時代を超えて愛される、20世紀の名建築に泊まろう。

時代を超えて愛される名建築に泊まる、という体験。特別な思いが込められた建物を堪能しつつ、唯一無二の時間を過ごしたい。

昭和の大建築家による、 ジュエリーのように美しい宿。

ザ・プリンス 箱根芦ノ湖

昭和を代表する建築家、村野藤吾は規模の大小はもちろん、伝統的な数寄屋の様式から西洋的なものまで幅広い建築を実現した存在。その村野の傑作のひとつが芦ノ湖のほとりに立つ。エントランスの先にダイナミックな天井と赤いカーペットが敷かれたロビーが広がり、湖畔の客室へと宿泊者を誘う。ジュエリーのように細部にこだわり彫刻的で美しい空間体験が、喧騒を離れた時間を優しく包む。

あえて天井を低く抑えたエントランスの先に優雅な曲 線を描く天井の高いロビーが広がる。

芦ノ湖畔に立つ円形の宿泊棟。テラスを設けた客室から間近に湖が見える。

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ライトの遺伝子を受け継ぐ、 海辺の名作別荘建築。

葉山加地邸

20世紀を代表する建築家、フランク・ロイド・ライトに師事したのが遠藤新だ。その遠藤が1928年に完成させた葉山の住宅を、建築家の神谷修平が宿泊施設として再生させた。地形と一体化した建物の形状、大谷石などの素材使い、幾何学的な造作などで、ライトの哲学を色濃く受け継ぐ加地邸は見どころが多く、さながら迎賓館のよう。相模湾の眺望と歴史的な建物をひとり占めできる、新しい宿だ。

創建当時はビリヤード室として利用されたプレイルー ムも細部まで修復された。

プレーリースタイルと呼ばれるライト独特の建築様式を採用し、地形と一体化した。

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贅を尽くした宮殿のような館で、 世界各地の美を感じて。

ホテル川久

関西屈指の温泉地として知られる和歌山県南紀白浜。その海辺に立つのが1991年創業のホテル川久だ。建物そのものに美術的価値をもたせようと、世界各地の素材や技術にこだわり抜いた建築はまさに王宮のようで、「村野藤吾賞」も受賞。普請道楽であった創業者が世界中から蒐集した絵画や骨董なども並び、2020年から川久ミュージアムとして一般公開も始めた。 世界の美を旅するホテルだ。

モザイクタイルが流麗なロビー。擬似大理石の青い柱からギネス世界記録にも認定された金箔天井まで圧巻。

北京の紫禁城と同じ瑠璃瓦を使用した宮殿のような外観。

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昭和レトロの百貨店建築で、 一日を過ごす夢の体験。

シタディーンなんば大阪

昭和のはじめ、いくつもの百貨店が立ち並ぶ大阪の堺筋はかつてない賑わいを見 せていたことだろう。なかでも1937年に完成した松坂屋大阪店は、当時、国内最大級の百貨店として開業。設計を手がけたのは夏目漱石の義弟で建築家の鈴木禎次だ。のちに髙島屋が所有し、今回さらに一部がホテルとなって再生を果たした。当時の雰囲気を随所に再現した空間は、百貨店に泊まるという夢を叶えてくれる。

陳列棚など、当時を思わせるデザインをエントランスから客室まで随所に施す。

エレベーターも贅沢な建材を 再生したレトロで歴史ある雰囲気。いまも百貨店のよう。

＊「フィガロジャポン」2021年3月号より抜粋