ソフィア・コッポラのビューティ哲学と、コラボリップ誕生の秘話。
Beauty 2024.06.19
プレミアムスキンケアブランドの「アウグスティヌス バーダー」と映画監督ソフィア・コッポラのコラボレーションが発表された。フランスのマダムフィガロが彼女のビューティ哲学を特別取材。
ソフィア・コッポラがアウグスティヌス バーダーとコラボレーション。
アウグスティヌス バーダーは、アウグスティヌス・バーダー教授と実業家のシャルル・ロジエが共同で立ち上げたスキンケアブランドだ。昨年10月にデザイナーのハイダー・アッカーマンと限定品コラボをしたのに続き、今回は『ヴァージン・スーサイズ』や『プリシラ』で知られる映画界のビッグネーム、ソフィア・コッポラとタッグを組んだ。これは当然のこととも言える。なぜならソフィア・コッポラは自ら"アディクト"と称するほど、ブランドでカルト的人気を誇る「リッチクリーム」の熱烈なファンなのだ。こうして誕生したのが3色のティントリップバームだ。広告キャンペーンも監督が手がけた。そんなソフィア・コッポラをニューヨークに訪ね、今回のコラボレーションについて、そしてビューティ観について話を聞いた。監督はひとりの女性として、映画監督として、10代のふたりの娘を持つ母親として語ってくれた。
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ー アウグスティヌス バーダーとのコラボレーションが生まれたきっかけは?
そもそもティントバームが好きなんです。ある製品を愛用していたのですが、発売中止になってしまいました。ある程度ストックがあったものの、ついに入手できなくなって、そこでアウグスティヌス バーダーの透明リップバームを以前から気に入っていたこともあり、私の好きなティントで作ってもらえないかとバーダー教授に手紙を書きました。これは映画作りで学んだことですが、何か欲しいものがあったら正しい相手と直接交渉すべきです。自分が欲しいなら、ほかにもそういう人がいるはずだとも思っていました。
唇をふっくらとさせながら透明感のある仕上がりとなる3色。アウグスティヌス バーダー×ソフィア・コッポラ ティントリップバーム 各¥6,500/エスティーム
ー あなたにとってメイクとは、日々あなたの味方になってくれるもの? それとも変身するためのツール? 社会的にやむなくするもの?
むしろ楽しむものでしょうか。外の世界と向き合う前の準備段階として、儀式的な側面が気に入っています。若い頃は疲れが顔に出ないかもしれません! でも年齢を重ねるにつれて努力しなければならない部分も増えてくるはずです。少し色を足すだけで気分があがります。しかもいつもより「おしゃれしている」気になれるのです。とりわけパリではそうですね。メイクアップアーティストのサンドリーヌ・カノボックに華やかなアイメイクを施してもらうと、とてもうれしくなります。自分ではできないので。
ー プロから学んだコツはありますか?
メイクアップアーティストのディック・ページが、忙しい人のためにちょっとしたコツを教えてくれました。頬と鼻筋にほんのちょっぴり、リップの赤を伸ばすと顔がシャキッとします。
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ー ビューティにまつわる最初の思い出は?
10代の頃はシャネルの香り、「クリスタル」を愛用していました。とてもシックな香りでお気に入りでした。若い頃は香りとか、楽しいパッケージやカラフルなメイクに目が向きがちです。当時はいまほど選択肢が多くありませんでしたが、人生のあの時期にいろいろ試せたことは楽しい思い出です。特に1980年代はメイク黄金時代でした。
ー メイクで失敗した経験はありますか?
誰にでもあるのでは? いずれにせよ、当時インスタグラムがなくて良かったです。秘密にしておきたいことはありますからね!
ー 映画監督の娘として、独特の美意識が育まれたと思います。若い頃、あなたのアイコンは誰でしたか?
父の友人に女優のオーロール・クレマンやキャロル・ブーケ、アンジェリカ・ヒューストンがいました。彼女たちは私にとって憧れのマダムのような存在でした。特にオーロール・クレマンとキャロル・ブーケはまさにシックなパリジェンヌそのものでした!
ソフィアが手がけた、アウグスティヌス バーダー×ソフィア・コッポラ ティントリップバームのキャンペーンビジュアル。
ー SNSの影響力が強いいまの時代、ビューティに関して、母親としては18歳と14歳の娘ふたりにどのようなことを伝えたいですか?
難しいですね。娘たちはそれなりにいろいろ経験し、TikTokに多くの時間を費やしています。あんなふうに常時広告にさらされて消費欲をかきたてられるのはどうかなと思います。娘たちには、やりすぎるとロクな結果にならないと言いたいですね。シンプルがいちばんです。たくさんの製品を同時に試しすぎると肌が荒れてしまうかもしれません。でも娘たちがやりたくなる気持ちも理解できます。
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ー 監督の映画は作品ごとに異なる女性美が登場します。『プリシラ』では60年代風アイライナー、『ロスト・イン・トランスレーション』ではピンクヘア、『マリー・アントワネット』ではチーク。それは想像力から生まれるのでしょうか?
人物像にはディテールが大事だと思っています。私の映画の多くはアイデンティティをテーマにしています。アイデンティティとは自分をどう見せるかという点から始まります。服装はもちろん、ヘアスタイルやメイクも重要です。『プリシラ』を観て楽しめるのは、それが現実ではなく、私たちの日常生活とはかけ離れた世界の話だからでしょう。彼女の人生をたどり、この女性を象徴するシグニチャーとしてアイライナーを選びました。
ー くつろぎたい時は?
頭をクリアにしてリセットしたい時は散歩に出かけます。特にニューヨークでは。スポーツはあまり好きではないけれど、時間がある時はハタヨガもいいですね。マッサージやスパトリートメントの施術も大好きです。慌ただしい暮らしの中で、リラックスする時間を取るのはいいことだと思います。
ー 50歳の誕生日を迎えたグウィネス・パルトロウは、この年齢になって解放されたという趣旨の記事を書きましたが、あなたにとっての50代は?
楽しいです。時間の使い方を考えるようになる年代だと思います。若い頃は、あれもこれもやらなきゃって感じてしまうもの。人生のこの時点になり、毎日をどう過ごすのかを選ぶ余裕があり、優先順位をつけられるのはいいことです。それに年齢を重ねれば重ねるほど、どんな自分になりたいのか、自分が何をしたいのかがはっきりしてくる気がします。とりわけ、何が嫌かも。
ソフィア・コッポラのパリのアドレス
パリに住んでいたソフィア・コッポラが、お気に入りのアドレスを教えてくれた。
「オランジュリー美術館」で「モネの睡蓮を鑑賞し、美しいものに浸りきる」
Musée de l'Orangerie
Jardin des Tuileries 75001
「ガリエラ宮パリ市立モード美術館」
Palais Galliera
10, avenue Pierre 1er de Serbie 75016
デザイン、アート、写真専門の独立系書店「OFR」
OFR
20, rue Dupetit-Thouars 75003
「シャネル」本店
boutique Chanel
31, rue Cambon 75001
フラワーデコレーションの「ムリエ」
Moulié
8, Place du Palais Bourbon 75007
「シャルベ」本店は「シャツを買いたいときに」
boutique Charvet
28, Place Vendôme 75001
「ブックバインダーズ・デザイン」は「写真アルバムや名入りノートを買いたいときに」
Bookbinders Dessign
130, rue du Bac 75007
カクテルバーのクラヴァンで軽く一杯
Cravan
17, rue de la Fontaine 75016
「ブルガリ ホテル」のスパでアウグスティヌス バーダー×ブルガリ・シグネチャー・フェイシャルを受ける
Bulgari Hotel
30, avenue George V 75008
エスティーム
info@s-team-inc.jp
text: Justine Feutry (madame.lefigaro.fr)