女性たちの悪夢、膀胱炎について知っておくべきこと。
Beauty 2021.09.16
女性によく見られる膀胱炎は、煩わしいだけでなく苦痛を伴う。症状が起きると生活にも大きな影響を及ぼすことが多い。感染症専門医のジャン=マルク・ボボに、検診や治療法の現状について聞いた。
膀胱炎は女性によく見られる尿路感染症。煩わしいだけでなく苦痛を伴い、症状が起きると生活の質にも大きな影響を及ぼす。photo:Getty Images
フランスでは、30秒に一人が膀胱炎を発症している。女性の二人に一人が一生のうちで一度はこの不快で苦痛な経験をしているという。その主な症状は、頻繁にトイレに行きたくなる、排尿中あるいは後の焼けるような痛み、そして疲労感だ。
数年前から、パリのフルニエ医療センターの感染症医ジャン=マルク・ボボは、膀胱炎の早期治療を促すために医療機関に働きかけ、患者の訴えに適切に耳を傾ける必要性を強調している(1)。医療ジャーナリストのリカ・エチエンヌとの共著『膀胱炎、女性たちの悪夢』で、「婦人科医療を改革するのはいまです」と二人は強調している。「いまこそ、女性たちは人生をかき乱すこの苦痛から解放されるべきです」。膀胱炎についての解説と解決策を紹介する。
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――巷でいわれるのとは違って、膀胱炎の原因は性感染症ではありません。しかし著書では、この疾患の大部分にはやはり性交渉が関連していると強調されています。説明していただけますか?
膀胱炎は尿路感染症のひとつで、感染すると膀胱壁に炎症を生じます。この疾患は一般的に腸内細菌の侵入と定着が原因。代表的なものはエシュリヒア・コリと呼ばれる大腸菌です。腸内フローラのバランスが崩れると、細菌が膣に侵入します。通常は膣内の常在菌叢が侵入した細菌を迎え討ち、繁殖を抑えます。ところが、この膣内細菌叢自体がバランスを崩していると、大腸菌が内部で増殖し、性交渉の挿入による往復運動で膣内の大腸菌が尿道口へ移動してしまう。性具でも同じことが起こります。つまりパートナーは感染の媒介にすぎず、感染源ではないのです。
――膀胱炎はすぐに治る場合もあれば、頻繁に繰り返すこともあります。なぜですか?
女性には人生のさまざまな段階で粘膜が脆弱化しやすい時期があります。不健康な生活習慣や、自分の意志とは無関係の要因でも、膀胱炎を再発させることがある。たとえば性行為にまだ慣れていない頃は潤いが不十分だったり、過剰なストレスによって数々のトラウマが生じやすい。
また妊娠中は子宮が膀胱を圧迫するため、膀胱の活動が弱まります。尿が膀胱内に残ると、トイレを我慢するのと同じように、悪い細菌が繁殖しやすい環境が作られてしまいます。
さらに閉経期には膀胱壁の機能に必要なエストロゲンの分泌が減り、骨盤周辺の筋肉が衰え、失禁の要因となる症状が出てきます。尿漏れは陰部の炎症を引き起こし、感染症のリスクを高めます。
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――膀胱炎が繰り返し再発すると、恋愛や性生活にも大きな影響を及ぼします。著書の中でも数々の症例が報告されています。想像以上に多くの女性が辛い経験をしています。
再発性膀胱炎がカップルに及ぼす影響は相当なものです。性交後の膀胱炎が心配で性行為を恐れてしまう患者もいます。膀胱炎は性感染症の一種という社会通念がただちに払拭されないかぎり、パートナーに対する疑心は募る一方です。
こうしたデリケートな悩みを話題にするのはいまだにタブー。身近な人たちとの会話に限らず、診療室でもそうです。間接的な影響はプライベートだけでなく仕事にも及びます。1日に10回もトイレに行くような状態で、それが試用期間だったりしたら、雇用者が理解を示すとは限りません。こうしたことがストレスとなり、膀胱粘膜をさらに脆弱化させ、悪循環が続いてしまいます。
――症状が現れたら、まずどんなことに気をつけるべきですか?
25~30%のケースでは、1.5Lの水を飲めば炎症は治まります。十分に水分をとることで、細菌叢に侵入した有害物質の影響を弱めるわけです。一方、コーヒーやお茶のような利尿作用のある飲み物は避けること。粘膜を刺激する可能性があります。
排尿時の痛みを緩和するには、ぬるま湯に浸かって用を足します。医療機関にかかると必ず抗生物質が処方されます。ただ、抗生物質は短期的には効果がありますが、感染予防としての効果はまったくありません。
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――予防法はあるのですか?
日頃から十分に水分を摂り、膀胱内の尿を完全に排出させるために、正しい姿勢で便座に座ることです。
年に4回以上症状が見られたら、再発性膀胱炎の可能性があります。原因を突き止めるために、膀胱炎を引き起こす要因について、かかりつけ医とじっくり話をする必要があります。真菌症、おりものの異常、便秘、膨満感、性欲減退、ストレスといった症状があれば、腸や膣内の細菌のバランスが崩れているサインかもしれません。
またそれ以外にもリスク要因があるか調べるために検査を行います。糖尿病を患っていると、尿にブドウ糖が混じり、細菌が繁殖しやすくなりますし、尿路結石も尿の正常な排出を妨げる原因になります。
――抗生物質に代わる治療法にはどのようなものがありますか?
膀胱炎に即効的に効く製品もあります。プロバイオティクスと薬用植物を主成分としたもので、フランスでは薬局で処方箋なしで購入できます。感染症の初期症状が現れたときに、十分な水分摂取と並行して服用すると効果的です。腸や膣内細菌のバランスの乱れなど、各自の問題に適した製品を見つけるには、薬剤師にアドバイスを求めるといいでしょう。
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――膣内細菌叢のケアには、普段どのようなことに気をつけるべきでしょうか?
あまり頻繁に除菌プロダクトや石鹸を使ってデリケートゾーンを洗うと、膣内細菌叢に悪影響を及ぼします。粘膜を乾燥から保護するために、クレンジングには保湿性の高いジェルタイプを使うといいでしょう。
また、細菌叢のバランスを良好な状態に保つのに何よりも大切なことは、運動、ストレスのない環境、規則正しい睡眠です。とくに膣と膀胱の最大の敵であるタバコは控えましょう。
(1)Jean-Marc Bohbot、Rica Etienne共著『Cystite, le cauchemar féminin』Éditions Flammarion
text:Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr)