男女「平等」に違和感!? 男女は違う生き物です。

Beauty 2022.12.05

桐村里紗

SDGsの項目に「ジェンダーの平等」が掲げられて、女性活躍の文脈でも「男女は平等でなければ」と議論されるシーンもよく見られます。
もちろん、権利やチャンスが万人に平等に与えられることは大切。
でも、性差や個性の違いを無視して、万人を「平等」に扱うのは少々乱暴ではないかというのが、医療的な視点です。

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photo: iStock

少し前までの男女同権論は、どちらかというと、それを掲げる女性が男性を敵対視しながらも、女性も男性と同じように社会で活躍する“べき”というものだったように思います。
性差を無視して、女性が鎧をつけなければならないようなイメージだったのではないでしょうか。
もっと力を抜いて軽やかに、違いを認め合いながら、手に手を取り合って生きていくことのほうが、いまの時代の気分だし、心地よいと思うのです。

そもそも、男性と女性の身体は全く違うので、同じように扱うことはできません。
女性の場合、毎月の月経のリズムがありますから、ひと月の間にもホルモンがダイナミックに変化します。このホルモンの影響で、女性が月のうちではつらつと軽やかな心身でいられるのは、月経が終わって排卵するまでの1週間から10日程度。それ以外は、月経でお腹が重いやら、排卵後はむくんだり沈んだりやら。

さらに、一生涯のうちでも、女性は生理が始まる中学生時代からホルモンの影響で不安定になり始めます。そして、20〜30代にホルモン分泌がピークを迎え、そこで妊娠出産という一大事を迎えます。自分以外の生き物をお腹に抱え、栄養は吸い取られ、ヘトヘトの身体でコントロールできない生き物を育てるというクレイジーなイベントを経験します。

そしてようやくいろいろ落ち着き、仕事でも責任ある立場になろうかという40代頃に、今度は更年期を迎えると、ホルモンの乱高下でさまざまな不調が押し寄せて、結局は昇進を諦めたり、早期退職を決断するなんてことも珍しくありません。そして50代で閉経を迎えたら、一気にホルモン分泌が低下するので老化が進み、生活習慣病のリスクを抱えながら生きることになります。

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photo: iStock

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一方で男性は、ひと月の男性ホルモンの分泌はほぼフラット。特に変化がありません。
一生涯のホルモン変化も、女性ほど急激ではなく、年齢とともに穏やかに減っていくのが一般的です。
だから、男女の身体は全く違うという前提を共有したいのです。

さらに女性の場合でも個人差がありますから、「私が大丈夫なんだから、あなたも大丈夫」は、通用しません。
遺伝子や腸内環境が違えば、体質も千差万別です。
男性からは理解されなくても仕方ないけど、同性に理解されないのがいちばんつらいという声もよく聞きます。

「万人を平等に扱う」ことだけを目的にすると、ハッピーな結果ではなくなってしまうかもしれません。
性差や多様な個性の違いに応じて、フレキシブルな対応をすること。これが「平等」ではなく、「公平」と言われる考え方です。
さらに、性差や多様な個性に関わらず、みんながハッピーになるように、障害の原因となっている環境を最適化することも大切です。

まずは、違いを「認める」ことが第一歩。
身体には男女差がありますし、心のジェンダーはもっと多様なグラデーションです。
モノクロームの世界よりも、カラフルなほうが楽しいですよね。

text: Lisa Kirimura

桐村里紗

医師 / tenrai株式会社 CEO
臨床現場において、最新の分子栄養療法や腸内フローラなどを基にした予防医療、生活習慣病から終末期医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。食や農業、環境問題への洞察を基にした人と地球全体の健康を実現する「プラネタリーヘルス」や女性特有の悩みを解決する「フェムケア」など、ヘルスケアを通した社会課題解決を目指し、さまざまなメディアで発信、プロダクト監修などを行なっている。また、東京大学工学系研究科道徳感情数理工学・光吉俊特任准教授による社会課題を解決する数式「四則和算」の社会実装により人と社会のOSをアップデートすることを掲げたUZWAを運営。現在は、東京と鳥取県米子市の2拠点生活を送り、土と向き合う生活を送っている。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演するなどメディアでも活躍し、新著『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)が話題。
https://tenrai.co/

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