ボローニャ「森の家」暮らし

パンに畑に家作り。わくわくバタバタ駆け抜けた5月。

藁ロールが大地に転がる季節がやってきた。

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スローフード協会の“背の高い麦”コミュニティによるパン祭りが、隣町で開催された。

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ここボローニャ界隈のアペニン山脈では、さまざまな麦が無農薬栽培されている。

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パン祭り幕開けは、子どもたちが通う学校の下にある麦畑の向こうで。ボローニャアペニン山脈の文化を保存、推奨する文化協会によるフォルクローレが青々とした麦畑に響き渡った。ちなみにこの文化協会の名前は、「そしてようこそ5月」。

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音楽があったら踊らないと。文化協会ボランティアの人たちに習って踊る、イギリスやアメリカからの参加者たちも、みんな楽しそう。

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朝7時半から始まったオープニングイベント、9時には桜の木の下で朝食が振る舞われた。

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ローカルの大人気パン屋さん、カルツォラーリの古代種麦のパンにアプリコットとブルーベリージャム、それに近くの森や草原で放牧された牛の牛乳。

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朝早かったからか、子どもの参加者は末っ子のたえだけ。

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藁が刈られた大地でパンと牛乳が、なんだか絵になる。

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二日間のイベントでは、土、生物多様性と環境の変化、種の生産、古代種の穀物についてほか、さまざまなワークショップが行われた。

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私たちは子ども向けのワークショップ「パンの話」に参加した。

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ヨーロッパ各地でパンやビールを学び、うちの近所で養蜂も始めたというフランチェスコの指導のもと、ちびっこたちはパンの成形とトッピングを楽しんだ。

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たえはポピーシードをたっぷりのせて

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オーブンへ。(その前に二次発酵)。

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パンが焼き上がる間に、古代種の背の高い麦を観察。子どもの背丈よりずっと高い麦が昔は普通だったのが、倒れると収穫できないのと、効率と生産性から、膝丈くらいの背の低い麦(近代小麦)が開発された。1940年~60年代、麦の品種改変は加速的に進み、大量の化学肥料の使用なども合わさり、小麦の収穫量はそれまでの2倍以上に増えた。一方、この品種改変がさまざまな健康上の問題を引き起こしていると言われている。

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古代小麦は肥料も農薬も不要で、栄養価が高く、血糖値の上昇も緩やか。私は週一度焼くパンには古代小麦やライ麦などを主に使っている。

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製粉は石臼で。

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みんなで力を合わせて石臼を回す。

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挽きたての粉の香りは、焼きたてのパンの香り。

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次は農家のマルコと、トウモロコシの葉っぱで人形作り。

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物がなかった時は、この葉っぱをベッドのマットレスにも使っていた。寝心地はとても悪かったとか。

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そうこうしている間にパンが焼けた。自分たちで成形した焼きたてのパン、みんな嬉しそうにアツアツを抱えて帰った。

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5月は毎日何時間も畑で過ごした。3月から苗床、植木屋さん巡りをしてさまざまな果物の木や苗を連れて帰った。

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果物の木は農家に降ろしをしている植木屋さんを勧められて何度か通った。ヨガを習っている庭師のガブリエレには、若い木は植えて1、2年はしっかりケアしないといけないので、欲張らず一年に1本のペースで植えて育てていくのが無難だとアドバイスされた。それで、はじめ3本、でも欲が出てもう2本、そのあと我慢できずもう6本連れて帰った。去年の夏は3カ月まったく雨が降らず、去年植えた木の多くは枯らしてしまった。今年5月は4日しか雨が降らず、また去年の夏のような猛暑かもしれない。でもちゃんとケアしてあげようと覚悟して植えた。果物がたわわになる庭を夢見て。

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野菜の苗の多くはオーガニックのタネから自宅で育てたけれど、温度管理の問題で発芽させるのが難しいトマトやナスは、苗床屋さんで買ったりもらったり。野菜の苗が豊富なここでは、オーガニックの苗は無いにしても、遺伝子組み換えでない苗を売っているのが嬉しい。

葉物の苗も買ったものが多い。秋から感覚を開けて植えてきたサラダ系の野菜は、少しずつ葉っぱを収穫できた。毎日日が傾いてくるとサラダ菜ほかタンポポやアオイなどいろんな種類の葉っぱを子どもたちと集めるのは楽しい習慣に。

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5月下旬になって気温が上がり、気づいたら花が咲きそうに。

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こうなると苦くなってサラダには向かない。花を咲かせてタネを集めるつもり。

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秋に落ちたタネから育ったボラジは爆発的に育ち、いろんな種類のハチたちで一日中賑やか。あまりに増えすぎたのでたくさん収穫して友だちにもあげた。育ちすぎたり、うどん粉病になったものはコンポストに。こうして数ヶ月後には肥沃な土になり、また畑に戻るのだ。

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パーマカルチャー農業に欠かせないハーブ、コンフリー。一昨年イギリスから輸入したタネから育て、去年は10センチくらいにしか育たなかったけれど、今年は高さ1メートルほどになった。地下深く根付き、さまざまなミネラルなど栄養分を地上に引き上げ、肥沃な土壌を作ってくれるのと、雨水に浸して液体肥料にしたり、葉をちぎって作物の根の周りに敷いて緑肥にしたり、栄養価の高い家畜の餌になったりと、万能。日本には明治時代にもたらされ、70年代には健康野菜として流行ったのが、その後肝機能障害をもたらす毒性が判明。現在では観賞用として出回っている。ボラジも肝機能障害をもたらす可能性があるというけれど、春先毎日料理に使っていたものの何の症状も出なかった。尋常でないほどの量を摂取しなければ問題ないのだと思う。

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カゾンチェッロの庭園のガブリエッラは菜食で、コンフリーは菜食の人に不足しがちなビタミンB12が豊富。大きな細長い葉っぱを二枚重ねて揚げ物にして、ヒラメのような感覚で食べると言っていた。ボラジもコンフリーも魚っぽい味がするのだ。ガブリエッラの料理本にもボラジやコンフリーのレシピがいろいろ書かれている。これはガブリエッラが、うちのボラジで作ってくれた詰め物パン。

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友だちのテイクアウト菜食レストランのオープニングパーティーでは、ボラジのキッシュを作った。何より、春中あたり一面に青や紫、白のボラジの花でいっぱいになる景色は幸せな風景にほかならない。

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毎年少しずつ進んでいる家のリノベーション。ここ2カ月、新しいキッチンとダイニングの工事が行われている。これは外壁の色サンプル。

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このテラス部分の左側に突き出た部分がキッチンになる。興味津々のロバたち。モモはたびたび中の様子を覗いている。夜中にロバたちの足跡が聞こえると犬たちが吠え出すので、何度も起こされた。

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新しいキッチンの隣には暖炉の部屋。暖炉の中の大きな石は外れかけていたので、補強工事をした。

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2014年、廃墟となっていた家を購入した秋。この暖炉に火を入れて、11月生まれの長女ゆまの4歳の誕生日会もしたっけ。

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暖炉の木のフレームの赤い塗装を剥がしてリフレッシュ。

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メインの梁は腐りかけていたので、もう2本で天井を補強。上には私たちの寝室があり、床はゆがんでいて振動も気になっていた。

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一本400キロほどの栗の木の梁をクレーン車で外壁から入れる。

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それから向こう側の穴にはめ込む。この梁を入れたら寝室の床問題も解決。

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昔の人は石壁もこんなに重い梁も人力で運び上げていたなんて。

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痛んでいた壁を剥がしたら、立派な石壁が出てきた。おそらく昔はこれが外壁で、増築したようだ。この壁の向こう側は納屋だったので、間違いない。

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代々建築業をしてきたパオロ曰く、この壁は1700年代のもので、一番古い家の部分は1600年代だという。

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せっかくなのでこの石壁は塗りなおさず修繕して、露出させたまま保存することに。

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素材選びも大切な工程。キッチンの壁のタイルを選びに、レベッカのところに。

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レベッカはローカルの友達で、ボローニャでタイルやフローリングなど内装および外装に使う建材を扱ったショールームをお父さんとやっている。

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石造りの家で構造上の問題で大きな窓を開けられないので、内装は明るいのがいいな、ということで、ニュアンスのある優しい白系のタイルを選んだ。

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テーブルトップはカッラーラの大理石。収納は木なのでこんなイメージ。

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帰り道、遠回りして石屋さんに寄った。パキスタンの石という文字通りパキスタンからきた硬い石は、キッチンと暖炉のダイニングの窓に敷かれた。

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こんなところに石を使うなんて、考えもしなかった。こんなディテールの妙は、40年この仕事をしているパオロのこだわり。古い家の床は絶対にレンガ、と頑固なパオロ。元納屋で私のアトリエ兼ショールーム的な空間の床は、コンクリートを樹脂加工した塗り床にしてニュートラルな空間にしたかったけれど、問答無用で却下された。でもキッチンの床は絶対に塗り床にしたい。今回はなんとか納得してくれそう。

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キッチンの窓枠は数ミリでも薄くて採光率を上げるためにも鉄にしたかったけれど、予算と時間の問題で結局木に。家のことを決めるのもなかなか大変だ。

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仲良しのベルギー人、カテリーンは去年家を買って、大々的にリノベーションをしている。彼女は大学で設計系も学び、内装を手掛けるのは得意。家業の大人気生パスタ屋さん、スフォリア・リーナの2店舗も彼女がすべて手がけた。ボローニャ店をオープンした時にはニワトリをオーダーされた。ちなみにこのタイルはレベッカのショールームで選んだもの。

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ボローニャ隣町の店の床には絨毯をイメージしたタイルを選んだ。この店舗にはランプシェード
や麦を作った。

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先日オープンしたスフォリア・リーナのパスタバー、カ・リーナ(リーナの家の意)。

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ここにはティジェッレというパンに入るバラの模様とバラを組み合わせた作品を届けた。こんなアイディアは、カテリーンならでは。

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これがティジェッレ。

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ふたつに割って、いろいろな物を挟んで食べる。

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カテリーンは、くるくる回るティジェッレディスペンサーも考案。

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私は史上初? 名前入り冷蔵庫のハンドルを作った。

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ちなみにお手洗いの天井は苔張り。カテリーンのクリエイティビティと行動力、決断力には脱帽だ。

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ヴィンテージカーでデリバリーも始めるそう。こんな可愛いお店、近くにある人が羨ましい!

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夫で生パスタ職人で、ビジネスパートナーのロレンツォ。リーナはロレンツォのおばあちゃんで、生パスタビジネスはロレンツォが引き継いだ。猪突猛進系でパワーハウスのカテリーンとうまく二人三脚できているのは、ロレンツォの懐の深さがあるからこそ。最高のカップルだと思う。

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何はともあれ、ここで暮らすことになったのは、ある意味先見の明があり、ドリーマーで決断力のあるパオロのおかげ。

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先のことはどうであれ、今こうして子どもたちと自然の中でいろんな経験をしながら元気に伸び伸び暮らしていられるのに、毎日感謝。

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家とニワトリ小屋の間のナラの木に取り付けた小鳥の家には住人が。せっせと親鳥が餌を運んでいるのを見かけて、次女のみうが足場を組んで覗いてみたら

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巣立ちを控えたシジュウカラの赤ちゃんがいっぱい。苔や羊の毛のベッドがとても愛らしい。目の前で工事しているのでさぞかしうるさいだろうけど、シジュウカラやスズメたちは外敵がら身を守るために人が住んでいる所の近くを選んで暮らしている。

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5月は巣立ちの時期。そして芍薬の季節でもある。

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幾重にも重なる花びらに顔を埋めて香りを嗅ぐ幸せ。野の花の愛おしさとはまた違ったゴージャスなこんな花も、やっぱり素敵。散り方もダイナミックでこんな生き方もいいなと思う。

今が旬の大好きな花を家でも楽しみたくて、大輪の芍薬を作った。

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本物の花の鮮やかさはないけれど、モノトーンの清さもいい。

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散った花びらが揺れるのも気に入っている。

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月末に待ちに待った雨が降り、これからまた緑が爆発しそう。

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夕食の後、すっかり日がくれたあとまで土いじりをしていたら、発光するものがあってよくよく見たら、何かの幼虫だった。蛍だ。土の中で成虫になるための部屋を作り、そこでサナギになる。邪魔してごめんね。楽しみに待ってるね。夏はもう、すぐそこ。

小林千鶴

イタリア・ボローニャ在住の造形アーティスト。武蔵野美術大学で金属工芸を学び、2008年にイタリアへ渡る。イタリア各地のレストランやホテル、ブティック、個人宅にオーダーメイドで制作。舞台装飾やミラノサローネなどでアーティストとのコラボも行う。ボローニャ旧市街に住み、14年からボローニャ郊外にある「森の家」での暮らしもスタート。イタリア人の夫と結婚し、3人の姉妹の母。
Instagram : @chizu_kobayashi

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