リースリングの爽やかな逆襲。 #01 世代交代を経て進化する、ドイツワインの"現在"とは。

Travel 2016.08.18

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巨大なバッカス像の周囲に集まる各国のワイン・ジャーナリストたち。


巨大なバッカス像のまわりに続々と世界各国からのワイン・ジャーナリストが集まる。グラスにゼクト(スパークリングワイン)が注がれるシュワーッという音があたりに響く・・・。先日、ドイツワインの最新動向を取材するためドイツ西部のマインツを訪ねました。同行したのは「いぬパリ」でおなじみ、パリ在住のカメラマン、吉田パンダさん。彼も僕に負けないワイン好きです。


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ウェルカムドリンクは、リースリングで造られたドイツの泡ゼクト。


今回われわれを招いてくれたのはドイツ・ワインインスティトゥート(DWI)という組織。ドイツワインの魅力を世界に広めるための政府系組織です。このDWIがドイツ国内の若手ワインメーカーを集めて作った組織「ジェネレーション・リースリング」が今年、結成10周年を迎えたのに合わせ、そのお祝いを兼ねて、ドイツワインの現状を世界に紹介しようとメディア・ツアーを組んだのでした。


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リースリングの復権はドイツワインの近代化を物語る。


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ブドウ畑にウサギ! 自然な造りが多いのもドイツワインの特徴。


ところで読者のみなさんは、日本でどのくらいドイツワインが飲まれているかご存知ですか? 2015年の輸入ワインランキングではチリが史上初めて第1位(量ベース)に躍り出て話題になりましたが、2位以下は、

2位 フランス
3位 イタリア
4位 スペイン
5位 アメリカ
6位 オーストラリア

と続いて、ドイツは第7位でした。

しかし、いまから30年ほど前には日本の輸入ワインのシェアNo.1の座をドイツとフランスが競い合った時代があるのです。現在50代以上の人なら〈マドンナ〉という銘柄に甘酸っぱい思い出があるはず。マドンナに代表される、ちょっと甘くてフルーティなドイツの白ワインが「エントリーワイン」になって、そこからワインの世界に入っていった人は少なくありませんでした。70年代半ばから80年代の前半にかけて、ドイツはワイン造りにテクノロジーを取り入れ、世界をリードする存在だったのです。もっと時代を遡ると、19世紀初頭にはボルドーの銘醸ワインよりもドイツのリースリングの方が高値で取り引きされていた時代がありました。


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週末の午後、ライン川の畔でワインを楽しむ地元の人々。


ところが、日本では80年代後半、バブル期に入ると、世界各国のワインに注目が集まり、ドイツワインはあっけなく首位の座をフランスワインに明け渡します。続いて起こった赤ワインブーム、アメリカなどニューワールドのパンチの効いたワインの台頭の陰に隠れて、ドイツワインは急速にそのシェアを減らし、「マドンナのときめき」もいつしか思い出の彼方へ・・・。

しかし、それはあくまでも日本市場でのこと。ドイツワインは僕たちが浮気している間に EUの波に揉まれ、地球温暖化にも見事に適応し、造り手は世代交代して世界と交流する新しい世代が台頭。ワインの製法・味わいも現代人の嗜好と食習慣に合わせて大きく変容していたのです。それはまさに「リースリングの逆襲」と呼ぶべき動き。

次回は、ワイナリーを訪ねて、その「逆襲」の動きをつぶさにレポートしたいと思います。


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真剣な面持ちでテイスティングをするワイン・ジャーナリストたち。


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ドイツワイン批評家として知られるスチュアート・ピゴット氏。


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ドイツワインの女王、ジョセフィーヌ・シュルンベルガーさん。

浮田泰幸 Yasuyuki Ukita
ライター、ワイン・ジャーナリスト、編集者

ワイン・ジャーナリストとして、これまで取材したワイン産地は11カ国30地域以上、訪問したワイナリーは約500軒に及ぶ。ワインと観光要素を結びつけた「ワイン・ツーリズム」の紹介に重点を置いている。各誌ワイン特集の企画・監修・ワインセレクトを担当することも。

吉田パンダ Panda Yoshida
フォトグラファー

世界の犬とおいしいものを、こよなく愛するフォトグラファー。スタジオ勤務を経て、2000年よりパリに拠点を移す。愛犬は黒いトイプードル。雑誌・広告媒体では吉田タイスケとして、旅、ライフスタイルを中心に幅広く活動。

texte: YASUYUKI UKITA, photos: PANDA YOSHIDA, collaboration: WINES OF GERMANY

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