診断されたことがきっかけで夫の様子がおかしくなった。自分の殻に閉じこもり、「何を言っても聞く耳を持たない」状態だ。そのことを話すだけで喧嘩になってしまう。なすすべもなくフロリアンヌはマチューに相談することにした。数時間後、飛んできたマチューはジュールを「友達で」散歩すると郊外に連れ出してくれた。

義父の治療期間中、フロリアンヌは状況をマチューに逐一報告した。「深刻にならないよう、暗号を決めた。夫ジュールの気分転換に来て欲しいときは911の半分、455.5をメールすることに」と彼女は微笑んだ。義父の健康状態は良くなり、夫の精神状態も改善した。夫婦仲はどうだろう。「一見順調。でも、夫の具合が悪かったときに支えてあげられなかったという思いが頭から離れない。夫から避けられたこともあったし口論もしたしセックスレス……元通りというわけにはいかない」

フロリアンヌとマチューは今でもやり取りが続いている。ときにはそれが一晩中だったりもする。そして「どことなく思わせぶりな仕草」、「挨拶するとき、少し長めのハグ」、「ダンスフロアでの軽く触れあう」ことが続いた。フロリアンヌは最初、意識しなかったが徐々に自問自答するようになった。この念入りな身支度は夫のため?それとも夫の親友のため?と。ある晩のことだった。マチューが唇にキスしてきた。フロリアンヌの息が止まった。夫は隣室にいた。「マチューはごまかそうと、そこに残っていた人たち全員の唇にキスをした。夫も含めて。後から酒に酔ったと言い訳をしていた」とその時のことを彼女は振り返る。翌日、マチューからはキスのことが忘れられないというメッセージが来た。フロリアンヌの頭は混乱し、気持ちも整理がつかない。「マチューのことが頭から離れず、彼を思うと胸が熱くなる」とフロリアンヌ。罪悪感と欲望が渦巻いて心の中は嵐のよう。夫婦関係も低調だ。彼女は感情の結び目を解こうとする。マチューを愛しているのだろうか。それとも、結婚する前の夫の姿を彼の中に見ているのだろうか。「唯一わかっているのは、全然わかんないってことよ!」とこれまでのおだやかな口ぶりから一転、フロリアンヌは吐き捨てるように叫んだ。今のところ、フロリンヌはマチューと距離を置いている。なぜならそれは「やってはいけないこと」だと確信しているからだ。

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禁断の恋だから惹かれる

禁じられているからこそ無意識に惹かれるというのはよくある話だ。禁断の果実だからこそ甘いのだ。心理学者のジャン=イヴ・ルゼールは「パートナーの親友に惹かれてしまうのは、自分が抱える問題を転嫁するひとつのやり方だ」と言う。「たいていの場合、心の底では自分が踏み出すことはないとわかっている。危険すぎるし、不道徳すぎる。だから自分自身に問いかけてみてはどうだろう。どうしてこの人を好きになったのだろう。今の相手と手を切りたいのだろうか。それとも逆に、この関係を守るために、絶対に手に入れられない人を選んでいるのだろうか。今の関係に問題があり、正す必要がある警告を発して関係を救うために」

心理学者のジャン=イヴ・ルゼールは「親友という第三者は避難所としての価値がある。パートナーに似ているけれどその理想バージョンというか、気持ちが冷めることも、妥協や口論の記憶もない。パートナーの親友に惹かれたのは、本当にその人を見てのことなのか、それとも自分が恋に落ちた相手のもうひとつのバージョンとしてなのか」

31歳のファイナンシャル・アドバイザー、ヴィルジルも同じようなことを自問自答していた。当時一緒に暮らしていた彼女の親友であるレアをいつから好きになったのか、よくわからない。「彼女の友達ということから自分の友達にもなって、そこから別な気持ちが生まれた。好きという気持ちが次第に大きくなっていった」とヴィルジルは言う。じっくり考えた末にヴィルジルはひとつの結論に達した。「自分はもうレアに夢中だし、レアも自分を憎からず思っている」と。だが、当時の彼女を裏切ることも、こちらからあちらに乗り換えることも論外だった。「そんなことをしたらダメなことは目に見えていた」と考えたヴィルジルは、2年半一緒に暮らした彼女と別れた。その後しばらくは「仕事に没頭し、世界各地を出張や休暇で飛び回った」そうだ。

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自分を見つめ直す

心理学者のジャン=イヴ・ルゼールは、誰かと別れることは悪いことでも失敗でもないと言う。「恋愛は常に変化するもの。気持ちも移り変わる。自分を見つめ直し、ふたりの関係を考えた末にもうこの関係ではいられないと確信したら関係を終わらせるべきだ。自分の感じていることが確かなものだと確信でき、別れがどんなに大変なことを伴うかも十分認識しているのなら、決断すべきだ」と心理学者は言うと、別れる相手の反応がどうであれ、それを受け入れる覚悟も必要だと示唆した。「新しいパートナーができたら別れた相手にそのことをきちんと伝えるべきだろう。友情は信頼や正直さの上に成り立っている。話さなければ全てが裏切りだったと受け止められてしまうだろう」と。

ヴィルジルは仕事に没頭してみたものの、レアを忘れることはできなかった。数ヶ月後、ヴィルジルは久しぶりにレアにメッセージを送ってみた。元カノの様子が心配という口実で。その後、ニューヨークに向かう飛行機の中で、チェルシーのギャラリーでバスキア展が開催されていることを知った。レアがこの画家のファンであることを知っていた彼は、展覧会を見に行くために出張予定を大幅に変更した。展覧会の写真を撮ってレアに送った晩、ふたりは夜を徹してチャットした。その後もふたりはしょっちゅうチャットするようになった。「文字だけでのやり取り。電話はしない。その方が、距離を保てる気がして」とヴィルジル。「でも、ある晩、とうとう思い切って電話をして飲みに行こうと誘った」そうだ。それが7カ月前のことだった。ふたりは今、一緒に暮らす相談をしている。「元カノには詳しいことは伏せて話した。あちらも別な相手と交際中だしね」とヴィルジル。「元カノは僕たちが偶然再会したと思っている。それを否定して不要に傷つける必要はない。レアは最愛の女性だし、元カノはこれからもレアの親友だからね」

text : Caroline Lumet (madame.lefigaro.fr)

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