スクリーンの前で食事をすると、太りやすくなるってホント?
Beauty 2021.10.06
スクリーンの前で食事することは消化の過程に悪影響を及ぼす。Photo: Getty Images
パソコンやテレビの前で食事をすると、脳や体に悪影響を及ぼすメカニズムが次々と発生する。ここでは、専門家からの詳細情報をご紹介しよう。
オフィスの椅子に座りながら18分で飲み込んだランチ、ネットフリックスで「ペーパー・ハウス」の第5シーズンを観ながら食べたディナー…。スクリーンを見ながら食事をすることはよくあることだ。『Maigrir, c'est dans la tête(痩せるかどうかは頭の中次第)』(1)の著者の精神科医で心理療法士のジェラール・アプフェルドーファーによると、「世界のアメリカニゼーションと文化の発展により、今日、食べることはポンプで身体を満タンにすることと同義ではなくなりました」とのこと。しかし、このような行為は、ある人にとっては手っ取り早く、実用的で、楽チンかもしれないが、私たちの幸福や健康に影響を与えないわけではない。
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体重が増える
スクリーンの前で食事をしているとき、インスタグラムを眺めているとき、ネットフリックスの番組表をチェックしているとき、仕事を続けているとき、注意が正しい場所、つまり皿の中身には明らかに集中していない。そして、それが問題なのだ。"スクリーン"は魅力的で催眠的なオブジェクトである。注意を引くことで、意識して食べること、つまり味覚を感じることを妨げてしまうのだ。精神科医のジェラール・アプフェルドーファーは、「満腹感が得られず、太りやすくなる」と述べる。
このプロセスを理解するためには、「特定の感覚の充足」と呼ばれるメカニズムを知る必要がある。食事中は、食べれば食べるほど、食べ物から得られる喜びの認識が低下していく。アグロ・パリ・テック(フランスの生命科学、農学分野のグランゼコール)の食行動学の講師であるオルガ・ダビデンコは、「最初の一口ですべてを味わい、最後の一口で味覚が麻酔されたようになり、満腹感を覚えるのです」と説明する。しかし、集中力がなければ、感覚がなければ、満腹感を得ることは難しい。
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食事の記憶が曖昧
また、パソコンやテレビの前で食べた食事は、その時の記憶に影響を与え、記憶はまさに満腹感に影響する。スクリーンの前では、食べ物の食感は得られず、そこで起こっていることに感覚が支配されるのだ。
「数時間後、あるいは数分後には、脳は食事の記憶をぼんやりとしか覚えておらず、摂取した食事の量を把握することができません」とオルガ・ダビデンコは付け加える。「これは、記憶喪失の患者にも確認されています。満腹になるまで食事を与え、その20分後に再び食事を提供しました。最近食べたことを覚えていないので、その都度食べていました」。
視聴されるコンテンツにも注意が必要だ。動揺したシーン、仕事のメール、暴力的なイメージなど、感情は食事の量に影響を与える。精神科医のジェラール・アプフェルド–ファーは、「食べ物には紛れもなく心を落ち着かせる効果があります。ある種の感情が私たちの感覚を攻撃し、それが手に負えないものではない場合、防衛メカニズムが作動し、この妨害を相殺するためにもっと食べようとするのです」。
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消化の乱れ
栄養士のレティッシャ・ウィラーヴァルは、「消化のプロセスは目と鼻から始まります。五感を使って食べることは、良い消化のためには欠かせません」と断言する。食べ物を見たり、匂いを嗅いだりすることで、消化酵素を含んだ唾液が分泌される。また、早食いをすると、噛む回数が減り、これらの酵素の分泌が阻害される。「また、猫背になることで、胃が圧迫されて機能が低下します」と管理栄養士は付け加えます。
早食い、過食、ダラダラ食べる。スクリーンの前での食事が多いと、太るだけでなく、高血圧、血中の糖分過多、善玉コレステロールの低下など、「メタボリックシンドローム」と呼ばれる異常が発生する…。
bien-être(ビヤンネートル:自分自身が心地よく居られる状態)も脅かされてしまう。精神科医のジェラール・アプフェルドーファーは次のように強調する。「食べることは、最も簡単に堪能できる楽しみのひとつです。それは、自分自身を大切にすること、自分の体に配慮すること、存在する過程の自分を観察すること、おろそかになりがちな人生を取り戻すことを意味します」。
専門家はできる限り自分の意識をリセットさせることを勧める。それは、自分で食事を用意し、好きなものを選び、体からの信号に気を配り、器に気を配り…という広大な表現である。また、2010年にユネスコの無形文化遺産に登録された「フランス人の美食」のように、和気あいあいとした瞬間を取り戻すことが理想である。
(1) ジェラール・アプフェルドーファーは、「Maigrir, c'est dans la tête(痩せるかどうかは頭の中次第、Odile Jacob刊、 360ページ、26.90ユーロ)」の著者。
texte : Julia Mokdad (madame.lefigaro.fr), traduction : Hanae Yamaguchi