パリ街歩き、おいしい寄り道。

クラヴァンと、16区のギマール建築巡り。

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パリで暮らし始めた99年の1月からずっと(途中2年ほど別のところに越していたけれど)同じエリアに住んでいる。
静かで、ほとんど動きのない住宅街なのだが、この夏、これから通いたいと思うカフェができた。
クラヴァン(Cravan 17, rue la Fontaine 75016 Paris)だ。
ギマール建築の地上階にあるこの場所には、Café Antoineというお店が長いことあった。室内装飾が美しく、タイルから鏡、天井にいたるまで歴史的建造物として登録されている。
店名は変わらないままにオーナーは何度か代替わりをし、少し前から閉まったまま数カ月が経っていて、この場所が大好きだった私は、とても残念に思っていたのだ。
ところが7月のある日、通りかかると、Café Antoineの庇は取り除かれ、テラス席が店の前に出ていた。
お店の中を覗くと、11区の有名レストラン、シャトーブリアンの共同経営者だった男性の姿がある。
あれ?と驚いて、中に入り聞いてみると、6月の終わりにカフェ&カクテル・バーとしてオープンしたらしい。週7日、朝8時から23時まで開いているという。
その日は時間がなかったので、「じゃあ明日また来る」と告げ、翌日カフェ・クレームを飲みに行った。
平日の午前中、明らかに近所に住んでいる雰囲気のムッシュや、近くで働いているかと思われる女性たち、それにオープンを聞いて遠くから足を運んだ人たちが、それぞれの時間をくつろいで過ごしていた。
数日後、バカンスもいまがピークという、あたりが閑散とした日に今度はランチを食べに行くと、若くておしゃれなパリジェンヌと、もう何十年も近くに住んでいそうなかなりお年を召した、赤いヘアバンドをしたマダムとが隣合わせになり、会話をしていた。
その様子を横目に見つつ、遅めのランチタイムに食べたクロック・マダムには、パセリとチャービルとシブレットをオリーブオイルで和え、塩コショウで味付けをしただけと思われるサラダが添えられ、その鮮度のよさとシンプルなおいしさに、あぁこれは通うなぁと思った。
まだ実はカフェを頼んだことがなく、毎回カフェ・クレームを飲んでいるのだが、とても好みで、これがまた通いたくなる味なのだ。


家の近所でこんなふうに息抜きができるなんて、とすっかりうれしくなって、久しぶりにカメラを持ってお散歩をすることにした。
このあたりにはギマール建築が点在している。
クラヴァンからスタートして、今日はギマール建築を巡る散歩道にご案内したいと思います。

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まずは有名なカステル・ベランジェ(Castel Béranger 14, rue La Fontaine)。1897-98とサインがある。敷地内には入れないけれど、横からの眺めもぜひ。

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Cravanの入っている建物はrue Grosとrue La Fontaineの角。ここには1911とサインがある。

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Cravanを左手に見つつ、rue La Fontaineを進行方向に進むと、左側にある小道rue Agarにギマール特有の字体で通り名が記されている。

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さらに少し進むと、また左側にrue Francois Milletという短い道があり、この11番地もギマール建築(1910年)。普通に住居として使われていて、この日もピアノの音が聞こえてきた。扉の右横にある窓の右上にサインがあるのが見えますか?

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rue la Fontaineの60番地にあるのはHôtel Mezzara。ギマールの数字とか文字のフォントがなんとも好きだなぁ。

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そのままrue la Fontaineを進むと、ジョルジュ・サンド通りと交差する。それを右折。通りの中程にはvilla George Sandがある。ギマール建築ではないけれど、名前だけでなんともロマンティックな気分になる、と通るたびに思う場所。

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rue George Sandをのぼり、Av.Mozartを渡ると、その先はrue Henri-Heineと名前を変える。この18番地にもギマール建築がある。建物の外壁にそれとわかるサインはないものの、番地の字体がギマール。私の持っているパリ建築の本によれば、1925-26年の建物らしい。

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Av.Mozartに戻りくだって行くと、右側にギマールの住居だったHôtel Guimardがあるのだが、なんと修復工事中だった。建物に沿う道の標識は、やはりギマール。

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Av.Mozartを下り、rue Pierre Guérinからrue Boileauまでまっすぐ進む。rue Boileauの34番地には、ロッツェ邸という1891年に建てられた一軒家があるのだが、木々に覆われていてほとんど見ることができない。が、そこからすぐの場所(41, rue Chardon Lagache) に、とてもとても可愛らしい一軒家がある。1893年と初期のもの。この家を眺めるたびに、なんだか夢があるよなぁと思う。

すでに枯れ葉が落ち、秋めいた並木道のお散歩は気持ちがよいことこの上なかった。

* 郵便番号は省略しましたが、すべて75016です。
* フォンテーヌ通りrue la Fontaine はrue Jean de la Fontaineが正しい名称ですが、rue la Fontaineとだけ記されることが多いです。

川村明子

文筆家
1998年3月渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリにて料理・製菓コースを修了。
朝の光とマルシェ、日々の街歩きに日曜のジョギングetc、日常生活の一場面を切り取り、食と暮らしをテーマに執筆活動を行う。近著は『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス刊)。


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