お仕事モードのカフェ巡り。#9
すこし前に、マイヨール美術館のFoujita展を訪れた
ときに、向かいによさそうなカフェができているのを
見つけた。
メニューを見ると、ハムチーズクロワッサン、という
のがあって、もしかしてこれはサンフランシスコの
タルティーヌ・ベーカリーのようにハムを巻き込んだ
クロワッサン?!と興味津々になった。
それで朝ごはんの時間に行ってみたかったのだ。
検索してみたら、そのカフェCuillierはパリ市内に
4軒もあった(私が行ったのは7区のお店です)。
店内に入りショーケースを覗くと、目当てのクロワッ
サンは、ハムとチーズを挟んだサンドイッチだった。
それなら別にいいや、とちょっとがっかりして、パン・
オ・ショコラとドリップコーヒーをとることにする。
店内にはすでに打ち合わせ真っ最中のグループもいて
仕事がしやすそうだ。
相変わらずFoujita展は人気のようで、10時30分の
開館を前に長蛇の列ができていた。
こういうカフェに来て不思議だなぁといつも思うのは、
家で仕事をしているとちょっとした雑音、たとえば外
の工事の音なんかがものすごく気になるのに、カフェ
だと、店内ではほかのひとたちの話し声がざわざわして
いて、エスプレッソマシーンや食器を洗う音、音楽も
かかって、外からは工事の騒音も聞こえてくるのに、
それらがまったく嫌じゃない。そこに流れている空気に、
自分を委ねていられるような感じがして、むしろその
ざわざわが心地よい。
この日はパリらしい光景を目にした。
満席の店内に、ひとりのムッシュが「お邪魔してすみ
ません」と入ってきた。職がなくて、できれば何か食
べ物を……と乞うおなじみのセリフを言っていたように
思う。私は、パソコンに向かっていて、ちゃんとは聞
いていなかった。ふと、斜め前に座る打ち合わせ中の
女性が、床に置いた自分のスポーツバッグの中から、
シード類のちりばめられたクラッカーの袋を取り出す
のが、目に入った。
彼女の視線の先を見ると、件のムッシュに話しかける
別の男性がいた。彼は「何がいい?」と聞いてポケッ
トからお財布を出すところだった。聞かれたムッシュ
は、「このサンドイッチ」とリクエストしている。
そこへ女性が、「ムッシュ、よかったら、これ」と
クラッカーを差し出した。ムッシュは、お礼を言って
それを受け取り、サンドイッチも買ってもらって、
店内全体にお礼を言って出て行った。
こんな場面に遭遇すると、
家が大好きで、仕事が立て込んでいるときは特に家に
閉じこもりがちになるけれど、外に出て仕事をするの
もよいよなぁと思う。
お昼休みの時間帯になったら、サンドイッチを買い
にくる人で混み合いそうだな、と思い移動する。
サンジェルマン大通りをてくてく歩いて、カフェ・
ド・フロールへ。いつも、迷わず2階へ上がる。
ここの午前中の空気が好きなのです。カフェオレが、
ミルクとカフェで別々に出されるのもうれしい。
自分で注ぐ、っていう作業がひとつ生まれるだけで、
どうしてこんなにも感じ方が変わるのだろうなぁ。
お天気がよくて、途中から窓も開け放たれ、気持ち
よかった。
原稿を切りのよいところまで進めたら、もう14時を
とうに回っていた。朝から「お昼はサラダにしよう!」
と決めていて、オ・シェ・ド・ラベイへ向かう。
このブログでもすでに2回、キャベツのファルシを
紹介しているけれど、ここはサラダの種類も多いのだ。
なかでも、鴨のコンフィの砂肝が具のサラダがこの日の
気分だった。ドレッシングの量が控えめのサラダを
むしゃむしゃと食べながら、カウンター横にある
デザートの入ったケースをチラチラみて、何にしよう
かなぁと考える。
外は、キラキラしているほど晴れていて、
フレッシュなフルーツが乗ったものがいいな、と
フランボワーズのタルトに決めた。
ここの手作り感溢れるタルト・タタンが好きで毎回
タタンにしてしまうから、フルーツのタルトは初めて。
一口食べて、思わず、むふふと笑ってしまった。
フランボワーズの下に絞ってあるのは、クレーム・
パティシエールでもアーモンドクリームでもなく、
生クリームだけ。生クリーム(おいしい生クリーム!)
が大好きなのだ。でも、生クリームだけが詰められた
タルトなんて初めて食べた。
生クリーム好きにはオススメです。
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