運命を切り拓く香り、シャネル N°5が100年愛される理由とは?

特集

1921年、ガブリエル・シャネルは、「女性そのものを感じさせる、女性のための香り」をクリエイトした。それは、誰も知らなかった革命的で神秘的な香り。名前はシャネル N°5、フラコンは極めてシンプルなガラス瓶ボトル。装飾を退け、抽象的で本質的な美を求めたガブリエル・シャネルの香りは、香水の世界に新しい価値観をもたらし、リュクスの定義さえ変えてしまった。

それから100年。いまも香水の代名詞として別格の存在であり続けるN°5の魅力の本質とは? シャネル フレグランス&ビューティ 社長のアン・キルビーと、グローバル・クリエイティブ リソース ディレクターのトマ・デュ=プレ=ドゥ=サンモーに話を聞いた。

210114_01.jpg©CHANEL

――「N°5」といえば、数字だけで、誰もがシャネルの香水を思い浮かべます。この香りはシャネルというメゾンにとって、どのような存在なのでしょうか?

アン・キルビー(以下、アン) N°5はシャネルのさまざまな価値観や特性を体現しています。なかでも、重要な2点を挙げるなら、第一に、まずクリエイションの精神です。それは、クリエイターが自由に、あらゆる規制を乗り越えて力を発揮し、信念のままに表現できること。N°5はひとつの思想です。ガブリエル・シャネルという女性の思考から生まれた、抽象的なフローラル ブーケであり、しっかりとした個性と存在感をもった、革命的な美意識を表現したフレグランス。自分の生きる環境を変えようとし、既存のプロダクトとまったく違うものを完成させようと望み、クリエイターとしての自由を表現しようとした、ひとりの女性の思想を形にしたものなのです。N°5は、このクリエイションのエスプリを体現しています。

第2は、リュクスと卓越性のエスプリです。N°5は、大地、花の栽培、抽出、ガラス工芸などの類い稀なサヴォアフェールの結晶。リュクスと卓越性のためにサヴォアフェールを守るという、シャネル特有の姿勢を象徴しています。

トマ・デュ=プレ=ドゥ=サンモー(以下、トマ) N°5はメゾンの背骨であり、思想であり、ビジョンであり、美の文法です。我々に刺激を与え、チャレンジ精神を与えてくれるものです。

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1921年、誕生当時のシャネル N°5のボトル。©CHANEL

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――誕生してから今年で100年を迎えますが、シャネル N°5がこれほど長く愛されてきた理由はどこにあるのでしょうか?

アン N°5は、ガブリエル・シャネルという女性の化身。19世紀に生まれ、孤児から伝説となった女性の物語を語ります。それは未来を誘惑し、運命を自分で切り拓く物語。この香りに出合う時、人は自由と生命力に満ちた未来への想いを直感的に感じるはず。それがN°5の魔法であり神秘なのです。

トマ N°5の物語には、すべての女性が身に着けるために生まれた普遍性と同時に、ひとりひとりの女性に訴えかける特異性があります。それがN°5の奇跡的なところ。また、N°5は絶え間なく進化しています。それは、「シャネル N°5 ロー」や「シャネル N°5 オー プルミエール」のように香水そのものの新解釈の場合もありますし、ボトルデザイン、ラベルやロゴの変化やキャンペーンかもしれません。決して自己否定することなく、時代を受け入れる。それは、N°5の女性像であり、シャネルの描く女性像でもあります。

アン メゾン固有の確かなサヴォアフェールがあるからこそ、N°5は誕生以来、常に進化し、繊細な変化を遂げながら、不変の力を持ち続けてきました。クリエイションとサヴォワフェールの両輪によって、N°5は未来を見つめながら発展していくのです。

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1937年、オテル・リッツ・パリのスイートで佇むガブリエル・シャネル。「ハーパーズ・バザー」に掲載されたこの写真は、初めて自らがN°5の広告に登場するものとなった。photo:François Kollar © Ministère de la Culture - Médiathèque du Patrimoine, Dist. RMN

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ガブリエル・シャネルとも親交が深かった風刺画家のセムによる1921年の作品。

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――シャネル N°5の100周年にあたる今年、発信したいメッセージはどんなものでしょうか?

アン 1年をとおして語りたいのは、N°5の現代性です。N°5をめぐるサプライズ、喜び、分かち合いを提案していきます。香水を身に纏うことは個人的な喜び。N°5は何よりも、喜びと満足を語るプロダクトです。

トマ メモリアルやセレブレーションは避けることにしました。大事なのは、これまでの100年ではなく、いまの姿です。常にモダンであり、常に生まれ変わる力を持つN°5。自分を革新し続けるN°5が発信する喜びを伝えていきたい。ガブリエル・シャネルの有名な言葉があります。「私は、来たるべきものの側にいたい」。N°5はそれを体現しています。いま起こりつつあることに向かっていくために必要な、自分自身と未来への信頼です。

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100周年を迎えたシャネル N°5のアンバサダーに就任したマリオン・コティヤール。キャンペーンフィルムでは月面で踊る姿が話題となった。©CHANEL

――いま、日本ではコロナ禍でお家時間が長くなって、フレグランスが注目を集めています。この時代にN°5を身に着ける意味はどんなものでしょうか。

アン 物語の存在があまりに大きいので忘れられがちですが、N°5は香水として素晴らしい作品です。そこにはまず喜びと快楽があります。そして、N°5は未来と信頼の香りです。運命を切り開いていくための自分への信頼、明日を信じる力です。いまの状況下で、これまで以上に必要とされているのは、羨望と喜びを持って未来を見ること。N°5はそれをもたらしてくれます。なぜならN°5には生命力があり、それが直感的に、真摯に伝わってくるからです。

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――日本の私たちにとって、フランス人と香水の関係は興味深いものがあります。おふたりの個人的なN°5についてのエピソードをお聞かせください。

トマ 私は定期的にN°5を買わずにはいられません。家族が着けていた思い出があるわけでもなく、自分が身に纏うためでもなく、持っている必要があるから買うのです。人はなぜか、N°5との物語を欲しがります。持っている、身に着けた、ということに意味を見いだすお守り的な側面があると思います。これはとても特殊で、ほかの香水には決してないことだと思います。

アン 母が、勇気と力を必要としていた時にN°5を着けていました。ですから、私にとって、N°5は人生にとって重大な瞬間、フェミニニティを確認したい瞬間に結びついています。身を守る鎧であると同時に魅力となる香り。とりわけ力強く、忘れがたい香りの余韻に思い出があります。身に着けている人が目の前にいなくなっても、その人と繋がる香りの記憶。ゆえにN°5は存在の名残なのです。

210114_06.jpg©CHANEL

interview et texte:MASAE TAKATA

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