一生同じ香りと添い遂げるって、可能ですか?

Beauty 2021.06.21

生涯の香水を見つけ、何十年も使い続ける? そういうこともある。しかし現代は香りのザッピング時代。そのときの気分や装い、あるいはインスタグラムの投稿に合わせて、いろいろな香りをコレクションしている人も多い。フレグランス市場の競争もますます熾烈になり、試す間もなく続々と新製品が登場する。

それでもひと目惚れや情熱的な関係、長い長い大恋愛が生まれることも、もちろんある。しかしカップルと同じで、香水との関係は山あり谷あり。耳の後ろでも、喧嘩に妥協、離婚に復縁と、さまざまなドラマが繰り広げられている。私は愛してる。でも彼は気が変わってしまった……。

【関連記事】新しいパートナー候補を探すなら、この夏の香りから。

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photo:iStock

彼は浮気者

彼の名は、ディオールのジャドール、ランコムのラヴィエベル、ゲランのラ プティット ローブ ノワール、シャネルのココ マドモアゼル、あるいは、ケンゾーのフラワー。彼らには数え切れないほどの愛人がいる。フレグランス界のスターやトレンドの影響力に目を奪われると……。あらゆる女性のうなじからあなたと同じ香りが。自分はみんなとは違う存在だと感じているのに! とはいえ、安心感があるのも確か。これだけ多くの人に愛されているということは、あなたの選択は間違っていなかったわけだ。ただ、親友(あるいはライバル)が同じ香りをつけていたら、ちょっと差をつけたくなるのでは?

●解決策は?
はぐらかしと正攻法のダブルで攻める。こうした古今の大ヒット商品からは「フランカー」と呼ばれるシーズナルなアレンジが生まれている。同じラインの香りを取り入れて、バリエーションを楽しもう。

夜に纏うなら、オリジナルの官能的な面をいっそう際立たせた、パコ ラバンヌのレディ・ミリオン・ファビュラス。オードパルファンよりさらに溌剌とした印象のジバンシィのオードトワレ、イレジスティブルや、ナルシソ ロドリゲスのナルシソに新しく登場したオー ネロリ アンブレがおすすめ。ミュグレーのエンジェル・アイスド・スターは、リッチで爽やか。ココナッツ、ジューシーなパイナップル、プラリネの香りが感覚を心地よく刺激する。

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彼が変わってしまった

何か兆候があったわけではない。でもある日、彼は別人になってしまった。あなたにとってはショック。しかし香水は生き物。常に変化している。

そのうえ、定番のクラシックな香りも含めて、あらゆる香水は定期的に調合が見直されている。「再調合が行われるようになったのは1970年代です。ゲルリナーデの主役としてベルガモットが取り入れられたのもその頃です」と、ゲランの調香師のティエリー・ワッサーは説明する。「メゾンが最初に香水を発表したのは1853年。その後、原料の栽培方法や抽出方法はずいぶん変わりました」

とくにこの間に欧州内の規制によって、健康や環境、あるいは倫理上の理由で使用禁止とされた原料は数多い。「時代とともに生きなければなりません」とワッサーは続ける。「たとえ、アレルギー物質と言われている成分のなかにも、私たちが呼吸している空気よりよほどリスクの少ないものがあるにせよ……。疑わしいものをすべて別のものに置き換えるのでなく、同じ効果を再現することが大切です。物語と同じで、言葉はいくつか置き換えても、意味やスタイルが変わることがないように」。それが不可能な場合は、諦めるしかない。

そんなわけで、パリュールやナエマの香水は廃番となった。一方、現在物議を醸しているのはサリチル酸メチル。香水界のディーバたち、イランイランやジャスミン、チュベローズのような白い花の多くに含まれている物質だ。「人々は自然なものを求めますが、でもそこから派生する問題は欲していないのです」とワッサーは語気を強める。

幸いにも、グリーンケミストリーによって、日々新しい合成香料が生み出されている。おかげで今後救われる名作もあるかもしれないが、すべてというわけにはいかない。「香水もいつか死ぬ時が来ます。それは大したことではありません」とフランシス・クルジャンは話す。シャネル N°5、シャリマー、オピウム、オー ソヴァージュといった時代を超えたスタンダードのいくつかは、モナ・リザのように後世まで残るだろう。しかし、そうしたクラシックは徐々に減っていく。

●解決策は?
付き合いの長いカップルのように、お互い歩み寄るか、あるいはもうこれまでか……。いずれにせよ、もう20歳ではないからといって、あるいはリフティングをしたからといって、相手を責めてはいけない。

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私が成長した

では、変わったのはあなたの方だとしたら? 18歳を過ぎたら、いちご味のグミやヌテラの香りにはあまりそそられなくなるもの。社会人になったら、オープンスペースにむやみに香水の匂いを充満させないよう、マナーを身につける必要もある。大恋愛を経験すると、元彼たちのことは忘れて、新鮮さに心惹かれる。ホルモンバランスも香りの好みを左右する。妊娠すると、あらゆる匂いに敏感になり、気分が悪くなることさえある。そういうときは軽い香りのほうが使いやすい。年齢とともに、嗜好は変化し、感覚は鋭くなり、要求も細かくなる。そしてある日、また倦怠期がやって来る。

●解決策は?
ひと息入れて、気分を変える。再び恋の炎を燃え上がらせるには、ちょっとした香りのアバンチュールが何よりも効果的……。しばらくしたら、またかつてなじんだ香りの魅力に気づくはず。子どもを安心させるぬいぐるみのように、幸せな頃を思い出させてくれる。うっとりと至福に浸ろう。

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photo:iStock

気持ちが揺れる

だから何? 一度に複数の人を愛することだってある。クリエイティビティにあふれる調香師たちのおかげで、カサノヴァ並みに惚れっぽい鼻腔の情熱の炎は燃え上がる一方だ。「人はひとつの人生でいくつもの生を生きています。私たちはみな複数の顔をもった複雑な存在なのです」とクルジャン。

●解決策は?
感性を足し算してしまおう。クルジャンはこの夏、「コローニュ フォルテ」コレクションから2つどころか3つの香りを発売した。フレッシュさに新たな解釈を施したオー・アンタンスのトリオを紹介しよう。

アクア ユニヴェルサリス コローニュフォルテが表現するのは、「桜の木立を通り抜けた清々しい風の気配を肌に受けとめたような」清純な純白のイメージ。アクアヴィタエ コローニュフォルテは「フィリップ・グラスの音楽を聴きながらフォルメンテラ島をモビレットで駆け抜ける時、顔に吹きつける熱い風」。アクアセレスティア コローニュフォルテは「ブルーマリンとスカイブルーが出会うロスコの絵画」を彷彿させる。これでは迷うのも当然。

感情のるつぼといえばジョー マローン ロンドン。ハワイ原産の赤と黄色のハイビスカスにオマージュを捧げたブロッサム・コレクションから、太陽のように煌めくふたつのフレグランスが生まれた。ひとつは春のイメージが漂う軽めの香り、もうひとつはより官能的……。ひとつだけ纏ってもいいし、重ねづけもできる。

カルティエの調香師マチルド・ローランが偏愛するのは、花の女王ことバラ。しかしローズウォーターのロマンティックなムードはあまり好まない。そこでバラをテーマに彼女が描き出したのが、個性が際立つ野生的で棘のある3つの香り。レ ズール ドゥ パルファン ルール オゼ、レ ゼピュール ドゥ パルファン ピュール ローズ、レ ズール ヴォワイヤジューズ ウード&ピンク、それぞれの香りについてローラン自身は「あるがままのバラ、パンクなバラ、タキシードを纏うユニセックスでショッキングなバラ」と喩える。カップルにちょっとした刺激はいかが?

クロエのアトリエ デ フルールでは、バニラ プラニフォリア、パピルス、チュベローズ 1974など数種類のフレグランスから自分好みの香りのブーケをアレンジできる。ポエジーあふれる香りで個性を表現しよう。

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もう感じなくなってしまった

マンネリが続くと感覚も飽きてしまう。感覚が鈍ると、かつての興奮を求めて何度もスプレーを押すことにもなる。そんなときは、1~2カ月間、嗅覚デトックスをしてみるといい。それでも状況が変わらない場合は、潔く彼にさよならを言おう。絶対にどこかであなたを待っている人がいるから。

新型コロナウイルス感染症の後遺症で嗅覚障害を患っている場合は、話は別だ。患者の95%は2週間から6カ月で嗅覚が元に戻るが、かなりのハンディキャップであることに変わりはない。

●解決策は?
12週間、毎日のトレーニングで500万個の嗅覚細胞のリハビリを行う。調香師の訓練メニューと病院で実施されている治療方法を取り入れたトレーニングキットH.O.S.M.I(Happy Olfactive Stimulation for Memory & Instict)は、嗅覚を取り戻すのに有効な感情を強く喚起する6つの香りがセットになっている(hosmi.frで購入可能)。

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photo:iStock

彼が去っていった

何年もの間、大恋愛を紡いでいた。それがある日、突然、あなたの愛する香りがどの店からも消えてしまった。もっとひどいことに、愛する香りがいた売り場には別の香りが居座っている。しかも名前も装いも同じ。なのに個性がまったく違う。あなたの愛する香りはまだどこかで生きているのだろうか? 謎だ。香水の世界には優雅なる死体が累々と積み重なっている。

●解決策は?
もちろん探し続けることも可能だ……。香水店に問い合わせてみれば、在庫のなかに忘れられて眠っていることがあるかもしれない。あるいはインターネットで香水専門サイトを手当たり次第検索するという手もある。

ただし保存状態が悪いと(香水は冷暗所で保存するのが基本)、香水は劣化してしまう。せっかく手に入れてもがっかりしてしまう可能性が。NoseやJovoyなど専門店で探すようにしよう。

モリナールやドルセー、ウビガンといったメーカーではときおり過去にヒットしたアイテムの復刻版を発表することがある。ディプティックはマージナルなものも含めて、フレグランスは決して廃番にしないと謳う。フレデリック マルも同様だ。あらゆる希望が水泡に帰してしまったら、そのときは諦めて、代わりを探すしかない。同系統(フローラル、オリエンタル、シプレー、シトラス、フルーティ……)のものを選んでもいいし、がらりと違う香りを試してみるのもいい。必要ならばエキスパートに相談してみよう。きっと若い恋人候補を紹介してくれるはず。

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彼はお金がかかる

多くの場合、お金をかけるだけの価値がある相手ということ。しかしときには、洋服や見た目にお金をかけすぎて、中身にがっかりなんていうことも。

●解決策は?
あからさまに表に出さないけれど、胸の中に色々な思いを秘めたタイプもいる。「プチプラ」に恋に落ちるのは恥ずかしいことではない。なかには高価なものに劣らず質の高いフレグランスもある。イヴ・ロシェは、著名な調香師を招いて、どこに出しても恥ずかしくない立派な香水を開発している。ときにはロジェ・ガレ、ビアンエートル、モン・サン・ミシェルのようなブランドの製品のほうが、教養のないゴールデンボーイより、洗練されたナチュラルな印象を与えることもある。

今シーズンなら、ロクシタンのオードトワレ、アクアカクタスヴァーベナ、あるいはニュクスのプロディジュー フローラル ル オードパルファムがおすすめ。どちらもお手頃なプライスで夏の空気を満喫させてくれる。大手ブランドは製品の安売りはしないものだが、美容専門オンラインショップなどでお買い得が見つかることもある。

 

もう夢を見せてくれない

こうなったら弁解の余地なし。さっさとほかを探そう。旅行をするのが難しいいまだからこそ、気持ちを遠くまで運んでくれる香りを選ぼう。

スコットランドへ。ガブリエル・シャネルとウェストミンスター公爵の愛にインスピレーションを得たシャネルのオードゥ トワレット、レ ゾー ドゥ シャネル パリ エディンバラがあなたをハイランド地方へ誘う。エネルギーに満ちた奔流、田園の館に漂うピーティーな熱気……。決して期待を裏切らないシックな香り。

カリフォルニアへ誘うのは、ルイ・ヴィトンのオン ザ ビーチ。寄せては返す太平洋の波にサンタモニカの熱い砂浜。そして日本からやってきた希少な柑橘類、柚子の香りが五感に訴える。

イタリアのパンテッレリーア島へ、ジョルジオ・アルマーニのシプレ・パンテッレリーアとともに。調香師のアルベルト・モリヤスが島の魂を香りに閉じ込めた。「岩山、強い風、紺碧の空……。肌に刻まれたタトゥーのようなウッディな匂いをほのかに感じる、塩の風味とミネラル感のある力強く芳醇な香水を作りたかった」。あなたの好きな人と一緒に堪能して。

ロドリゲス島へは、アトリエ・コローニュのレモン・アイランドととともに。レモン、ジャスミン、バニラの香りに乗って、インド洋のに浮かぶこの秘密の島へ航海しよう。

※ 参考図書 Elisabeth de Feydeau著『Dictionnaire amoureux du parfum(香水を愛する人の辞典)』Plon出版刊

text:Marion Louis (madame.lefigaro.fr)

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