「臓活」で、ストレスに負けない身体づくり。
Beauty 2020.04.13
私たちは、ストレスと常に隣り合わせ。病気とまではいかないけれど、身体や心に不調を覚えることはありませんか……? そんな心身と向き合い、不調を改善する方法を、中医学の専門家である尹生花先生に「五臓」の視点から伺いました。
尹生花 Yin Seika
北京中医薬大学博士課程修了。医学博士。美容健康サロン「BHY」代表。中医学の深い知識に基づき、いち早く「身体の内側(五臓)と肌の相関関係」に注目して鍼灸や漢方アロマを融合した独自の施術や、生活習慣のアドバイスを実践。身体を根本から立て直すメソッドが、多くの女性に支持され、最近ではその普及にも力を入れている。近著に『みんなの臓活』(ワニブックス刊)
www.bhy.co.jp
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「肌の調子がすぐれない」「肩や腰が何となくだるい」など、身体のちょっとした変化や不調を感じた時、ダイレクトな対処にばかり関心を向けてしまうけれど……。
「肌や体調にトラブルがあると、私たちはその部位ばかり注目しがちです。しかし、その不調の根本をたどると、『肝』『心』『脾』『肺』『腎』という、体内にある『五臓』が関係しています」(尹先生)
©fun house/amanaimages
中医学における「五臓」は、西洋医学でいう一般的な「臓器」とは概念が異なる。たとえば「腎」は西洋医学の「腎臓」の働きに加え、中医学では発育や生殖などにも関係すると考えられている。「『腎』は広い意味で、生命の源となるエネルギーを蓄える場所。同時に、驚きや恐れなどの感情にも関係します」と、尹先生。「腎」が弱ると、生理のリズムが乱れたり、些細なことにビクビクしやすくなるという。
このように、五臓は全身のパーツ、そして感情とも深い関わりを持つ存在。「『五行説』に基づいて、五臓はお互いに連携し『気』『血』『水』というエネルギーを体内に巡らせて、健康や生命活動を支えています。表面に現れた不調は、五臓が弱っているサイン。そのサインに気付き、養生してあげることが大切です」(尹先生)
五臓の考え方やそれぞれの働きについて、詳しく見ていきましょう。
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五行と五臓の相関図
五行説とは、世の中にあるすべての物は「木」「火」「土」「金」「水」という、自然界を代表する要素から成り立つという東洋の思想。たとえば「水」は「木」の成長を助けるいっぽうで、「火」を鎮静する働きを持つ。五臓もそれぞれ五行に対応し、お互いが支え合って、健やかな身体を維持している。
気・血・水とは?
中医学において、身体を健やかに保つ3つの重要な要素。五臓はそれぞれ「気」「血」「水」を体内で育み、体中に巡らせる働きを担う。
気
生命活動に必要なエネルギーの総称。目には見えないけれど身体の中を巡り、「血」の循環をリードする働きも。
血
西洋医学における「血液」の意味に加え、全身に栄養や酸素、潤いを届け、精神を支える働きを持つ。
水
「血」以外の水分を指す。全身に潤いを与え、五臓の働きや排泄をサポート。体温をコントロールする働きも。
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五臓の代表的な役割とは?
「五臓」にはそれぞれ、どのような働きがあるのでしょう? 中医学における五臓の働きと、機能低下によって発生する代表的なトラブルを紹介。思い当たるフシがある人は、該当の五臓が弱っているサインかも!?
主な働き
・「気」や「血」を全身に行き渡らせる。
・「血」をいったん貯蔵して、全身に送り届ける。
肝が司る身体の部位と心の状態
筋肉、目、怒りの感情
働きが低下すると……?
・ドライアイや眼精疲労に陥りやすい。
・寝ている時などに足がつりやすくなる。
・シミや肝斑が目立ちやすくなる。
・イライラして、怒りっぽくなる。
・首や肩、背中が凝りやすい。
主な働き
・五臓を統括するリーダー的な存在。
・血脈を司り、全身に「血」をスムーズに巡らせる。
心が司る身体の部位と心の状態
血脈、舌、喜び・楽しい感情
働きが低下すると……?
・汗をかかない、もしくはかきすぎる。
・物忘れがひどくなる。
・肌の血色やツヤが低下する。
・常に倦怠感があり、疲れが取れない。
・手足が冷えやすくなる。
主な働き
・胃と一体になって食物から栄養を吸収し、「気」「血」「水」に変換する。
・「気」「血」「水」をいったん肺に持ち上げてから、全身に巡らせる。
脾が司る身体の部位と心の状態
脂肪、唇・口、思考
働きが低下すると……?
・食欲がわかない、もしくは食べても満たされない。
・顔やお腹周りがたるんでくる。
・やる気が出ず、いつも元気がない。
・クヨクヨ考え込みやすくなる。
・胃痛や下痢など消化器系のトラブルが発生しやすい。
主な働き
・呼吸を通じて体内に新鮮な「気」を取り入れ、古くなった濁気を吐き出す。
・体内に「水」を巡らせ、余分な水分を汗にして排出する。
肺が司る身体の部位と心の状態
皮膚・産毛、鼻、悲しみ・憂いの感情
働きが低下すると……?
・背中や二の腕など、上半身がブヨブヨする。
・肌が乾燥して、スキンケアしてもかさつく。
・汗をあまりかかず、身体の末端が冷えやすい。
・風邪を引きやすく、咳が出る。
・落ち込んだり、気分がふさぎがちになる。
主な働き
・生命の源となるエネルギーを貯蔵し、成長や生殖に関与する。
・全身の水分代謝に関係し、身体の中を温める。
腎が司る身体の部位と心の状態
骨髄、耳、驚き・恐れの感情
働きが低下すると……?
・足が冷えやすく、下半身がむくみがち。
・腰がだるく、腰痛に悩まされる。
・月経のリズムが乱れやすい。
・肌が黒っぽくくすみがち。
・些細なことにもビクビクし、臆病になる。
五臓はお互いが連携して、健やかな身体を維持しています。もし肌や身体、そして心理的に不調を感じたら、五臓の機能が低下している可能性が……? 次回からは、忙しい現代人が陥りがちな具体的なトラブルの例を、五臓の視点から尹先生が解説。毎日実践できる養生法もあわせて紹介します。
illustrations:NAGISA HAMADA, texte:NAMIKO UNO