推し香水を語る会 vol.2 多様性を楽しみたい! 「パートナーに贈る香り」選び。

Beauty 2024.01.22

フレグランスは、ファッションの一部として個性を演出したり、気分のリフトアップに使えたり、あるいはリラックスのために活用できたり......。使いこなせば、日々をいっそう彩りにあふれたものにしてくれる存在。
そんなフレグランスにまつわるよもやま話を、編集部美容班がゲストとともに繰り広げる連載「推し香水を語る会」。今回は、バレンタインデーのギフト選びに向けて「パートナーに贈りたい香り」をテーマに、ビューティエディター/ライターの松本千登世さんをお迎えしました。

<ゲスト>
松本千登世
ビューティエディター/ライター
雑誌・単行本など、美容やインタビューを中心に活動。『顔は言葉でできている!』『「ファンデーション」より「口紅」を先に塗ると誰でも美人になれる 「いい加減」美容のすすめ』(ともに講談社刊)、『いつも綺麗、じゃなくていい。50歳からの美人の「空気」のまといかた』(PHP研究所刊)、ほか、著書多数。

<フィガロ編集部美容班>
編集KIM(フィガロジャポン編集長代理)
編集SK(シニア・ビューティ&ライフスタイル・エディター)
編集TI (madameFIGARO.jp担当エディター)

時代とともに変化する「贈りたい香り」。

TI 本日の"推し香水"のテーマは、「パートナーに贈る香り」。千登世さんだったら、どんな香りを選びますか?

松本 「貸してね」って感じで自分も時々使えるものかな。でも、それは最近かもしれない。香りがジェンダーレスになって、花の香りを男の人がつけても全然いい。そういうムードにすごく惹かれるようになった気がします。以前はパートナーにプレゼントするなら、自分にとってセクシーに感じられるかどうか?が基準だった気がするんですけど。

TI 女性がマスキュリンな香りをつけるというのは以前からも結構ありましたが、性別を問わず、選ぶ香りの幅が広がってきましたよね。甘い香り好きな男性が増えてきているという話もよく聞きます。

SK 千登世さんが贈るフレグランスの香調も、昔とは変わりましたか?

松本 好みのベクトルはあまり変わらないけれども、質が変化したかも。もともとベチバーみたいに、濃密でドンと沈む感じの香りを贈りたいと思っていたの。いまはもっと軽く、装いによっては自分がそれを纏いたいと思うものに変わったかな。

SK 昔のほうが重く、濃厚な香りが多かったですもんね。今日のテーマで選んでいただいたもの、まずはエルメスの「オー ドゥ シトロン ノワール」。

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オー デ コロン オー ドゥ シトロン ノワール 100ml ¥17,600/エルメスジャポン ©Studio des fleurs

KIM これは、言葉を選ばず言えば、すごく"男っぽい"と思う。

SK 昔ながらのフゼアノートというか。

TI トップは柑橘の爽やかさがあるけれど、ウッディ、スモーキーに落ち着きますね。

松本 贈りたい香りでもあるけれど、私も基本、毎日これをつけてます。夏も全然いけるんですが、重い服になった時にこそアクセントになるというか。もうひとつエルメスで持ってきたのが、「テール ドゥ エルメス オー ジヴレー」。

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テール ドゥ エルメス オー ジヴレー 100ml ¥19,030(予定価格)/エルメスジャポン ©Studio des fleurs

SK いいですよね〜! 「テール ドゥ エルメス」、好き!

松本 これは一昨年発売されたもので、オリジナルの「テール ドゥ エルメス」にシトロン、ジュニパーベリー、ペッパーが組み合わさって、ちょっとひんやり感がある。

SK 時間が経つとちょっとスモーキーになってきますね。

KIM ところで千登世さんは自分が好きな香りを贈るって言うけど、相手のイメージとか好みは考えないの?

松本 もちろん、相手に似合うとか、その人っぽいとか、相手が好きな香りというのは大前提。でも、これから想いを伝えようという人に届ける香りと、すでにずっと一緒にいる人に贈る香りでは、心持ちが違うかもしれない。SKだったらどんな香りを贈る?

SK 私は相手が普段からフレグランスをつけている人だったら、何を使っているのか聞いて、それに近い傾向の香りや好きそうなブランドを勧めるかな。まだ深い関係が築けていなくても、「こんな新しい香りがあるけどどう?」って提案したり。

TI 香り好きの相手だったら、おすすめしやすいですね。

SK 私は香水をつけない人と付き合ったことがないんだけど、それは香りと体臭がミックスした感じとか、香りのチョイスそのものに惹かれている面もあるのかも。自分が知らない香りをつけていたりすると、「教えて!」って好奇心が生まれるし、「この人いい匂いだな」って思うと、そこから「どういう生活をしているのかな?」と想像がふくらむ。

松本 以前、あるクリエイターの方にインタビューした時、「すれ違った女性がすごくいい匂いだと、全部想像してしまう」と言ってたの。この人はどんな暮らしをしていて、どんなパートナーがいて、これから車に乗るのか? それとも電車で帰るのか?......と、次々と頭に浮かんでくるって。メイクや服だけではそこまでいかないそうで、あらためて、香りって想像力を刺激するものなんだなと思った。

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パートナーと同じ香りをつけると、ときめきがなくなる!?

TI もうひとつ、千登世さんにおすすめいただいた香りは、フエギア 1833の「インディゴ」です。名前のとおり、染料のインディゴの香りが基調となり、パチョリやシダーウッドが加わっています。

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インディゴ 100ml ¥41,800/フエギア 1833

SK これまでの3つの香り、統一感があるかも。最初にキン!という感じがある。

松本 私、青くて苦い香りがたぶんすごく好きなんです。

TI 千登世さんは、実際にパートナーと一緒の香りをシェアして使うこともありますか?

松本 使います。でも、常に同じ香りをつけているわけではないかな。

SK 人間は同じ匂いがする相手には興奮しにくいから、香りをシェアしすぎるのはセックスレスの原因のひとつになりうるという説を聞いたのですが......。

松本 "Tシャツの実験"ってありましたよね。何人かの男性に2〜3日、同じTシャツを着続けてもらって、その体臭のついたTシャツを女性が嗅ぐ。すると、「いい匂い」と感じられるのは自分と最も異なる遺伝子を持つ男性が着ていたTシャツで、いちばん嫌な匂いは、自分の父親のものだと。それは近親交配を避ける人間の本能で、嗅覚は自分と違うDNAの人と巡り合うようにできているからなんだそうです。

KIM じゃあ自分が好きだなっていう香りは、もしかして自分とかけ離れているものだったりするのかな?

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香りのギフト選びで心がけたいこと。

松本 以前、フィガロボーテスターの取材で板谷由夏さんに香りのことを聞いた時、「フレグランスというのはすごくパーソナルで、他人に明かすものではないと思っている」と話してくれたじゃない? 確かに香りってそういう存在で、贈るのもどこか特別だよね。そこまで思いがない相手にはハードルが高いかも。

KIM たくさん香りを試したり知識を深める機会があるから、「この人には絶対これが似合うな」という場合は、私は好きな男性でなくても贈っちゃうこともあるなー。

松本 「KIMは俺のこと、こんなふうな目で見てたんだ」って思われているかもね(笑)。何かお礼をしたいという時に、手袋を贈るのと、香りを贈るのでは意味が違う感じ。香りは肌につけるものだから、近しい関係性をイメージしちゃうのかな。

SK フレグランスを贈る前に、キャンドル、ハンドソープ、ディフューザーなどを試してもらって、香りの好みを測るのがいいかもね。スリーのエッセンシャルセンツなら、精油だけで香りを構築しているから、どんな人でも取り入れやすいはず。

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エッセンシャルセンツ X01 9ml ¥5,390(1/24限定発売)/スリー

TI 限定発売の「スウイート シード オブ ラブ」は、カカオとローズをメインに、オレンジやペパーミント、ローレルなどの明るい爽やかさと、パチュリやサンダルウッドのしっとりした余韻があります。定番の香りに重ねるのも良さそう。

KIM 「スウイート シード オブ ラブ」っていうネーミングに相手への思いを込めて伝えるというのもいいかもね。

TI 想いを伝えるとしたら、ぴったりなのがドルセーだと思ってます。実在した才色兼備のマルチクリエイター、ドルセー伯爵のメゾンを現代に蘇らせたフレグランスブランドなんですが、彼は秘密の恋人のために香りを作り、ふたりでそれを生涯愛用していたという物語があるそうなんです。こちらは青山のブティック3周年記念で発売された「唯美な破壊 W.T.」。

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唯美な破壊 W.T. 90ml ¥37,400(限定発売)/ドルセージャパン

KIM 不思議な香りだね。雨とか水を感じるけれど、初々しい甘さもある。ボトルのデザインもおもしろい。

TI ミントとフランキンセンスの相反する香りで、スリリングな感じが演出されていて。日本人科学者とスコットランド人の恋人との関係を表現しているとのこと。

SK デザインが素敵なものは、贈り物として重要よね。最近だと、この薬瓶みたいな「レ ソメ モンクレール」のコレクションが好き。香りのクオリティも高くて、5種類それぞれ調香師が違って、でも全部ウッディ調なんですよね。

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上段左から:レ ソメ モンクレール ル ボワ グラッセ オードパルファム、同 レ ロッシェ ノワール オードパルファム、同 オート モンターニュ オードパルファム、同 ル ソルスティス オードパルファム、同 ラ コルデ オードパルファム 各100ml 各29,260/ブルーベル・ジャパン

KIM このモンクレールの香り、本当に素晴らしいと思う! 私は断然ウッディアンバーの「レ ロッシェ ノワール」派だけど、ウッディフローラルの「ル ソルスティス」もほのかにパウダリーで意外性があるし、ウッディムスキーな「オート モンターニュ」は知性を感じるし......5つどれもいいから揃えたいくらい。全部買っちゃおうかな。

TI "自分に贈りたい香り"になってきましたね(笑)。私はKIMさんと香りの好みが近いから「レ ロッシェ ノワール」はやっぱり好き。ウッディシトラスの「ラ コルデ」もいいな。サイプレスの爽快感が絶妙です。

松本 「レ ロッシェ ノワール」いいですね。これ好き〜! ウッディスパイシーな「ル ボワ グラッセ」も! 迷う。どれも素敵だね。

SK ひとつに決めようと思うと悩むよね。私も「ル ボワ グラッセ」が特に好き。つけていると、ちょっと変化してくるのよね。

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パートナーと一緒に、多様な香りを楽しんで。

SK つい自分の好きな香りで盛り上がってしまうけれど、さっきの話に戻って、贈るなら自分がいつもつけたいものというより、ちょっとドキッとする香りを選びたいよね。

TI 私も、好きだけど自分ではつけないな、という香りにします。隣から香ってくるくらいがちょうどいいっていうものもあるから。

SK いまはノーズショップみたいなお店があるから、一緒に行って試すのもいいよね。この人は何が好きなんだろう? 自分は何が好きなんだろう? ふたりで合わせるとどれがいいんだろう?って。

KIM それって、食べ物の好みと通じていたりするかもね。傾向がわかっておもしろそう。

TI まだ関係が深まっていなければ、相手を見極めるポイントのひとつになるのかも(笑)。

松本 個人的には、いくら人間的に素晴らしい相手でも、苦手な匂いを好きだと言われるとダメになっちゃうかも。そのくらい香りの好みは自分自身とのフィット感が大切だと言える。

KIM 香りってやっぱり本能的だから、流行とかは置いておいて、自分が好きなものにピンと反応していいよね。

SK ジェンダーレスな香りがトレンドだとしても、いろんな香りの良さに目を向けてほしいな。調香師が妻のために作った美しい香りもあれば、自分のために作った男っぽくて魅惑的な香りだってあるわけだから。そのうえで香りを選ぶのは自由であってほしい。

KIM 調香師が「こんな女性であってほしい」と自分の好きな花々で香りを作っていたら、そのストーリーそのものはロマンティックだよね。香りもだけど、いまの時代は誰もが等しく、というムードがありすぎて、女性性、男性性、それぞれの良い部分までもが押さえられているのでは?と感じる場面がある。それらも含めて、すべて受け入れてミックスできるのが真のジェンダーレスなんじゃないかなと。

松本 本当の多様性は、そこにありますね。

●問い合わせ先:
エルメスジャポン
tel: 03-3569-3300
www.hermes.com

スリー
0120-898-003(フリーダイヤル)
www.threecosmetics.com

ドルセー ジャパン
tel: 03-6804-6017
https://dorsay.jp

フエギア 1833
tel: 03-3402-1833
https://fueguia.jp

ブルーベル・ジャパン 香水・化粧品事業本部
0120-005-130(フリーダイヤル)
https://latelierdesparfums.jp/pages/moncler

 

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