パリ街歩き、おいしい寄り道。

ブッフ・ブルギニヨンと、ピカソ美術館。

IMG_8113-akikokawamura-181031.jpg

最高気温が6度という、一気に冬の天気になった週末。
衣替えをする時間が取れず、まだ半袖のTシャツが引き出しの手前に入っている状況で奥からセーターを引っ張り出し、週明けには送らないといけない本の原稿(12月刊行予定)に向かいながら、“送ったらブッフ・ブルギニヨンを食べに行こう”と決めていた。
目指すは地元紙「Figaro」の水曜版に付くカルチャー情報冊子で、パリのベスト1に選ばれたカフェ・デ・ミュゼのブッフ・ブルギニヨン。
メトロ8番線のChemin Vert駅から徒歩3〜4分、ピカソ美術館へ抜ける通りの角に店はある。
入ると目の前にオープンキッチンがあり、その斜向かいの席に通された。
活気ある厨房の端で、料理が次々と盛り付けられている。
湯気が立つ皿たちをサービス係が運んでいく、その動線の始めに私は座っていて、止まっていた皿がいきなり動き出したことでぶわっと流れてくる匂いに、ランチメニューの料理もおいしそうだなぁと気持ちが動いた。
けれど、初志貫徹。
前菜は取らずに、メインから始めることにした。
黒いストウブのお鍋に入ってやってきたそれは、ツヤツヤしていた。
できることなら、食べてから写真を撮りたいくらいだよ、とはやる気持ちを抑えてまずは写真を撮り、やっとありつけた思いでフォークを手にとる。
おいしいとか味がどうこうと感じる前に、自分の身体が飢えていたことを実感した。
私は家にいるときに、めったに赤いお肉を食べない。だから、ずっと家に閉じこもって仕事をしていたあとに外食に出かけ、仔羊や鴨、牛肉を食べると、いきなり身体中の血が巡り始める気がする。
家にいる間も、屑野菜で出汁をとり、スープやさらっとした煮込み料理など温かいものは食べていたのだけれど、やはり全然違った。
この店のブルギニヨンは、濃厚というより濃縮と言いたくなるよく煮込まれたソースで、時間のかけられた味だった。お肉はとろっというより、柔らかいけどきりっとしていて、タイトルをつけるなら“男たちの冬”かなぁなんて頭に浮かんだ。
久しぶりに、赤ワインに一晩漬け込んでから煮込む、牛テールのカレーを作りたくなった。

胃も少し小さくなっていたのか(体重は減ってないけど)メインだけでお腹がいっぱいになり、デザートは食べずにピカソ美術館へ向かう。
いつもよりもずっと混んでいて、子ども連れがたくさんいた。そうだいまは秋休み中だ、と思い出した。
開催中の『ピカソ。傑作!』と題された企画展は、展示されている作品数の多さにびっくり。
制作段階の素描、制作当時の個展のポスターや、近しい支援者とやりとりした手紙など、作品以外の部分で見どころ満載だ。
リトグラフの展示室は圧巻だったなぁ。
たぶん、会場にはいろんな作品のエネルギーが充満していて、力強さのあったブッフ・ブルギニヨンのあとということもあり、疲れのある身体では存分に楽しみきれなかった。
元気なときに行ったほうがいい。
帰り、くたくたになってブーツカフェに寄り、酸っぱさがびしっと効いたホットレモネードでビタミン補充。回復してから家に帰った。

IMG_8119-akikokawamura-181031.jpg

IMG_8123-akikokawamura-181031.jpg

IMG_8124-akikokawamura-181031.jpg

IMG_8127-akikokawamura-181031.jpg

IMG_8130-akikokawamura-181031.jpg

IMG_8131-akikokawamura-181031.jpg

川村明子

文筆家
1998年3月渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリにて料理・製菓コースを修了。
朝の光とマルシェ、日々の街歩きに日曜のジョギングetc、日常生活の一場面を切り取り、食と暮らしをテーマに執筆活動を行う。近著は『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス刊)。


Instagram: @mlleakikonotepodcast「今日のおいしい」 、Twitter:@kawamurakikoも随時更新中。
YouTubeチャンネルを開設しました。

ARCHIVE

MONTHLY

清川あさみ、ベルナルドのクラフトマンシップに触れて。
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
2024年春夏バッグ&シューズ
連載-鎌倉ウィークエンダー

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories