【医師監修】がんと闘病中、会社でカミングアウトすべき?

Beauty 2021.03.10

身体の不調、持病との付き合い方。いつまでも健康でいたいけれども、いざ病気になったとき、病気かも?と思ったときに、人には聞きづらい&インターネットで調べてもはっきりとはよく分からない……そんな疑問に医師が答えます。
今回は、もしがんになったら会社でカミングアウトすべきか、国立がん研究センター研究所の医師、増富健吉先生に聞きました。

Q:がんと闘病しながら社会生活をおくる場合、会社でカミングアウトすべきですか?
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文・増富健吉(国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長)

この質問は、現代のがん医療を取り巻く環境から考えても大切なポイントです。がんを取り巻く考え方や社会情勢が随分と変わってきていますので極めて重要な点です。

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私が医師になった25年前は「がん」である事実を本人にも「隠す」様な時代でした。本人にお話しする前に家族を呼んで「御本人にはどのようにお話ししましょうか?」「正直に全てお話ししますか?あるいは、病名は告げずにいますか?」などと「密会で相談」してから本人に話すという、今思えば「何とも奇妙な時代」でした。

この記事を読まれている方は「当時」のこうした状況をどう思われますか? 当然のことだと思われますか?あるいは、私が表現したように「奇妙」な時代だったと感じますか? 私は、日本のがん医療の変遷をそばで見てきているので今は当時のことを「奇妙」に感じますが、一般の方々には「今」でも「隠したい」というお考えの方もたくさん居るような気がします。私は、米国でのがん医療も見てきましたが、米国では早くから「がんであることを本人に全て伝える」ことは当然のことでした。宗教観、文化、価値観などが全く異なる国と簡単に比較することはできませんが、時代が変われば、医療自体も、また、考え方も随分と変わるものです。

さて、このがん医療を取り巻く環境、私が医師になった25年前と何が大きく変わったかを説明しながら、がん患者の人たちの社会でのあるべき位置づけを考えようと思います。

この25年間で大きく変わったことは、
1) がんは「不治の病」といわれた時代から、早期発見すれば「完治可能な病気」になりました
2) がん医療を提供する方法も「入院治療の時代」から「外来治療の時代」へと大きく変遷しました
3) 社会も「がんとの共生」という考え方を理解しようと努力をするようになりました

この3つの点は「がんであることを本人に伝え、がんであることを社会にも伝えて」生きていこうとする時代の原動力になっています。

がんの治療には、辛いことも多くありますので、まず、本人の理解と気力は必須の要素です。本人に真実を伝えずに良い結果を得ることは不可能です。その上でがんを治そうという時代になりました。一方で、医療の進歩で、以前は入院して行わなければ不可能だった治療(例えば、抗がん剤治療)も、今では、外来通院で上手にできるようになりました。となると、「会社にも3分の1くらいは出社できそうかな?」という考え方も生まれてくるわけです。会社は会社で、がんであることを聞いてさえいれば、「がん治療の通院をしながら、可能な範囲での出社」に協力しようという姿勢になってきています。先進的な取り組みをしている会社では、例えば大手有名総合商社I社は、国立がん研究センターと協力して「がんとの共生」を目指した会社作りを行っています。

時代の流れ的には「がん」であることを正しく伝え、周囲の理解を得ることを目指し、周囲もその取り組みに協力することが最も健全だと思います。

少し堅い話になってしまいましたが、「がん医療を取り巻く環境」だけが時代とともに変わってきているわけではないと思います。例えば、私が学生時代、ラグビー部の練習中は水分補給は御法度でしたが、今は、いつでもお水を飲むのが標準、むしろ水分取れといわれますよね。野球のピッチャーも投球後は「肩を絶対に冷やすな」と言われてましたが今は「アイシング」は必須ですよね。昔は、先輩から誘われた飲み会は基本的には絶対参加でしたが、今は、飲み会に誘うのは「パワハラ認定」されることもあるようです。時代が変われば、標準も変わる。

日本でも、がん治療をしながら、そして、治療に伴う見かけの変化をまわりの人たちも認識しながら働くのが、普通の時代がもうきているのかもしれません。

増富健吉(ますとみ・けんきち) 
国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長。1995年金沢大学医学部卒業。2000年医学博士。2001-2007年ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。日本内科学会総合内科専門医、がん治療認定医、日本医師会認定産業医。専門は分子腫瘍学、内科学。東京医科歯科大学大学院連携教授、東京慈恵会医科大学連携大学院教授、順天堂大学大学院客員教授。

photo:i-Stock, texte:KENKICHI MASUTOMI

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