Saga Prefecture 食とうつわと茶を巡る、1泊2日の週末佐賀トリップ。

Travel 2018.07.09

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1868年、明治維新をきっかけに近代化への道を歩むことになった日本。その転換点から150年目を迎える今年、明治維新の立役者を多く輩出した“薩長土肥”のひとつ、佐賀県で開催されているのが、「肥前さが幕末維新博覧会」だ。

佐賀の風土や歴史、ここに培われた郷土の文化、デザインにフォーカスする、「肥前さが幕末維新博覧会」をきっかけに、古くて新しい佐賀を探しに行こう。

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Design & Food
佐賀の魅力を凝縮した、デザインと食を堪能する。

九州佐賀国際空港から車でおよそ20分。佐賀市内で楽しめるのが、「デザイン」と「水辺」をテーマにした、佐賀とオランダのコラボパビリオン、「オランダハウス」だ。実は幕末の佐賀(肥前)は、オランダが誇る最新テクノロジーを目の当たりにしたことから西洋の技術を導入することに決めたのだとか。

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「オランダハウス」の南側には、明治維新の時代に舟が行き交っていた裏十間川が流れる。佐賀とオランダで発展した水路網を楽しむためのプログラム(和舟・カヤック体験)が用意されている。

旧佐賀銀行呉服町支店に誕生した「オランダハウス」では、「デザイン」を合言葉に佐賀とオランダの交流の歴史や水路を中心とした都市計画についての展示が行われている。また、オランダを拠点に活動するクリエイター6組がスケジュール毎に佐賀市内に滞在し、ものづくりを行うアーティスト・イン・レジデンスも実施、その作品発表も行われる予定だ。

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有田焼のタイルに絵付けを施した作品を製作中のグラフィックデザイナー、ギルス・デ・ブロックさん。

オランダハウス
会期:開催中〜2019年1月14日(月・祝)
会場:旧佐賀銀行呉服町支店およびその周辺
佐賀県佐賀市呉服元町 8-1
営)10:30~20:00(10月~1月は~18:30) ※夜間イベント時は延長あり
無休
入場無料 ※和舟・カヤック体験料は1名¥500(保険代)(要予約、雨天中止)
●問い合わせ先:ライフプロ
Tel. 090-7463-1608(オランダハウス内直通)
http://hollandhouse-saga.com

一方、食のジャンルで注目したいのは、佐賀の食とうつわの共演を楽しむレストラン、「ユージアム サガ」だ。2016年、有田焼の創業400年を記念して人間国宝などのうつわを使って佐賀の食材を楽しむ、食の体験型施設、「ユージアム アリタ」が期間限定で開設されたが、ユージアム サガはそれをさらにスケールアップさせたもの。ひとつのお膳に、焼き物の産地を代表する5つの窯元の作品を揃えるという。

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美しいうつわと季節の食材の共演が楽しい、「和魂洋才五膳」(1日限定80食、要予約)¥3,500

代表的なメニュー、「和魂洋才五膳」は、人間国宝の作品などの貴重なうつわと地元食材をふんだんに使った料理が食卓に次々と現れ、訪れるものの目を楽しませてくれる。アミューズのフォアグラ茶碗蒸しは唐津焼・中里太郎右衛門陶房の絵唐津に、地元の野菜をふんだんに使ったサラダは柿右衛門窯の小鉢に、メインの魚は人間国宝、井上萬二さんの柔らかな白磁に、佐賀牛のローストビーフは先ごろ亡くなった人間国宝、中島宏さんのうつわに……といった具合。

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食後にはデザートと嬉野茶のセットを。自然農法の釜炒り茶で注目を集める「en tea」のお茶が5種ラインナップ。「デザート&嬉野茶セット」¥800

料理の監修は、シェフ自ら栽培した野菜で仕立てた料理が話題を呼んでいる、「農家の厨 野々香」の小野智史シェフが担当。料理の内容や食材はもちろん、それに合わせたうつわも刻々と変わっていくというから、何度足を運んでもフレッシュな感動を味わえそうだ。

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「ユージアム サガ」は、明治時代に建てられた旧警察部庁舎の洋館を改装したレストラン、さがレトロ館で開催中。

ユージアム サガ
会期:開催中〜2019年1月14日(月・祝)
会場:さがレトロ館
佐賀県佐賀市城内2-8-8
Tel. 0952-97-9300
営)11:30〜15:00 17:30〜22:00
休)月、12月29日(土)〜2019年1月2日(水)
https://useumsaga.jp

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Porcelain
肥前のもうひとつの魅力、吉田焼の産地でうつわざんまい。

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日常使いのうつわを作っていた肥前吉田焼。磁器ならではの表現力の多様さが魅力。

佐賀市内を遊び尽くしたら、お次は「日本三大美肌の湯」として名高い嬉野へ。嬉野は温泉街というだけではなく、肥前吉田焼の産地でもある。小さな産地ながら、辻諭さん率いる磁器ブランド、「224 porcelain」の世界的な活躍で、近年、注目を集めているエリアだ。

「肥前吉田はいまから400年以上も前に開窯された歴史ある磁器の産地。肥前(佐賀県、長崎県)で焼かれる磁器を総称して有田焼と言っていました」と、辻さん。

「このあたりで焼かれた吉田焼も有田焼の問屋を通して世に出回ったので、有田焼と吉田焼の違いって明確ではないばかりか、有田の絵付けのような独自の技法・様式がないのです」

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人の心を豊かにするもの、生活を便利にするものを作りたい、と辻さん。「224 shop+saryo」には、そんなコンセプトどおりのうつわや道具が並ぶ。

とはいえ、その「様式のなさ」、つまり自由なものづくりこそが吉田焼の身上。これまで培ってきた技術力を、新しい発想のクリエイションに生かす。そんなチャレンジングな精神こそが「224 porcelain」の魅力といえるだろう。

この道に携わって15年。窯元で行う従来の作陶に限界を感じていた時、美術館やニューヨークのMoMAで出合ったプロダクトデザインの数々に導かれたという辻さん。磁器が持つプロダクトとしての可能性に開眼し、ものづくりの幅が広がった。「224 porcelain」では、辻さんが企画・デザインを行うものから海外のプロダクトデザイナーとタッグを組んでリリースするものまで、既存の枠にとらわれない磁器を発表している。メゾン・エ・オブジェ、ミラノサローネと海外のデザインエキシビションにも参加するようになった。

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「224 porcelain」代表の辻さん。29歳の時、ニューヨークのMoMAで鑑賞したパーマネントコレクションに感銘を受けて一念発起。それまで従事していた伝統工芸を離れ、プロダクトデザインの道へ進むことを決意したそう。

有田と同じ土を使い、同じ焼き方を取り入れてはいたものの、肥前吉田では古くから大衆向けのうつわを作っていた。たとえば、大衆食堂や公民館でよく見かけた、白と紺の水玉の急須や湯呑み。あれこそが肥前吉田焼のアイコン的存在だった。

「新しい風が吹いたのは、あのデザインをナガオカケンメイさんが『ロングライフデザイン』と言い切ったから。あれから注目を浴びるようになりました」

有田と違い、肥前吉田は産地の規模が小さいゆえに作り手がまとまりやすいという利点がある。そうした背景を武器に、肥前吉田ではさまざまな試みに取り組んでいる。

「日常に使ううえではまったく問題がないけれど、検品ではねられる規格外品、いわゆる2級品というものがあります。2級品問題は僕たち作り手にとって永遠のテーマだったのですが、今年初めから2級品と工房見学をセットにした“えくぼとほくろ”という新企画をスタートしました。

磁器は自然の土や釉薬を使って手作りしているため、丁寧に作業をしていても生地や釉薬に含まれる鉄分が表面に出てきて黒子のようになることがあります。僕たちはこれを、えくぼやほくろのような個性として捉えてもらえればと考え、手仕事に触れてもらえる工房見学と合わせて提案することにしたのです」

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「224 porcelain」の旗艦店、カフェを併設する「224 shop+saryo」。嬉野温泉の公衆足湯「シーボルトのあし湯」にほど近く、足湯で温まったあと、ふらりと器めぐりを行いたくなること請け合い。

少しずつではあるけれど変わりつつある肥前吉田。それに手ごたえを感じている、と辻さんは言う。小さな産地ではあるけれど、嬉野という土地だからこそできることはたくさんある。

「まずは地道にファンを作ること。有田や波佐見にはない、温泉とお茶という資源がありますから、肥前吉田焼とそれらを連動させてここでしか味わえないエクスペリエンスを提案していくこと。うつわを超えて嬉野という風土を伝える取り組みの可能性に、ワクワクしています」

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嬉野茶の生産者らとタッグを組んだ「嬉野茶時」の公式茶器は「224 porcelain」のもの。

224 shop+saryo
佐賀県嬉野市嬉野町下宿乙909
Tel. 0954-43-1220
1F 108 cafe 営)11:30〜16:30(月、火、金〜日) 休)水、木 
     saryo bar 営)21:00〜24:00(金、土) 休)月〜木、日
2F shop 営)10:00〜16:00(月、火、木、金) 10:00〜18:00(土、日、祝) 休)水
http://www.224porcelain.com

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Green Tea
世界が注目する日本茶。産地、嬉野に吹く新しい風。

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副島園の茶畑の高台に設けられた天空の茶室、「天茶台」。傾斜地に広がる茶畑を見渡すことができるもので、「茶花プロジェクト」のひとつとして作られた。嬉野という風土を感じさせる、とっておきの空間だ。

スペシャルティコーヒーに続くビッグトレンドとして大きなムーブメントになりつつある日本茶。東京をはじめ世界各都市が、モダンに解釈した日本茶に注目しているが、産地では一歩先を行く試みがスタートしていた。

室町時代からお茶の生産が始まっていたという、日本を代表する産地のひとつ、嬉野。嬉野茶といえば、かつては大きな釜を使って高温で炒ることで発酵を止める「釜炒り茶」が特徴だった。最近では釜入りを改良した製法である蒸し製玉緑茶の生産量が圧倒的というが、渋味が少なく甘味の強い味わいは変わらず。 

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「副千製陶所」の代表作である水玉の茶器を使い、「天茶台」でお茶を淹れてくれる副島さん。「横の畑で、何月何日に収穫したお茶です、というプレゼンテーションができるのは、『嬉野茶時』ならでは」

そんな嬉野茶の魅力を伝えるべく、産地で始まった取り組みが「嬉野茶時」だ。お茶農家、温泉旅館、肥前吉田焼の窯元という、嬉野に息づく伝統文化の担い手たちがタッグを組み、まったく新しい切り口でこれらの伝統文化を表現する。たとえば、一面の茶畑を見渡す空間にしつらえた屋外茶室で、お茶農家自らお茶を淹れ、肥前吉田焼の茶器でサーブしてくれる。

「嬉野温泉は1300年、嬉野茶は500年、肥前吉田焼は400年の歴史があります。この土地とともに生きてきた伝統文化を僕たちがいま一度再認識してみよう、そんな思いから2016年夏に『うれしの晩夏』というイベントを行ったのです」

そう語るのは、「嬉野茶時」発起人のひとりであり、老舗旅館「和多屋別荘」代表の小原嘉元さんだ。

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「和多屋別荘」のロビーの一角にしつらえられた、「嬉野茶時」のセレクトショップ

「うれしの晩夏」は、脇役になりがちなお茶を主役に据えたイベントだ。嬉野温泉の旅館の一室に、その日のためだけに誂えた特別な肥前吉田焼のうつわとお茶を引き立てる料理でゲストをもてなす「嬉野晩餐会」と、真っ白のユニフォームに身を包んだお茶農家が茶師として登場、とっておきのお茶をふるまう「嬉野茶寮」という、ふたつのコンテンツを用意した。

その試みはメディアで一躍評判になったが、それと当時にこのイベントに携わったメンバー全員が、お茶、うつわ、温泉旅館という資源が集約する嬉野の可能性を体感できたという。

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一杯ずつ丁寧に淹れてもらうというスペシャル感がうれしい、ポップアップスタンド「歩茶」。上質な嬉野茶をテイクアウトで楽しめる。

「嬉野茶時」の中心メンバーのひとりであるお茶農家、「副島園」の副島仁さんいわく、日本茶の魅力とは、「日本の文化が集約されているところ」。

「お茶というのは中国発祥のものですが、茶葉を粉末にした抹茶を生み出したように日本独自の文化として発展してきました。お湯の温度を下げて淹れるのは日本だけの習慣ですが、これも相手のことを思いやるおもてなしの気持ちの表れ。お茶を淹れる行為に込めた思いも、日本らしいスピリットとしてプレゼンテーションできると思うのです」

「嬉野茶時」はまだ始まったばかり。料理やお酒と日本茶とのペアリングを紹介するイベントを季節ごとに開催するほか、昨年から力を入れているのが茶畑のいちばんいいロケーションに屋外茶室を設ける「茶花プロジェクト」だ。

目指すのは、嬉野ならではの“ティーツーリズム”。温泉宿に宿泊しながら、ワイナリーを訪れるように茶畑を巡り、景色を堪能しながら茶農家にお茶を振る舞ってもらう。そんな、嬉野らしさを体感できるツーリズムの可能性を「嬉野茶時」は模索している。

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霧深い山あいの盆地にあり、澄んだ空気と清冽な水に恵まれた嬉野。こんな傾斜地にも一面のお茶畑が。

今年5月には佐賀駅の一角に嬉野茶専門のティースタンド「歩茶」をプロデュースした。コーヒーと同じ感覚で、きちんと淹れた嬉野茶を手に、維新博巡りや佐賀の街散策を楽しんでもらいたい。「歩茶」というネーミングにはこんなコンセプトが込められている。

「この街ではどこに行ってもおいしいお茶が飲める。あそこに行けばお茶農家がお茶を淹れてくれる。お茶を味わう際は、吉田焼の茶器にも注目してもらう。嬉野の魅力を深掘りできる取り組みを、産地から発信していきます」(小原さん)
 
嬉野では、一杯のお茶に込められたストーリーに思いを馳せて。

嬉野茶時
https://www.ureshinochadoki.com

嬉野茶時茶葉取り扱い店舗:

○和多屋別荘
佐賀県嬉野市嬉野町下宿乙738
Tel. 0954-42-0210

○旅館大村屋
佐賀県嬉野市嬉野町下宿乙848
Tel. 0954-43-1234

○JONAI SQUARE(サガテレビ1F)
佐賀県佐賀市城内1-6-10
Tel. 0952-23-9113

○佐賀駅構内「維新スクエア」
佐賀県佐賀市中央1-11-10
期間:開催中〜2019年1月14日(月・祝)
営)9:30〜18:00

食やうつわ、お茶など、さまざまな魅力満載の佐賀に、維新博をきっかけにぜひ訪れてみよう。

●問い合わせ先:肥前さが幕末維新博事務局
Tel. 0952-25-7481
https://www.saga-hizen150.com

※九州佐賀国際空港から、レンタカーの最初の24時間が¥1,000となるキャンペーンを実施中! 詳しくはこちら

photos : YASUO YAMAGUCHI, réalisation : RYOKO KURAISHI

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