うっとりするような眠気を促す。ホルモンコントロールで睡眠の質を上げる一日の過ごし方とは?
Beauty 2025.02.22
不眠の原因は、実はホルモンバランスの崩れであるということを、あなたはご存知だろうか? 鍵を握るホルモンは「コルチゾール」と「メラトニン」。適切な時間に適切なホルモンが分泌されることが不眠の対策になると、イギリスで活躍するバイオハックのパイオニア、ダヴィニア・テイラーは語る。
※本稿は、ダヴィニア・テイラー著『いつでも調子がいいカラダになる! ホルモンをととのえる本』(CCCメディアハウス刊)の一部を再編集したものです。
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良質な睡眠は朝に始まる
睡眠の悩みの解決に、光がいかに重要であるか、どれだけ強調してもしすぎることはありません。すべては光に帰着します。そのうえ簡単にハックできて、なんといっても無料です!
光を浴びたとき、目という小さな存在が、その光からの信号を絶え間なく受け止めてくれます。網膜はホルモン受容体へと続く入口でもあり、触れたものによってどのホルモンを分泌するかというメッセージを脳に送り出します。
つまり1日のどの時間帯に、目を特定の光波に触れさせたり逆に避けたりするかによって、脳内の化学物質をハックできるのです。この点に関しては現在、科学的な研究が数多くなされており、光を浴びることによる脳や内分泌系への影響が示されています。
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コルチゾールに朝の太陽
私たちのカラダは24時間に1度、起床から約30分後にコルチゾールを一気に放出します。その主な役割は、カラダが闘争・逃走モードにあるときに警戒を高めることと、適切な長さの睡眠を確保すべく、睡眠・覚醒のサイクルを維持することです。
コルチゾールはストレスとの関係が強いことから、悪者扱いされがちです。でも絶対に必要なもので、死ぬその日まで、カラダはコルチゾールをつくり続けます。朝起き上がれるのも、詰めたお弁当をきちんと子どもたちに渡せるのも、そして子どもたちが学校に遅刻しないよう車に乗るのを促せるのも、コルチゾールのおかげです。それはモチベーションを高めてくれる、すばらしいホルモンなのです。朝に自然と勢いよく湧いてくるコルチゾールがなければ、私はきっとヘトヘトになってしまうでしょう。
日光は、朝一番にコルチゾールの分泌を促します。コルチゾールは、その日を乗り切る元気とやる気を与えてくれるため、就寝時ではなく目覚めたときに必要です。
コルチゾールのバランスを取るためにまずできることは、朝、外へ出て自然光を浴びること。これは寝室の照明をすべてつけるのとは違います。自然光と照明には同じ効果があるわけではないからです。光の強度は、ルクスという単位で測定されます。光源による強度の違いは、信じられないほどです。
【光の強度比較】
●明るい晴れの日:10万ルクス。2〜3分でコルチゾール分泌。
●曇りの日:1万ルクス。コルチゾール分泌に30分ほど必要。
●明るい室内照明:1000ルクス。コルチゾール分泌までに数時間。
●薄暗い室内照明:100ルクス。想像がつきますよね......。
窓も障害物になります。たとえば飛行機に乗っている場合、屋外に数分間いるのと同じ効果を得るには、窓から外を6時間も眺め続けなければなりません。
ということで、自然光を活用してコルチゾールを適切なタイミングで分泌することが大切です。コーヒーを片手に朝イチで外へ出て、空を眺めましょう。
寒くて雨降りばかりの地域に住んでいる方でも、服装を工夫して外に出ることをおすすめします。私はドライローブ〔イギリスのサーフカルチャーから生まれたアウトドアブランド。ポンチョのようにして着られるコートが有名〕を持っていて、雨の日に外へ出るときは、パジャマの上からそれを着れば快適です。
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暗闇でメラトニンをコントロール
眠るには、「快適で安全で、すべて大丈夫だよ」と言ってくれるようなセロトニンを、カラダがメラトニンに変える必要があります。不安な考えで頭がいっぱいになっていたり、光を発するスマホをいじって夜更かししたりすると、メラトニンの仕事を邪魔してしまいます。
というのも、光のレベルはメラトニンに多大な影響を及ぼすからです。夜になって暗くなると、松果体がメラトニンの生成量を増やし、夜中にピークに達します。その後、早朝までには、昼間の標準的な低い量にまで下がります。だからこそ、適切な時間帯に適切な光を浴びることが、メラトニン量の調節に役立つのです。
日差しが強いときはサングラスをかけたくなるかもしれませんが、朝はかけないことをおすすめします。サングラスをかけると、必要でないときにメラトニンが分泌されてしまいます。暗くなってきたから就寝時間だと、目が勘違いしてしまうのです。
代わりに、セロトニン→メラトニンのパターンは夜に促しましょう。これは、自然光が陰るときに始まります。照明の明るさは、季節に合わせて調節すべきです。つまり、冬は早めに、夏は遅めに照明を落とします。可能であれば、眩しい天井の照明は消して、夕方の自然な日差しのような、温かくてソフトな光のランプを使い、室内を薄暗くしましょう。
より暗い雰囲気を演出するなら、キャンドルもおすすめです。ただし、ホルモンを混乱させかねない香料プンプン、石油たっぷりのものではありません。無香で自然な、大豆でできたソイキャンドルか蜜蝋のキャンドルを使い、香りが欲しいときはオーガニックのエッセンシャルオイルを使いましょう。
ということで、日の傾きに合わせて照明の光度を下げていきます。サングラスは夕方からかけましょう。変な気分かもしれませんが、今までのサイクルをリセットするために1週間くらい続けてください。
夜間、寝室は可能な限り暗くします。遮光ブラインド(カーテン)がおすすめ。信じられないことに、たとえ目を閉じていても、肌に光が当たっただけでコルチゾールが活性化される可能性があります。そのため、薄いカーテンやブラインドのみの遮光ではなく、完全に真っ暗にしなければいけません。
どんな光であれ、夜に浴びればメラトニンの量に影響します。そのため、部屋にテレビがある場合、待機状態を示す赤いランプの上にシールか絶縁用テープを貼りましょう(もっといいのは主電源をオフにすることです)。夜間にトイレに行くときでさえ、灯りはつけずに行ってみてください。あのうっとりとするような眠気を催すメラトニンをカラダが適切な時間につくるために必要なことは、すべて試してみてほしいのです。
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『いつでも調子がいいカラダになる! ホルモンをととのえる本』
(CCCメディアハウス)
ダヴィニア・テイラー 著