かけらが繋ぐ未来。CACL、永山祐子、LIXILが挑む能登黒瓦の再生。

Society & Business 2026.01.30

能登半島地震で割れ、災害ごみとして積み上げられていた伝統的な黒瓦のかけら。2025年9月、そのかけらを建築資材に再生するプロジェクトが動き出した。プロジェクトを手がけるのは、能登の陶器端材や破片をアートや建築素材へと生まれ変わらせる活動をするCACL、永山祐子建築設計、そしてリサイクル建材の開発に取り組むLIXIL。

このほど、新宿のAWASE Gallery「On」で開催された企画展「We Are All Fragments -私たちは、みんなカケラだ- 」でのトークセッション「社会課題のデザイン手法」に、CACL代表の奥山純一、永山祐子、LIXIL常務役員の羽賀豊が登場。プロジェクトが生まれた背景や、素材と向き合う中で見えてきた可能性について語った。

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左からCACL代表取締役の奥山純一、建築家の永山祐子、LIXIL常務役員の羽賀豊。

偶然の出会いから生まれたプロジェクト。

プロジェクトは、ベネチア・ビエンナーレで奥山と永山が出会ったことから始まった。地震で割れてしまった九谷焼や珠洲焼の陶器破片を、風化防止のためにアートに転用するCACLの活動を聞いた永山は、災害で大量に発生した破片を、別の形で活用できないかと考える。

ヒントになったのは、その時に足元にあった石畳。「建材にして、舗装の中に混ぜたらおもしろいのでは?」と思いつく。

そして最初に完成したのが、CACLが集めていた、規格から外れてしまった九谷焼のかけらを混ぜ込んだテラゾー材。永山はこの素材を、玉川髙島屋S.C.の什器に採用している。「お皿の台のところが丸く出てきたり、普通のテラゾー材では現れないような不思議な形が現れて、それが美しかった」と振り返る。

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崩れ落ちた瓦から生まれた、新たな可能性。

次にCACLと永山祐子建築設計が企画検討したのが、能登半島地震で倒壊した家屋の瓦のアップサイクルだ。奥能登地域の家に昔から使われてきた黒瓦は、釉薬を両面に施し高温で焼成されており、海沿い地域の塩害を防ぎ、積雪を素早く溶かす機能を持つ。合理性を備えた建材として、地域の風景を支えてきた存在でもある。

しかし今回の地震では、珠洲市を中心に多くの家屋が倒壊し、瓦も屋根から崩れ落ちた。

奥山から廃棄される黒瓦の破片が大量に発生していることを聞いた永山は、黒瓦を建材として再生する可能性を探り始めた。この企画に技術面で応えたのがLIXILだ。同社は長らくリサイクル素材の研究開発を進めており、アルミや分別が難しいプラスチックを再生する技術を蓄積してきた。そしてCACLが地域コーディネートの役割で中心となり、珠洲市や石川県の協力を得て、約6トンに及ぶかけらを活用するプロジェクトが本格化する。

永山が着目したのは、リサイクル性と意匠性の両立を目指して、LIXILが開発したリサイクル素材「textone(テクストーン)」。この素材に黒瓦のかけらを混ぜ込んだ。当初は瓦ならではの質感がうまく現れなかったが、磨きの工程を重ねることで、瓦が持つ温かな表情が立ち上がってきたという。こうして生まれたのがtextone NOTO-KAWARAだ。

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割れた黒瓦(左)から生まれた暖かい色合いのtextone NOTO-KAWARA。黒瓦の赤い土色や黒い釉薬がやさしく浮かび上がる。

「モルタルやセメント系の建材はどうしてもグレー寄りになるが、textoneは素材の色がそのまま出る。黒瓦が持つ温かな色味を、建材として使える可能性を感じた」と永山は話す。

奥山も、「使えない、捨てないといけない、と決め付けられていたものでも、見方を変えると、また新たな価値に置き換えられる。今回、その現象を目の当たりにした感じがあった」と語る。 

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素材に宿る、地域の記憶。

能登にも実際に足を運んだという3者。震災から1年以上が経過しても、家屋が傾いていたり、道が崩れていたりと生々しい傷跡が各所に残っていた。そんな中、屋根の上でキラキラと輝く黒瓦を目にし、LIXILの羽賀は、アップサイクルに対する考え方が変わったと話す。

「廃棄されるものをもう一度使えるようにしよう、というアップサイクルの理屈は理解していた。けれど、今回実際に現地に行ってみて、黒瓦には、この地域の文化や風景が集約されていると感じた。それを形を変えて残すことは、気持ちや文化を継承していくことに繋がると感じた」

災害という一見すると重い社会課題を扱う上で、「美しさ」が大切だと永山は指摘する。

「普通では思いつかないことを掛け合わせた時に、予想を超えた表現が生まれ、美しさに繋がる。それが、自分のものづくりにおいて刺激になっている。もちろん、社会的な背景やストーリーも大事だけれど、ものとしての魅力はとても大切。まずは『え、なにこれ、おもしろい!』『綺麗!』と手に取ってもらい、その上で、背景にも共感してもらいたい」

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人もものも、欠けることで繋がっていく。

この日、企画展「We Are All Fragments -私たちは、みんなカケラだ- 」の感想から、「かけら」そのものの魅力について語られる場面もあった。

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会場には九谷焼や珠洲焼のかけらを金継ぎの技術で繋ぎ合わせた作品が並ぶ。photography: kenta seki

CACLの活動と並行して福祉事業所も運営する奥山は、破片の持つ性質に注目する。

「かけらって、割れ方がひとつひとつ違う。だからこそ、かっこいい。そして、欠けることでどんな素材とも組み合わせられる可能性が出てくる。そこが、人とも重なる部分がある」

永山は、そこにこそ、価値の転換があると指摘する。 

「人の心に訴えかけてくる美しさには、自分の共感できるストーリーがなにかしら載っている。かけらや欠け、というものは自分も持っているもの。だからこそ、響くことがある」

完璧な美しさがある一方で、欠けることで繋がり、新たな美しさや役割が生まれていく。かけらがこれから紡ぐあろう新しい物語に、引き続き注目したい。

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新宿AWASE gallery「On」で開催されていたCACL企画展示「We Are All Fragments -私たちは、みんなカケラだ- 」。photography: kenta seki

問い合わせ先:
AWASE gallery
E-mail : info@awasegallery.com
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