パリ街歩き、おいしい寄り道。

サンマルタン運河の周りを食散歩。

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この夏に自転車を乗り始めて、気がついた。
街中で移動をするのに、メトロの駅までは中途半端に距離があり、さらに、次の目的地も最寄り駅から少し歩くな、なんて場合に自転車はすこぶる便利だ。
私はもっぱらヴェリブ(シェアサイクル)を利用していて、いまは街のいたるところでステーションが見つかるし、移動時間も短縮できて、こんなに活用度が高かったか!と目からウロコだった。
と同時に、私はよっぽどいつも立ち止まっては何かを見上げていたりしているんだなぁ、ということもわかった。
自転車に乗ると、立ち止まることがない。
それが非常に、もどかしい。
どうも私には、歩いて、何か目についたら立ち止まって、しばしぼーっと見届けるような時間がとても必要なようだ。
これはサプリみたいなものだろう。

ずっと行きたいと思ったまま、もう1年くらい行けていないパン屋さんがあった。
11区にあることだけはわかっていたけれど、ちゃんと場所を調べてもいなかった。
それで、見てみると、サンマルタン運河からほど近い。
最近あの辺り、行っていないなぁ。
おまけに、いまが旬のミラベル(スモモの1種)のショソン(=パイ)もあるようだ。
俄然、行く気になった。

でも、お腹が空いて向かうと危険だ。
きっと興奮して、買い込んでしまう。
どこかでごはんを食べた帰りに寄ったほうがいい。
週末マルシェに行く時間が取れなくて、数日、大量に作り置いたラタトゥイユと糠漬けを頼りに過ごしていたから、野菜をふんだんに食べられるサンマルタン運河沿いのIMAに行こうと思いついた。

少し早めのランチにしようと11時半に着くと、カウンターの上にはサラダもお菓子も勢揃いしていた。
入ってすぐのこの眺めがすでにいいんだよなぁ。

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シャクシュカなんかにも惹かれるけれど、今日は“本日のサラダの盛り合わせ”にすると決めていた。
大小ふたつのポーションがあって、大はかなりのボリュームなので小にして、オプションにあったズッキーニのタルトを付けることにした。
それにビーツ入りの赤いフルーツジュース。

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小ポーションとはいえけっこうなボリュームだ。
今日のサラダは、
ブルガー小麦+ネクタリン+エシャロット+ニンジンのロースト+レーズン+ピスタチオ+ミントのピストゥー+フレッシュハーブ(ヴィーガン)、
千切りキャベツ+ドライアプリコット+レーズン+コリアンダー+ピリ辛マヨネーズ(グルテンフリー)、
インゲン+シュクリン+ミラベル+赤タマネギ+ヘーゼルナッツ+ブロッコリー+デーツの糖蜜風味のドレッシング(ヴィーガン+グルテンフリー)、
の3種。
家で、自分が作るサラダとは違うタイプの味が食べられるのが、ともかくうれしい。

しっかりお腹は満たされて、運河沿いを歩き、次なる目的地、Sain Boulangerieへ。

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もともと料理人だった男性が、方向転換し、レストランを営んでいた場所をパン屋にしたらしい。
この夏はものすごく蜂が多いのだけれど、この店のお菓子には、目を見張るほどの数の蜂が集っていた。
何かフルーツの入ったクッキーだったのかな。
店内には、見るからに100%ナチュラルな空気が漂っていて、なんだかパリではないような気がした。

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目当てのミラベルのショソンに、クロワッサン、ブリオッシュ・フイユテ、看板商品の栗の粉が入ったパンなど、結局、いくつも買ってしまった。

パンを買ったその足で今度は、生産者から直接食材を仕入れるエピスリー、Le Zingamに向かった。
いつもはrue Chemin Vertにある1号店のほうに行くのだが、2号店が、パン屋さんから歩いて10分くらいのところにあるので、この日はそちらにテクテクと。
ちょうどランチタイムがピークの時間帯で、どの店もテラス席が賑わっていた。
当初9月末までとされていた、もともとはテラス席のない飲食店のテラス席の設営許可だが、10日ほど前に、来年の6月まで延長されることが発表された。
仮設だったテラス席が、これからますます充実しそうだ。

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何を買いたくてLe Zingamまで足を伸ばしたかというと、小麦粉だ。
ノルマンディーの農場から仕入れているらしい。
パンを作り始めて、粉が気になり出したのだ。

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店頭にはブドウがたくさん出ていた。
でも、小麦粉と生ハムだけを買った。

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買ったもの。
おやつにクロワッサンを食べた。

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セミコンプレの粉を使っているのか、生地がベージュだ。
気になって、ミラベルのショソンも少しちぎると、やはり茶色みがかっている。
いずれも、ほかでは出合ったことのない味だった。
こういう、その店独自の味を作るパン屋さんが少しずつできているなぁ。

川村明子

文筆家
1998年3月渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリにて料理・製菓コースを修了。
朝の光とマルシェ、日々の街歩きに日曜のジョギングetc、日常生活の一場面を切り取り、食と暮らしをテーマに執筆活動を行う。近著は『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス刊)。


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