コーヒーがないと一日が始まらない。それって本当?

Beauty 2021.10.01

朝のコーヒーを飲まないと何もできないという人がいる。カフェインを摂らないと目を開けられず、仲間と礼儀正しく話せず、仕事にも取りかかることができないという、その主張は本当なのだろうか? コーヒー依存症と言われるものについて専門家が解明してみせた。

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カフェがないと一日が始まらない……それって本当? それとも? photo:Getty Images

あなたの周りにも、朝一番のコーヒーを飲まないと何もできないと主張する人がいるのではないだろうか。「何もできない」というのは、精神的には一緒に住んでいる人や、コーヒーを飲む前に出会ったすべての人と感じよく付き合えず、肉体的には脳が働かない状態を意味する。コーヒーを飲まない人、飲み物にあまり執着しない人にとっては驚きのシナリオだ。コーヒーは本当の依存症なのか、それとも不変の心理社会的儀式なのだろうか?

依存度の基準

「生物学的な意味でのカフェイン依存症はありません」と、フランス国立保健医学研究機構(Inserm)のアストリッド・ネリグ名誉研究部長は即答した。依存症について語るためには、アメリカ精神医学会による”精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-IV)”で定められている乱用と依存の基準を参考にしている。より正確には、その物質が依存性の7つの基準のうち3つを満たさなければならないが、カフェインはそうではない。

「その基準の中には、たとえばその物質に対する耐性があり、その効果を実感するためには摂取量を増やさなければならないというものがあります」と研究者は説明する。「さて、カフェインは自己調整機能を持つ物質です。つまり、カフェインを摂取する人が毎日同じ量を飲んで効果を実感し、身体は必要なものを吸収しているなら、たいていの場合その量を超えることはありません」。またカフェインは非常に低用量ならば、中毒性物質のように脳内の依存や報酬系の回路を活性化することはない。「カフェインがそのような働きをするためには、比較的大量に摂取しなければならないのです」とアストリッド・ネリグは付け加えた。

その代わりにカフェインは、止めると依存性の基準、いわゆる「禁断症状」を満たしている。研究者によると、カフェインを止めた消費者の10~15%が影響を受け、48時間から1週間程度続くという。イライラ、不安、頭痛、吐き気……「症状は軽く、まれで、緩やかです」とフランス中毒性協会の会長で公衆衛生専門の医師であるベルナール・バセはいう。

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社会的な慣習

では、もしコーヒーに中毒性がないなら、コーヒーなしではやっていけないという人がいることをどう説明できるだろうか。コーヒー飲みが“服用量”を飲めなかったときの機嫌の悪さをどうやって正当化するのか。カップがなくなったコーヒーマシンの前で感じるイライラと、飲んだ時の心地よさ。「生物学的には説明できません」とアストリッド・ネリグは答える。起床後にカフェインのブースター効果を探していたと説明する以外にない。それには理由があり、「ほとんどの場合、胃が空っぽかそれに近い状態で朝一番のコーヒーを飲むのでカフェインは素早く吸収され、3分以内に全身に運ばれて45分でピークを迎え、2時間は安定した状態が続きます」とアストリッド・ネリグは説明する。同じくカフェインを豊富に含むお茶を比べてみると、同じ容量でもカフェインの含有量は3分の1で、その放出時間も長くなる。

そのほか、コーヒー愛好家は自分の依存レベルを誇張しているのだろうか? そうではないが、執着はどちらかというと儀式的なもので強迫的なものではない。「コーヒーは社会生活に関係するものの一部であり、習慣であり、一日を始めるための儀式であり、こういったすべてが私たちを安心させてくれるのです」とベルナール・バセ医師はいう。

そして、その儀式は3世紀にわたってフランス人のエスプリに根付いてきた。「17世紀にフランスのマルセイユに上陸したコーヒーは、18世紀には朝の飲み物となりましだが、それは都会の富裕層が飲んでいたものでした」と、地歴学者で『Le Monde dans nos tasses, l'étonnante histoire du petit déjeuner(カップのなかの世界、朝食の意外な歴史)』(※1)の著者クリスチャン・グラタルーは語る。「その後、産業革命が起こった19世紀には、学校や工場やオフィスなどに課せられたタイムテーブルに合わせて普及していきました。栄養がある飲み物で、そこへミルクと砂糖が加えられ、社会全体が飲むようになったのです。社会的な中毒の誕生です」

この“中毒”は推奨される用量を守ってさえいれば健康に害を及ぼすことはない。欧州食品安全機関(EFSA)によれば、健康な成人は1回の摂取で200mg、1日を通して400mgのカフェインを超えてはならないとされている。一度につきマグカップ1~1.5杯のフィルターコーヒーを、一日をとおして4~5回飲むとよいだろう。

(※1)『Le Monde dans nos tasses, l'étonnante histoire du petit déjeuner(カップのなかの世界、朝食の意外な歴史)』クリスチャン・グラタルー著、Dunod出版、 Ekhoコレクション、7.90ユーロ

text : Ophélie Ostermann(madame.lefigaro.fr)

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