中絶の権利は?体外受精は認められる?トランプ新政権下で気になる女性の権利。
Society & Business 2024.11.08
トランプが米大統領選に勝利したのは、米国内の多くの女性有権者のおかげでもある。それにしても新大統領の公約は女性の権利に関し、具体的にどんな内容なのだろうか?
中絶は合衆国憲法が保証する基本的権利である。アメリカ合衆国最高裁判所がそう認めたのは1973年のことだった。いわゆるロー対ウェイド判決だ。ところがこれをくつがえす判決が2022年に出た。その責任の一端はドナルド・トランプにある。4年前の最初の任期中に彼は保守派判事を3名、最高裁判事に任命し、国内における女性の権利の低下に大きく貢献した。2024年11月5日、米大統領選でトランプ元大統領がカマラ・ハリスを破り、当選を確実にした。一体どんな女性有権者が、保守的な思想と女性に対する侮辱的な発言を繰り返すことで知られる元不動産王に一票を投じたのだろうか。新大統領は女性たちにどんな具体策を提案しているのだろうか。当確を決める1週間前、ドナルド・トランプは自前のSNS「Truth Social(トゥルース・ソーシャル)」で、「自政権は女性にとって素晴らしいものになる」と自慢していた。以下はその公約の(簡単な)リストだ。
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中絶の権利
ドナルド・トランプは、米国におけるリプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)の問題に関して主張をやや変えたようだ。78歳の政治家が中絶の権利の熱心な擁護者であったことはなく、中絶の権利が後退した状況を間接的に作った本人であるものの、現在ではあまり断定的な立場をとっていない。たとえば、中絶が6週間までしか認められていないフロリダ州での選挙集会で、メラニア・トランプの夫は、この期間が「短すぎる」と思うと述べた。この発言は、24週までの中絶の可能性を復活させることを提案する住民投票に沿ったものだ。モンタナ州、アリゾナ州、ミズーリ州、ネブラスカ州、コロラド州、フロリダ州、メリーランド州、ネバダ州、サウスダコタ州の9州で同様の動きがあり、結果待ちの状況だ。率直な物言いと、奔放な振る舞いで知られるドナルド・トランプは、この発言が人工妊娠中絶に反対する宗教右翼などのプロライフ派の神経を逆なですることも知っていた。「この問題については、自分の魂と良心に従うべきだが、まずは選挙に勝たなければならないことも忘れてはならない」とも彼は当時語っている。妻のメラニア・トランプは最近、中絶の権利を断固支持すると宣言している。
体外受精費用
体外受精もまた、米国で最も議論にあがるテーマのひとつだ。ピューリタニズムの強いアメリカでは、生殖補助医療のために胚を凍結させるこの方法を否定的に見る人もいる。どんな形の家族でも使用できるこの技術は、凍結胚、片親家族、LGBTQ+カップルの要素もからんで倫理上の議論が避けられない。道徳的な問題に加え、体外受精は米国で自費治療となるため、社会的不平等の問題も指摘されている。2024年8月29日、ドナルド・トランプは体外受精の費用を政府か保険会社が全額負担することに賛成すると発言して有権者を驚かせた。この発言に対し、一部の共和党員から裏切り者と非難する声があがった。
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安全な国
10月30日、トランプはウィスコンシン州での集会で「女性が好むと好まざるとにかかわらず、私は女性を守る」と述べた。この発言は、ピューリタニズムが支配的なアメリカの田舎に住む女性たちや、もっと安全な国を夢見る女性たちに向けたものだ。トランプはすでに勝利宣言を行なっているが、武器を所有する「基本的な自由」を認めつつ、安全な国を強調することで多くの女性有権者の心を掴んだ。
その他、ドナルド・トランプの公約には「男性が女性のスポーツに参加できないようにする」とあり、LGBTQ+コミュニティを狙い撃ちしている。要は自らを家族や宗教を中心とした伝統的価値観の守護者と位置づけているのだ。性転換には絶対反対の立場を取り、「性転換手術への資金提供」を禁止し、性転換への意識を高めることを目的とした学校でのプログラムや取り組みもすべて禁止すると主張している。フランスの法曹シンクタンク「クラブ・デ・ジュリスト」のウェブサイトによれば、こうした手術への対応は州によって異なる。「(米国52州中)20州では、トランスジェンダーの子どもが性転換するために必要な医療行為へのアクセスを制限または禁止する法律が可決されている。(中略)公的医療保険(メディケイド)の費用負担も認められないなど、成人の場合も制限がかかる」とのこと。トランプ本人は一切の禁止を望んでいる。
text: Léa Mabilon (madame.lefigaro.fr)