パリ街歩き、おいしい寄り道。

クープ・マドモワゼルと、マイヨール美術館。

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一気に夏になったパリ。
日中は30度を超える街中で、アイスのカップを片手に歩く人たちとすれ違うことがなんと多いことか。
でも、本当に暑くて暑くて、私もいよいよ今年最初のクープ(パフェ)を食べることにした。
向かったのはボーパッサージュ内のカフェ・ピエール・エルメ。
オープン当初、メニューに「クープ・メルバ」とあるのにアイスクリームマシーンがまだ整っていない、との理由で食べられなかったのだ。
ところが、行ってみたらいまのメニューにはクープがなく、カップでの販売のみになっていた。
それで、久々に老舗のLe Bac à Glacesに行く。
以前はよく、ボン・マルシェやコンランショップに買い物に来ると、アイスをコーンで買っていた。
だけれど、そういえばクープは食べたことがなかったかもしれない。
と思いながら店内に入ると、黒板メニューにクープ・マドモワゼル、と書かれているのを見つけた。
迷わず注文。
すでにその名前から、なんかいいなぁと思っていたのだが、何でここでもっと早くクープを食べなかったかなぁ……と悔やんだ。
もしかしたらパリでこれまで食べた中でいちばん好みのタイプかも。
とてもおいしかった。
何ていうんですかね、完璧に商品化されたものの味、ではなくて、手作りを感じさせるというか。
作り込まれ過ぎていない、温かさ(いや、もちろんアイスは冷たいんですが)を感じた。
上にのったイチゴが室温で、生クリームも冷たすぎず、しっかり冷たいのはアイス(フリュイ・ルージュとバニラ)とイチゴのクーリ(ソース)だけ。
クープの中に3つの温度があって、それがとても心地よかった。
ちょうど小学生の下校時間で、子どもたちの羨望の眼差しを浴びながら、10分ほどで食べ終えた。
日差しが強く、汗をかきながら、頬張った。
おいしかったなぁ。
支払いの時に、毎日あるのか訊いたら、イチゴの季節は毎日ある、という。
でももう終わりますね、と言ったら、「まだ見つかるわよ。7月14日まではあると思う」とマダムは言った。
あと3週間。
週1ペースで食べに行きたいくらいだ。


rue du Bacをそのまま歩いてグルネル通りにあるマイヨール美術館へ。
7月21日まで開催の、世界的な美術コレクターだったエミール・ビュールレのコレクション展が気になっていた。
最初の展示室にある年譜をみたら、ビュールレさんの誕生日、私と同じだ。
それで親近感が湧いたわけではないが、青空の広がった風景画が連なった展示に引き込まれて、だいぶゆったりと観て回った。
ふだん特別好きだとは感じないシスレーの作品も、フランス時代のゴーギャンの風景も、清々しくて、ずっと観ていたかった。
隣の間に行くと、ファンタン=ラトゥールの絵がかけられていた。
桃と芍薬。
桃の大きさに対して、芍薬が随分と小さい。
これくらいこの時代は小さかったのだろうか。
この人の花の絵はとても好きなのだけれど、それにしても桃がおいしそうだなぁ、もうすぐ出てくるなぁ、と思い次の間に移動しようとしたらカメラに床が映った。
カーペットがピンクで、たまたま赤のペディキュアをしていたから、足元もおいしそうな色をしていた。
光が美しく描かれたコローの作品をこれまたじっくり観てから、下の階へ。
ゴーギャンが死の直前に描いたらしいひまわりと、果物の静物画が、私はこの展覧会で最も心に響いた。
このひまわり、佇まいがとうもろこしみたいだ、と思った。どこかしら切なかった。
隣のコーナーには、同時代を生き、先に死を遂げたゴッホの作品が並んでいた。

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川村明子

文筆家
1998年3月渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリにて料理・製菓コースを修了。
朝の光とマルシェ、日々の街歩きに日曜のジョギングetc、日常生活の一場面を切り取り、食と暮らしをテーマに執筆活動を行う。近著は『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス刊)。


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