パリ街歩き、おいしい寄り道。

ストラスブールへ1日旅。

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あるプロジェクトのために古物市巡りを計画中。
クリスマス前のこの時期は、食器が普段よりも多く出る。
いろいろと調べていて、11月の週末に開催されることがわかったストラスブールの市に行くことにした。
10時開場だったので、その前に毎週出るらしい蚤の市も覗くことにする。
朝7時20分のTGVに乗り、9時過ぎにストラスブールに着いたら0度。
空気が張り詰めたような寒さの中、トラムに乗って、蚤の市へ向かった。
行ってみると、その場所には野菜やチーズを売るマルシェが出ていて、脇の広場に4人ほどが蚤の市っぽいスタンドを広げている。
マルシェの出店数は多くないが、どのスタンドも生産者だ。
アルザスらしくプレッツェルにクグロフも売っている。
農家産のバターがあるのを見つけて買うことにした。
食べたことのないチーズがあったので味見させてもらうとこれがすごくおいしい!
キャレ・デ・ヴォージュというそのチーズをひと切れと、マンステールも半分もらうことにした。
3種類だけ蜂蜜を売っているムッシュがいて、ひとつがもみの木の蜂蜜だったので、喉と咳対策にそれも買う。
食器を買いにきたのに、いきなり食料を、それも重いものを買ってしまった……

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蚤の市は、ひと通りみたけれどそそられるものはなくて、メインの古物市にかけることにした。
バッグのチャックで手を切ってしまうんじゃないか思うほどに凍えていて、次の場所に行きたいはやる気持ちを抑え、近くのカフェに入る。
なんとなくいつもと気分を変えたくて、ブリオッシュを頼み、あとカフェ・クレームを、と伝えたら、クレーム……と一瞬きょとんとされて、「横に添えますね」と言われた。
出てきたら、カフェはカフェとしてカップに入っていて、横にミルクではなく、本当に生クリームが添えてあった。
ストラスブールではこれがスタンダードなのかしら?
ブリオッシュは脂っこくなくスカスカでもなく、しっとりしてほっとする味でとてもおいしかった。
カウンターで食べていた私の隣に、小さな男の子とお父さんのふたりが座った。
男の子はプレッツェルを食べている。
寒くてマフラーをしたままでいた私を見て彼は「僕もこういう大きなマフラーを持ってたはずだから、あれを出さないとね」とお父さんに言った。
そのやり取りを聞いていて、ひと区切りしたところで、「アルザスでは朝ごはんにもプレッツェルを食べるのですか? ビールと食べるものだと思っていた」と話しかけてみたら
「いやいや、今朝はこの子が食べたいと言ったからね。普通はやっぱりビールとですよ」
とお父さんが言うので、
「私はパリに住んでるのですけれど、サクリスタン(砂糖とアーモンドをふりかけたパイ生地をねじったもの)を朝ごはんにっていうのも見たことないです」とお父さんのお皿を見ながら言うと
「あ、これも、普通は食べないです。ここのがおいしいくて好きだから、僕は頼んじゃうんだけど」と照れくさそうだった。
そっか、そうですよね、とお互いに笑って、疑問が晴れたところで身支度をし、挨拶をして、店を出る。
外は少しだけ寒さが和らいで冬の光がきれいだった。
距離感があまり分からずに歩いていたけれど、すぐ近くにカテドラルがそびえていた。
あとでじっくり訪れよう、と通り過ぎ、古物市の会場へ向かうトラムの通る駅へと急いだ。

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だだっ広い倉庫のような見本市が開催される会場での古物市には、これは収穫がたくさんありそうだ!と、着いたそばから期待が高まった。
アルザスだけに、クグロフ型が目につく。
あと、ミルクポットもけっこうあったなぁ。
この地が本拠地だったファイアンス窯サルグミンヌの食器が多い。
この会場でわかったのだが、朝イチで寄ってみた毎週開催の蚤の市にいつも出店しているプロたちが、この日はこの古物市に参加していたために、誰もいなかったらしい。
状態のよいものを揃える店でまとめて買って3軒目で、ムッシュに「もうこれ以上買っちゃだめだよ」と言われた。
あまりの荷物に、車まで一緒に運ぶよ、と言ってくれたので、いやトラムだから、とパリから電車で来たことを伝えたら、心底驚かれたのだ。
買い物に勤しんで、行きたいと思っていたアルザス料理のレストランには残念ながらお昼の営業時間に間に合わず、会場に設営されたブラッスリーでシュークルートを出していたので、そこで食べることにした。
メニューを見ると、15時からはタルト・フランべも出すようだ。
タルト・フランべは、玉ネギと塩漬け豚バラ肉、生クリームをうすーく伸ばした生地に広げて焼いた、アルザス版ピサのようなもの。
会場で出す食事でもこうやって地方色があるのは楽しいなぁ。
シュークルートもおいしかった。
最後に買い物をしたスタンドに預けていた荷物をピックアップして、次の地へと向かった。


実はここからが珍道中で、フランス全土でデモが繰り広げられていたこの日、帰りにまんまとデモ行進の時間帯にはまり、トラムが主要な移動手段であるストラスブールの市内は、交通機関がほとんど機能せず。
2駅だけ乗ったところで、トラムが迂回するために通常とは違う方向に行くアナウンスが流れた。
仕方なく降りるも、タクシーもバスもいない。
でも、TGVの時間に間に合わないのは困る。
次の地へ行くTGVはそれを逃したらもう翌日までないのだ。
両手が完全にふさがった状態で、トラムの線路に沿っていけば駅につく、きっとそれがいちばん近道だと思い、必死で歩いた。5駅分。
駅でスーツケースを預けていたので、それを取りに行くも、ロッカーのシステムが壊れていて係の人を呼ばねばならず手こずり、スーツケースにリュック、左肩にトートバッグ、右手に手提げと家出少女のような様相でものすごいダッシュでホームに向かったら……私の目の前で電車のドアが閉まった。
ごめんね〜これは私たちでは開けられるシステムになってないのよ〜、と駅員さんに言われ、漫画のようにヘナヘナとそこに座り込みましたよ、ほんと。
駅員さんに「大丈夫! あなたのチケットだったら、買い換えずに、次の電車に乗れるから!! ま、乗り換えないといけないけれど」と明るく言われた。
結局40分で行けるところを、そこから1時間20分待ち、さらに乗り継いで2時間かけて移動した。
まるでアジアを旅しているかのような思い出深き1日となりました。

この日に買ったお皿は、東京に持ち帰ります。イベントを開催する予定です。お知らせはインスタグラムでしますので、よかったらチェックしてみてくださいね。

川村明子

文筆家
1998年3月渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリにて料理・製菓コースを修了。
朝の光とマルシェ、日々の街歩きに日曜のジョギングetc、日常生活の一場面を切り取り、食と暮らしをテーマに執筆活動を行う。近著は『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス刊)。


Instagram: @mlleakikonotepodcast「今日のおいしい」 、Twitter:@kawamurakikoも随時更新中。
YouTubeチャンネルを開設しました。

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