肉食をやめたらどうなる? 身体へのメリットとデメリット。

Beauty 2021.07.08

桐村里紗

最近、健康面でも、環境面でも、負荷をかけるとされる肉食。
この連載では、人と地球を一体と考えてその全体の健康を目指す「プラネタリー・ヘルス」を紹介してきましたが、その食事法の中でも、肉食、といっても野生肉ではなく、家畜の肉食べることは、なるべく控えたい食事として位置付けています。

210706-beauty-04.jpg

photo:iStock

私自身は、完全なる菜食主義「ヴィーガン」というわけではありません。
狭い畜舎で不健康なエサと薬を投与されて育てられた一般的な家畜の肉は食べませんが、牧草を食べて育ったグラスフェッドのラムや牛、平飼いの鶏、卵など、健康的に育った家畜の肉や、鹿や猪など野生肉が手に入った場合には、少々食べています。
それに、友人との外食やイベントなどの時も、ありがたく楽しみながら食べるスタイルです。
おおむねは、プラントベースの食事をしながら、フレックスに動物性食品も食べるスタイル「フレキシタリアン」といったところですが、これが実践しやすく、心の負荷も少ないので導入としておすすめしています。

さて、肉食をやめることについて。
これには、栄養面での賛否があります。
「肉食でしかとれないビタミンB12などの栄養素が不足する!」「プラントベースの食事だけだと不健康だ」と言う反対派。
「肉食をやめても、ちゃんと選べば栄養素は不足しない!」「むしろ肉食は不健康だ」と言う賛成派。

私の意見としては、「モノ」と「人」によるというところです。

210706-beauty-03.jpg

photo:iStock

---fadeinpager---

まず、「モノ」の問題。

肉は優良なタンパク質補給源である一方で、いま、私たちが食べている肉が本当に健康的なのかという問題です。
ソーセージやハムなどの加工肉や、赤身肉には発がんリスクがあることがWHOにより指摘されています。

工業化された畜産によって加工された肉や生産された赤身肉は、抗生剤、ホルモン剤など薬剤の投与、カビ毒や農薬、除草剤の残留のある穀物飼料、加工の過程で加えられる劣化した植物油や添加物などが添加されていることを考慮しなければなりません。

これらは、健康的な牧草で育った家畜やもっとワイルドに育った野生動物とは、全く異なる肉といえます。
「狩猟採取の頃から私たちは肉食をしていたんだ!」という意見がありますが、その時代の肉と現代の肉は、一緒とは言えないですよね。
それに、工業型で育てられた家畜は、環境への負担が大きく、気候変動や生物多様性の減少などの環境問題の原因にもなりますし、ひどい育てられ方をする場合は「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の観点からも問題になります。

ヴィーガンの人たちの中には「動物を殺すことがかわいそうだから」という理由で肉食を避ける人たちもいます。
ただ、食というのは、ほかの動植物の「死」によって自分の「生」を養っているというのが、食物連鎖であり、生態系が作るネットワーク、生命の網です。
肉食動物と草食動物のハイブリッドで、雑食であるのが人類です。
でも、食べるときには、「お命頂戴致します」という感謝の気持ちで「いただきます」を言う。
これを忘れないでおきたいものですね。

210706-beauty-01.jpg

photo:iStock

フレキシタリアンである私は、毎日ではないですが、肉や卵も食べます。
最近、近所にウルグアイでのびのび育ったグラスフェッドビーフを扱うグロッサリーができました。和牛と比べても圧倒的にお安く、かつ赤身の味がしっかりしておいしいので、夫も文句を言いません。
野生の鹿肉は、ネット購入ができます。ミンチを使えば、硬さも気になりません。
鶏肉は元気に育った平飼いのもの、卵は、なるべく有精卵を買っています。

高級なプログラム化粧品にお金をかける前に、質のよい食べ物にお金を使って、まず細胞の質を内側から高めること。
順番的にはこちらを優先にする方が、よほど経済的でもあるというのが私の意見です。

次回は、肉食をやめても健康的な人と、そうでない人の差についてお話したいと思います。

text:Risa Kirimura

桐村里紗

医師 / tenrai株式会社 CEO
臨床現場において、最新の分子栄養療法や腸内フローラなどを基にした予防医療、生活習慣病から終末期医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。食や農業、環境問題への洞察を基にした人と地球全体の健康を実現する「プラネタリーヘルス」や女性特有の悩みを解決する「フェムケア」など、ヘルスケアを通した社会課題解決を目指し、さまざまなメディアで発信、プロダクト監修などを行なっている。また、東京大学工学系研究科道徳感情数理工学・光吉俊特任准教授による社会課題を解決する数式「四則和算」の社会実装により人と社会のOSをアップデートすることを掲げたUZWAを運営。現在は、東京と鳥取県米子市の2拠点生活を送り、土と向き合う生活を送っている。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演するなどメディアでも活躍し、新著『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)が話題。
https://tenrai.co/

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

フィガロワインクラブ
Business with Attitude
キーワード別、2024年春夏ストリートスナップまとめ。
連載-パリジェンヌファイル

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories