
オニオンスープと、オペラ座でバレエ『椿姫』。
心待ちにしていたガルニエで公演中のバレエ『椿姫』。
大好きな演目のひとつだ。
毎年のことなのに師走はやはり慌ただしくて、お昼を食べそびれることがたびたび。
お昼は逃してもこの日は、夕方にオニオンスープを食べようと決めていた。
もう7年前になるが、初めて出した著書で紹介したビストロにル・プティ・ヴァンドームという店がある。
取材後少ししてから、オーナーのムッシュはリタイアし、店を売却して、ほかの人が譲り受けた。
外観も内装もそのままでメニューも変わらずに引き継がれ、店は継続したのだけれど、いつもカウンター内にいたお父さんとお嬢さんの顔がないのはやはり寂しくて、いつの間にか足が向かなくなってしまったのだ。
そう感じていたのは私だけではなかったのか、一時、店は客足が遠のいたかに見えた。
でも心の中ではずっと引っかかっていた。
前を通るたびに、近いうちに来よう!と思うのが続いて、今年になって、サンドイッチをテイクアウトしにまた訪れるようになった。
すると久しぶりの店内は、以前と同じ、むしろそれ以上かと思える賑わいで、わくわくした。
その空気に身を浸したくて、最近お昼を食べに行った。
それはそれは活気あるランチタイムだった。
そして、前は夜の営業は木・金曜だけだったのが、いまは終日ノンストップで昼から23時まで開いていると知った。
なんと、バレエを観に行く前にちょうどいいじゃない! そう思いついて、腹ごしらえに行くことにしたのだ。
チーズで蓋をしてあるかのようなオニオンスープは、スプーンを差し込むと勢いよく湯気がたった。
力みのない味が空きっ腹にちょうどいい。
隣の席の人は、白ワインに自家製テリーヌを食べていた。
寝不足で、観劇中に寝てしまうかもとワインは控えたけれど、今度はテリーヌをつまんでからバレエに行くのもよいなぁ。
今年は本当に、あまり先を見て進めないほどに毎日がパンパンで、ガルニエを訪れるのもこの日が今シーズン初。
やっぱり、いいなぁ。
『椿姫』は幕が上がった状態で舞台がセッティングされ、いきなり演者が登場して、音楽もないまま開演になる。
バレエを大好きになるきっかけとなった演目。
奏でられる曲はショパンで、観た後はしばらく頭の中をショパンが流れ続けるのだ。
幕間にホールに出ると、終演後にディナーがあるのか、赤いライティングでテーブルがセットされているのが見えた。
席に戻ると、いつもと同じように、ずーーーっと天井を見て過ごした。
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