パートナーとのセックス相性が悪い。その原因と改善法は?

Society & Business 2024.08.03

セックスはパートナー次第で楽しくもつまらなくもなる。それは相性の問題なのだろうか? 2名の専門家が解き明かす。

セックスの相性というものは本当に存在するのだろうか?photography : axllll / Getty Images

セックスがつまらなかった、楽しめなかったという経験はないだろうか。なんだか違う、もどかしいと感じたまま終わった場合に、私たちは「セックスの相性が悪かった」で片付けがちだ。性格が合わないことはカップルが別れる原因ともなるが、身体にも相性というものがあるのだろうか。

「カップルからの相談で多いのが、相手の性欲が強すぎたり、ベッドでの嗜好が異なるという悩みです。そこから相性が悪いのではないかということになります」と言うのはアメリカの性科学者で『Your Blueprint For Pleasure(原題:快楽の青写真)』(Union Square & Co刊)の著者、ジャイヤ・マだ。「でもたとえばパートナーがサラダ好きで、あなたは嫌いだったとしても、それだけでお互いの相性が悪いと考えますか?」

セックスの相性とは

セックスの相性を気にする人がこれほど多いのも無理はない。「セックスには相性が存在すると何千年も前から考えられてきました。『カーマ・スートラ』にも載っているほどです」と解説してくれたのは、フランスの哲学者で『Apprendre à faire l'amour(原題:セックスのやり方を学ぼう)』(Allary Éditions刊)の著者、アレクサンドル・ラクロワだ。古代インドの愛の経典として有名な『カーマ・スートラ』によれば、挿入によってオーガズムを得るためには双方の性器の大きさが適合していなければならない。「カーマ・スートラによれば、女性の膣の大きさは3種類に分類されます。すなわち小さいほうからメスのシカ、ウマ、ゾウです。男性の陰茎も同様に、小さいほうからオスのノウサギ、ウシ、ウマに分類されます。そしてシカはノウサギと、ウマはウシと、ゾウはウマとしかマッチしないとされています」とアレクサンドル・ラクロワは説明した。

ただ、その後の研究により、性器はかなり柔軟性があるので大きさはあまり気にしなくていいことが明らかになった。平均的な膣の大きさは安静時で8cm、興奮時には12cmとなる。一方ペニスは稀なケースを除き、勃起時に平均12から17cmとなるが、挿入時には長さ幅が伸び縮みする。膣も前戯の段階から柔軟性がある。

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セックス相性という幻想の根底にあるもの

哲学者のアレクサンドル・ラクロワによれば、セックス相性が存在するという思い込みは、ベッドでの行為に関する誤解や偏見に起因している。「人間の性行為は動物と異なり、文化的規範の影響を受けます。映画や小説、ポルノ、そしてこれまでの個人的経験がひとつのシナリオを作り上げるのです」。ほとんどの場合、そのシナリオはフロイド理論とポルノから来ている。哲学者はこれを「フロイドポルノ」と名付けている。この「フロイドポルノ」に従うと、寝室で異性愛者カップルはまず前戯、続いて挿入、前後運動があり、男性がオーガズムに達して終了だ。「これはフロイトの考えに近いのですが、生殖行為の模倣です。フロイトは、前戯に時間をかけることは倒錯的であり、性交は男性の射精で終わって完成すると考えていました」と哲学者。当人たちの嗜好がまったく考慮されていないし、失敗へのプレッシャーも生むシナリオだ。しかも挿入と射精を重視していて女性が愉しむことは二の次とあって、誤解や閉塞感しかもたらさない。2016年に行われたフィンランドでの調査によれば、膣への挿入でオーガズムに達する女性はわずか6%に過ぎない。女性の34%はクリトリスの刺激によってオーガズムを得ていた。そもそもこんなセックスでは、性的充足に不可欠な要素であるコミュニケーションや変化を楽しむ要素がほとんどない。

ではどうすればいいのだろうか。哲学者のアレクサンドル・ラクロワは次のように言う。「ふたりで自分たちのシナリオをつくるのです。相手がどんな好みの持ち主で、それに対して自分がどこまで応じられるのかが明確になれば、どうしたら気持ちの良いセックスができるのかが自ずと明らかになります」

アメリカの性科学者のジャイヤ・マも同様の発想から、自分の性的傾向を知るためのテスト「Erotic Blueprint(エロティックな青写真)」を開発した。性的嗜好には5パターンあり、それぞれ「エネルギッシュ」、「センシュアル」、「セクシャル」、「コケティッシュ」、およびこれら4つの「混合型」があるそうだ。どんな時に性的興奮を感じるかによって分類されており、誰もがどれかに当てはまるはずだと言う。たとえば、「センシュアル」なタイプは愛撫や香りなどで感覚を刺激されると興奮し、「セクシャル」なタイプは裸やこれから挿入するというシチュエーションに萌えるそうだ。

性科学者のジャイヤ・マは、「寝室でやることは誰だって同じとか、誰もが同じ性的衝動を持っているはずと考えるのは誤りです。ひとりひとりが違う人間であり、異なる嗜好を持っているのです」と言う。だから自分やパートナーがどんな好みなのか、対話して知ることは大切だ。どのように相手の欲望に応じられるのかを考えることに繋がるからだ。「どうすれば相手を気持ち良くさせられるかを学ぼうとする気持ちがふたりの相性をよくするのです」と性科学者は言う。

異なる性的嗜好

でも、相手の性的嗜好をいいと思えないどころか嫌な場合、どうしたらいいのだろうか。「もちろん、嫌だと思う気持ちは止められません。喜びや悲しみ同様、意志で左右できない感情なのですから」と哲学者のアレクサンドル・ラクロワは認める。ただ、相手の性的嗜好にどの程度重きを置くかは自由だ。「気にしだすと失望やイライラが募るばかりです。これも嗜好のひとつと軽く受け止められれば、互いに楽しめることも探そうと前向きな気持ちになれるかもしれません」と哲学者は発想の転換を説く。ただし妥協はしないこと。性科学者のジャイヤ・マに言わせると、「妥協の半分は恨みで構成されている」そうだ。哲学者のアレクサンドル・ラクロワも「妥協は駆け引きや譲歩を伴い、当たり障りのない結果しかもたらさない」と否定的だ。

結論として、セックス相性が悪い人は存在しないということだろうか。理論上はそうだ。ただし実際はトラウマがあって受け入れられない場合もある。「性的アイデンティティというものはすべからく、自らの妄想や実体験、過去の出来事、そしてトラウマと結びついています。だからたとえ意思があってもどんな性的体験でも受け入れられるということではないのです」と哲学者のアレクサンドル・ラクロワは指摘する。抵抗感が薄れるには時間と相手への信頼が必要だ。「それは何カ月も何年もかかるかもしれません。ですが愛とはトラウマも含めて相手を愛することでもあるのです」とアレクサンドル・ラクロワは締めくくった。

text : Camille Lamblaut (madame.lefigaro.fr)

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