環境のための選択。ジビエ調理時に注意したいこととは?
Beauty 2023.10.11
桐村里紗
前回は、ジビエの美容と健康の効果についてお話ししました。
今日は、私がプラネタリーヘルスの観点からジビエを取り入れている理由と、料理への活用法についてご紹介します。
どうして、ジビエ(野生肉)を食べることが、プラネタリーヘルスにつながるのか、ちょっと疑問に思うかもしれません。
地球のことを考えたら、お肉は食べないほうが良さそうな気がしますね。
でも、実は山の生態系を守り、人と動物が共生するためには、増え過ぎた野生の動物を食べることに意味があるんです。
山の生態系と野生動物
その昔、日本の山々には、ニホンオオカミが暮らしていました。
生態系の頂点にいるニホンオオカミが君臨しているからこそ、バランスは保たれていたんです。でも、明治の頃にニホンオオカミは人の手で絶滅させられてしまい、天敵がいなくなった鹿などは増え過ぎてしまいます。
さらに、人が山を切り開いたり、野生動物のエサとなる植物が育たない環境を作ってしまったり。山に暮らすことができずあふれ出した動物たちは、人里に下りてきて、田畑を荒らすようになります。
人と野生動物が再び共存共栄していくためには、彼らが暮らす環境を再生すると同時に、人が食用にすることで生態系のバランスを少しでも戻すことが大切なんです。
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プラネタリーヘルス料理にもジビエ
そんなわけで、我が家の食卓の基本は、ジビエ。
手に入りやすい鹿肉や猪肉を冷凍庫に常備しています。
私はいま、田舎暮らしを楽しんでいるので、ジビエは道の駅で購入できるのですが、日本のスーパーマーケットではまだ扱っているところは少ないですね。
インターネットならば、全国のジビエが簡単に手に入ります。
豚肉よりはちょっぴり高いけど、牛肉よりも圧倒的にリーズナブルです。
調理時に注意することは?
鹿肉は、牛肉と同じように。猪肉は、豚肉と同じように使えます。
鹿肉は煮込むと硬くなりやすいうえに、古いとアンモニア臭くなります。
いちばん使いやすいのは、冷凍のミンチ肉。
冷凍のまま鍋に放り込むか、冷蔵庫で解凍したらすぐに使うこと。
おすすめは、鹿肉キーマカレーや鹿肉餃子です。
もし鹿肉の塊を煮込むなら、圧力鍋で柔らかく煮るか、2日程度コトコト頑張って煮込むというひと手間をかけましょう。
猪肉は脂身がおいしく、炒め物や煮込みによく使っています。
リーズナブルな細切れを買っておけば、ちょっとした野菜炒めにも使えます。
トマトと味噌をベースに、ありものの野菜を刻み、それにスパイスを加えて煮込めば、なんともいえない深い味わいが生まれます。
ジビエは処理が命なので、上手に処理する職人さんがいれば、全く臭みはありません。
いろいろな地域のものを試して、チャレンジしてみて下さい。
プラネタリーヘルス料理のレパートリーが拡がると思いますよ。
桐村里紗
医師 / tenrai株式会社 CEO
臨床現場において、最新の分子栄養療法や腸内フローラなどを基にした予防医療、生活習慣病から終末期医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。食や農業、環境問題への洞察を基にした人と地球全体の健康を実現する「プラネタリーヘルス」や女性特有の悩みを解決する「フェムケア」など、ヘルスケアを通した社会課題解決を目指し、さまざまなメディアで発信、プロダクト監修などを行なっている。また、東京大学工学系研究科道徳感情数理工学・光吉俊特任准教授による社会課題を解決する数式「四則和算」の社会実装により人と社会のOSをアップデートすることを掲げたUZWAを運営。現在は、東京と鳥取県米子市の2拠点生活を送り、土と向き合う生活を送っている。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演するなどメディアでも活躍し、新著『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)が話題。
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