人も地球も健康に!「プラネタリー・ヘルス」を始めよう。

Beauty 2021.04.23

桐村里紗

こんにちは。今回から「プラネタリー・ヘルス」をテーマに執筆することになりました、医師の桐村里紗です。

さて、医者である私ですが、今日の仕事は、とあるローカルエリアで地球回復のための畑の開墾。微生物、昆虫、動植物がきゃっきゃと戯れているイメージの「食べられるジャングル(エディブル・ジャングル)」をつくろうとしています。

人間を治療することが仕事の医者が「いったい、何をしているのだ?」と思われるかもしれません。確かに私は、一般的な医師街道を外れに外れて、道無き道をバッサバッサと切り開きながら進んでおります。が、「すべての道はヘルスケアに通ず」。畑は立派なヘルスケア活動の一環。それも、世界的に最もホットなトレンドだと考えています。

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photo:iStock

この畑については、話すと長くなりますので、おいおい紹介するといたしますね。

この連載では、幼少期から人や生命についてマニアックに探究し、古典から世界最先端のヘルスケア、ウェルネストレンドまで、さまざまに首を突っ込んできた私が、奥深く、かつポップに、真のヘルスケアとウェルネス実現のために日々実践していること、皆さまに伝えたいお役立ち情報を発信していきます。つまり、薬を処方する代わりに、皆さまに“情報”を処方します。情報がアップデートされれば、意識が変わり、行動が変わる。そして人それぞれが本来持つクリエイティビティが無限大に発揮されれば、自らの健康、ウェルネス、そしてもはや瀕死状態の地球全体をも、創造的に建て直していくことへと繋がります。

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「自分だけ健康」「自分だけ幸せ」は不可能!

Covid-19の流行で気づいたかもしれませんが、人は、自分だけ健康になろうとしたって、実は無理! 私たちは“環境”に必ず影響を受けてしまいます。環境にも大小がありますが、最も身近なのは腸内環境。そして外的な家庭環境やコミュニティ、社会、地球環境。そのすべてはネットワークのように自分と接続していて、しかもインタラクティブに影響し合っています。

また、身体をいかに健康に保とうとしても、ストレスフルな生活で「心がやられてしまって、身体にきた!」という経験を持つ方も多いはず。人の心と身体、腸と脳、そしてあらゆる臓器や細胞のすべて、これらも相互に影響し合う、というのが最新の科学で言われていることです。

つまりは、ミクロからマクロまで、分断できない網の目のように繋がっているのがこの世界。アナログ世界もインターネットのウェブのように、すべてがネットワーク化されているのです。だから、どこかに影響が出たら、必ず自分にも影響が及ぶ。つまり自分だけ健康になろう、幸せになろうと思っても、無理!というわけです。

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photo:iStock

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アボカドは本当に「ヘルシー」な食材?

ファッション業界では「エシカル」を選ぶことがリテラシーになりつつあります。これまでは「自分をアゲる服を買う」という日常の消費行動が、知らず知らずのうちに、世界のどこかの労働者や、地球環境に負担をかけてきました。でもその事実が明らかになったいま、おしゃれのためにほかの誰かや地球に負担をかけるって、かなりダサいしエゴイスティック。逆に、アップサイクルされた素材や、生産者や環境に優しいオーガニックコットンを使ったものをチョイスするほうが、圧倒的にクールだよね、というのが世界の潮流ですね。

ヘルスケアやウェルネスも、それと一緒。これまでのさまざまなヘルスケアやウェルネスは、自分だけを最適化するやり方でした。栄養学に基づいたヘルシーフードやサプリメントなどもそうですね。

「ダメなの?」
いえいえ、「ダメ」なわけではありません。でも、その食のチョイスが、ファッションと同じように地球の裏側の誰かや環境に負担をかけていたら?

たとえばアボカドは、ヘルシーフードの代表格とされる野菜ですが、熱帯地方で大量の水と農薬、化学肥料を使って作られているうえ、現地の人々の口には入らないまま、先進国にコストをかけて輸送され、ヘルシー志向の私たちに食べられます。確かに栄養価は高いし、腸活にもいい食材だけど、それを知ると良心がざわつきませんか?

その解決策として、環境を再生するリジェネラティブな農法(環境再生型農業)や、アグロフォレストリー(森とともにある農業)などの農法で生産されたものをチョイスしたり、地元で生産される旬の食材を地産地消することなど、選択肢はいろいろとあります。

人と地球全体の健康、プラネタリー・ヘルス

これまでお話してきたように、人を“地球全体の生態系の一部”と捉え直し、地球というシステムを最適化することを「プラネタリー・ヘルス」と呼びます。

ネットワーク全体を健康にすることで、自分自身の健康やウェルネスも同時に実現することができます。なぜなら、すべては繋がっているから。話を聞いただけでは難しそう!と感じるかもしれませんが、私自身が実践していて、まったく窮屈さはありません。日本はちょっぴり(実は、かなり!)乗り遅れているけれど、大丈夫です! 日本人は本質的に自然との繋がりを大切にし、相手のことを自分ごとのように考える「和」のスピリットを持っていますから、ポテンシャルは高いのです。“みんなのハッピーが私のハッピー”になるヘルスケアやウェルネス、一緒に取り組んでいきましょう。

次回からは、具体的なライフスタイルについてお伝えしていきます。

texte:RISA KIRIMURA

桐村里紗

医師 / tenrai株式会社 CEO
臨床現場において、最新の分子栄養療法や腸内フローラなどを基にした予防医療、生活習慣病から終末期医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。食や農業、環境問題への洞察を基にした人と地球全体の健康を実現する「プラネタリーヘルス」や女性特有の悩みを解決する「フェムケア」など、ヘルスケアを通した社会課題解決を目指し、さまざまなメディアで発信、プロダクト監修などを行なっている。また、東京大学工学系研究科道徳感情数理工学・光吉俊特任准教授による社会課題を解決する数式「四則和算」の社会実装により人と社会のOSをアップデートすることを掲げたUZWAを運営。現在は、東京と鳥取県米子市の2拠点生活を送り、土と向き合う生活を送っている。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演するなどメディアでも活躍し、新著『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)が話題。
https://tenrai.co/

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