世界に注目される日本のスタートアップを表彰。 ケリング・ジェネレーション・アワード・ジャパン授賞式が初開催。
Society & Business 2025.04.01
さる3月13日、東京・虎ノ門のTOKYO NODEにて第1回「ケリング・ジェネレーション・アワード・ジャパン」の授賞式が開催された。約130の応募者の中から選ばれた3組の受賞企業と特別賞1社の授賞式が行われたほか、ケリング会長兼CEOのフランソワ=アンリ・ピノーも来日し、ラグジュアリーグループにおけるサステナブルな取り組みの重要性について語った。

グッチやサンローラン、ボッテガ・ヴェネタ、バレンシアガ、ブシュロン、ポメラートなどのメゾンを傘下にもつケリング。クリエイティビティを掲げると同時にサステナブルで責任ある方法により未来のラグジュアリーを創造することを目標としている。
2018年に中国で発足した「ケリング・ジェネレーション・アワード」は、代替原材料やサーキュラーエコノミー、リサイクル技術などの課題に取り組み、社会や地球環境にポジティブな影響をもたらすスタートアップ企業を支援するプログラム。中国ではすでに3回開催され、昨年はサウジアラビアと日本でもプログラムがスタート。日本初となるプログラムでは、国内の企業や研究者から応募を募り、書類選考と2回のピッチコンテストを経て選ばれた上位3組が、今回の授賞式で発表された。
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授賞式に際し、ステージではケリング会長兼CEOのフランソワ=アンリ・ピノーと日本発バイオスタートアップのスパイバー代表執行役の関山和秀による対談が行われた。
授賞式に先立ち、ケリング会長兼CEOのフランソワ=アンリ・ピノー(中央)と、スパイバー代表の関山和秀(右)による対談が行われた。
ピノーは日本での開催について「グループのビジネスにおいて重要な拠点であり、イノベーションとクラフツマンシップに対する深い理解のある日本という国でアワードを開催することは自然な流れでした。ラグジュアリーがより持続可能なモデルへと移行する中、イノベーションの重要性を感じています。このアワードを通じてファッション業界の新しいパラダイムに貢献するアイデアやソリューションを促進したいと考えています」と語った。
一方、植物由来の原料をもとに独自の発酵技術を用いて作る繊維素材「ブリュード・プロテイン™ファイバー」を開発するバイオスタートアップ、スパイバーの関山和秀は次のように語った。「私たちが取り組んでいることは、人類のサプライチェーンや素材の選択肢をより多様に、強固なものにしていくことです。長年にわたって培われてきた市場に参入するのはとても大変なことです。また事業を展開していく中では想定外の危機に直面すると同時に想定外のチャンスにも出合います。スタートアップの皆さまには、世の中のためになるサステナビリティに向き合っているというパッションを信じて頑張ってほしいと思います」
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日本発のスタートアップ企業が世界へ羽ばたく足掛かりとなるケリング・ジェネレーション・アワード・ジャパン。栄えある第1位を獲得したのはファーメンステーションだ。
発酵技術を使い、食品廃棄物のような未利用資源から天然由来の芳香エッセンスなどのバイオ原料を生産し、資源の有効活用と循環型社会の実現を目指す。地球に負担をかけることなく、植物由来の機能性成分を生み出している点や、生成プロセスのライセンス供与により、地理的な制限なくビジネス展開できる将来性が高く評価された。代表取締役の酒井里奈は「世界中のいろいろな場所で化粧品や、フレグランス、食品、飲料などに私たちの技術が活用された素材が使われ、サステナブルビューティに貢献できることを願っています」と抱負を語った。
会場のロビーではファイナリストたちの技術や製品がパネルで紹介された。写真は第1位を受賞したファーメンステーション。
第2位に選出されたのは最先端のテキスタイルテクノロジーを開発するアンフィコ。フッ素化合物の一種で2019年から国際的な規制の対象になっているPFAS。アンフィコは欧米におけるPFAS規制を背景に、PFASフリーで機能性透湿防水テキスタイルを実現する技術に加え、独自着色アルゴリズムを活用し、数色の糸から2000以上の色をテキスタイルとして表現する技術を開発。テキスタイル染色の環境への影響を低減する可能性に期待が寄せられている。CEOの亀井潤は「私たちは、テキスタイル製造過程で使われる有害な化学物質をなくしながら、美しく高機能な製品を作る技術を目指し、日々奮闘しています。茨の道ですが、今回の受賞は希望の花のように感じうれしく思います」と述べた。
第3位は微細藻類の研究を20年以上行ってきたバイオベンチャー、アルガルバイオだ。日本の水産資源である微細藻類は面積あたりのCO2固定能にすぐれ、アンチエイジング、UV吸収、保湿などに役立つ機能性成分と天然色素を含有。ヘルスケア領域以外にもビューティ、ファッションへの活用にも期待されている。事業開発チームリーダーの小田康太郎は「地球上には30万種類もの微細藻類が存在します。アルガルバイオが保有する多種多様な微細藻類が私たちの身の回りのものに応用されることで、循環型で自然への負荷が少ないものづくりを目指しています」と語った。
そして特別賞はマイクロバイオファクトリーが選出された。化学製造の脱化石資源化を目指し、バイオマス由来の原料を活用した化学品生産に取り組でいる。日本を代表する素材であるデニム業の環境・社会課題に対してバイオインディゴ技術の革新性が評価された。代表取締役の清水雅士は「弊社は微生物発酵でインディゴ染料を作る研究開発をしていますが、それを糸や生地にするためにはデニム産地との共同作業が欠かせません。これからも産地の皆さんと一緒に商品化を目指していきたい」と語った。
特別賞を受賞したマイクロバイオファクトリーは、デニム産業を基盤にバイオ技術を通じて環境問題に取り組んでいる。
受賞した上位3社には、パリのケリング本社での研修およびネットワーキングの機会と、2025年4月にパリで開催されるサステナビリティサミット「Change NOW」での出展機会が提供され、さらに1位のファーメンステーションには賞金1000万円が授与される。また、特別賞を受賞したマイクロバイオファクトリーにはヨーロッパ研修に参加する機会が与えられる。
授賞式の後には、会場のアライバルホールにてファイナリスト11社の革新的な技術や、ケリングの各ブランドのサステナビリティへの取り組みについての商品やパネルが展示され、多くのゲストがファイナリストの話に熱心に耳を傾けていた。
「日本のスタートアップ企業はテクノロジーとクラフツマンシップがひとつの組織の中に存在できる点が大変ユニーク」と、審査員を務めたケリング チーフ・サステナビリティ・オフィサー兼渉外担当責任者のマリー=クレール・ダヴーは語る。ケリング・ジェネレーション・アワード・ジャパンは、日本の独自性を世界のマーケットに発信するまたとない機会となった。
ケリング・ジェネレーション・アワード・ジャパン
https://jp.cic.com/cic-kering_generation_award/