ボローニャ「森の家」暮らし

自然は最高の野外学校。気づきと学びの4月。

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桜が咲いてリンゴが満開の丘の上。キンポウゲや野生のカラシの花が野原を黄色く染め、晴れでも曇りでも空とのコントラストが美しい。

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それに、紫色の野生のセージ。蕾は赤みが強い濃い紫で、咲くと薄紫の野生の蘭は、季節限定のお楽しみ。

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この冬は降水量が少なく、雪もほとんど降らず、森の土も乾いていた。それでも今月下旬から雨の日が数日続き、ひと雨ごとに緑は輝きを増していく。

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いわゆる雑草もぐんぐん伸びるので、お手上げになる前に3年目のイチゴの畑を整備。イネ系の草に覆われていたこの畑。春になり目覚めたイチゴの根っこに負担がかかるので、地下茎から除去するような除草な冬の間にやるべきだったけれど、このまま放っておいては地下茎が発する他の植物の成長を害する有害物質に苦しめられて可愛そうなので、思い切ってガーデニングのフォークで土を持ち上げながら地下茎をできるだけ除去。イチゴはひとつの苗からいくつもランナー(次世代の苗)が出来、親の苗は3年にもなるとあまりイチゴをつけなくなるという。見ると、知らぬ間にランナーで増えたのだろう、イチゴ畑の外にもたくさんイチゴの小さい苗が出来ていたので、通路に出来ていた苗は囲った畑に植え直した。

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こちらも3年目になるイチゴの畑。もうひとつの畑とほぼ同じ時期に作って、苗も変わりないはずだったけれど、あまり大きくならず、収穫量も少なかった。先に作った方の畑は、雨が降った時は家の雨どいの水が通るところにあるので、もしかしたら水やりの違いかもしれない。今回新しく苗を調達して、地下茎の除去もできるだけして、思い切って作り直した。

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苗を植えたら、ストリングトリマーで除草した草でマルチング。これで湿度を保ったり、真夏の暑さから土を涼しく保つのだ。

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庭に生える草はどんな草でもコンポストで堆肥にもなるし、マルチングにも使えるし、水に浸けて発酵させたら液状肥料にもなる。ネガティブなイメージの「雑草」という言葉を安易に使うことは無くなった。ご近所さんが芝刈りした草をトラックでもらいに行ったこともある。他の人にはただ厄介な雑草でも、見方を変えればゴールドなのだ。

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畑から南側の傾斜になったところには、実のなる木をたくさん植えた。その木の周りと通り道の芝刈りをして、あとは伸びたままにしたら、子どもたちも(ネコも犬も)かくれんぼしたり迷路みたいに走り回ったりして微笑ましい。

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なんでもないけど贅沢だなぁと思う。

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春は園芸屋さんを訪れるのが楽しい季節。貴重な晴れ間に足を伸ばして「ザンの森」という名の苗木やさんへ。

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大きな店で、室内用、バルコニー用、庭用と、幅広いセレクションの植物が揃ってとても楽しい。寄せ植えの提案も上手で、たくさんインスピレーションを得た。

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ハーブも豊富。いつか庭の一部をいろんな種類のラベンダー畑にしたい。

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ここでは、サラダ菜など葉物の苗はこんな堆肥のブロックで売られている。こんなブロックは農家で使われるのは知っていたけれど、お店で見たのは初めて。ひとつ15セント。プラスチック軽減もできとてもいい。

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ロバに食べられるかもしれないので手を出していなかった大好きなスイカズラ。やっぱり可愛いので迎えることに。

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滞在時間3時間。とりあえずこれだけ選んだ。(家族とこなくてよかった‥‥‥)他にも毎年買っているオンラインショップで11種、50を超える植物の根をオーダーしたので、枯らさないように面倒を見てあげなくては。

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3年前に買ったバラの支えは痛んでしまったので、作り直さないと。バラはロバたちが食べてしまうので、ロバ対策も考えないといけない。庭仕事はいくら時間があっても足りない。

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家とニワトリ小屋の間、オークの木にある鳥の巣には、今年もシジュウカラが住み着いた。

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シジュウカラは人の近くにいるのが好きな鳥で、よくドアの近くまでやってくる。ただ、時々猫たちに捕まってしまう。うちの猫たちは幸い家には動物を連れてくることはあまりないけれど、畑にシジュウカラの片方の羽と足の残骸があってびっくりした。

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今回は少なめの4つの卵から、今のところ元気に育っているのは3羽。気配を感じるとピーピー鳴いて、お母さんじゃないとわかるとシーンと静まるのが可愛い。巣立ちまであと1カ月くらい。元気に飛び立ってほしいものだ。

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ところでうちの5羽のニワトリたち、足のウロコがめくれてきているのに気がつき、調べたらダニの仕業だとか。

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子どもたちにお小遣いあげるからとやる気にさせて、一羽ずつディッシュソープを混ぜたぬるま湯の足湯に入れてもらった。頭を隠すと落ち着くことを知っているので、こんな風に。それに次女みうのアイディアで、リラックスミュージックをかけた。すると間近で見守る犬たちの興奮気味の気配にもかかわらず、みんな静かに足湯を楽しんでいた。

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それから足を綺麗に拭いてあげて、虫除け、殺虫効果があるニームの木のオイルを塗る。

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いちばん人懐っこいローズは気持ちよかったのだろう、トリートメント中眠ってしまった。1週間後に見てみると、めくれてきていたウロコは剥がれ始めた。このあと新しいウロコが生えてくるはず。ちなみに鳥の足のウロコは爬虫類のウロコとは異なり、羽毛が二次元化したもので、ほんの少しDNAをいじるだけでウロコは羽に変わることが去年スイスで行われた実験で分かった。

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(写真はうちのニワトリがやって来たところのファームにいた足にも羽が生えていたカッコいいニワトリたち) 未だに認知されていない「恐竜の子孫は鳥類」という説は、いつか主流になるかもしれない。アカデミアは、今までの通説と異なることが提示されることに非常に抵抗する。どれだけ証拠が揃っていてもだ。『神々の指紋』や『人類前史』などのベストセラー著者で、ジャーナリストのグラハム・ハンコックは、独自のリサーチから今までの通説とはまったく違う歴史を語り、アカデミアから叩かれてきた。2年前Netflixで彼の研究の集大成的なドキュメンタリー『太古からの啓示』が大ヒットし、今までこんな話題に興味がなかった人たちにもショックを与えた。さまざまな研究者からサポートもあり、歴史は書き換えられる日はそう遠くないと思う。

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近所のカゾンチェッロの庭園は、今月、来月と毎週日曜日に一般公開を開催中。この庭を40年以上手塩にかけて育ててきたガブリエッラの家も門からのファサードも、満開の花で覆われている。

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納屋を覆う見事な藤の花は、ガブリエッラがいちばん好きな紫色。

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数年前の大風で倒れた桜の木も、横たわったまま毎年満に花を咲かせ、美味しいさくらんぼを楽しませてくれる。

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桜の脇のバラには、ガブリエッラが大好きな詩が飾ってある。「旅人よ、道はないのだ。道は歩みとともにできて行く。」

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庭園のいちばん奥にはパーマカルチャーのフカフカな土の畑に、誰もが目をみはる竹やぶ。

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ガブリエッラは、いろんな植物を触ったり臭ったり味わったりさせながら、植物学的な話から、それにまつわる伝統や逸話を聞かせてくれる。

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そして2時間以上の庭園ツアーの後には、手作りのパンに庭園の野草のディップやジャムでティータイム。ガブリエッラの家から道路を挟んで向こう側の庭園までフードやドリンクを運ぶのを手伝おうとしても、いいからいいから!と誰も手伝わせてくれない。斜面になっている庭園を、毎日重いものを持ってスタスタ降りたり登ったりする彼女は83歳。私も3、40年後もこうありたい。

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メリッサのハーブティをいただきながら、質問に答えたり、何十年前の定期購読していたフランスの料理雑誌のレシピをシェアしながら旅の記憶を紐解いたり。

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そしてみんなと熱く挨拶を交わす。ボローニャの隣の町モデナから来ていた彼女はお花屋さん。2年前から行きたかったものの予約がいっぱいで、今回念願の庭園ツアーに参加できてとても喜んでいた。

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この門はガブリエッラの魔法がかかったエデンへの門。

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これは私の畑の門。柳の枝のアーチをくぐって入る。3年前に植えた柳の枝は去年何本も枯れてしまったので、この春新たに植え直した。

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2カ月ほど水に浸けておいた柳の枝は、根っこを生やして葉も生えてきた。

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30cmほどの穴を掘って植える。門のところには4本追加。

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あと7本は、畑の中央にあるアーチに追加。

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編んだり絡ませたりして、緑のアーチが出来上がり。どんどん脇芽が生えてくるので、時間をかけて好きなかたちに作り上げていけるのがおもしろい。

しかしながら、せっかく作ったアーチは、吹き続いた強風で崩れてしまった。それだけではない、いちばんの被害は、アーチの向こうに見える、根元から折れて畑に倒れたポプラと、その下敷きになった果物の木や野菜。

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朝6時、寝室の窓の向こうに見える木々の枝が激しく風にあおられているのを見て、ロバたちや植物が心配になって窓際に立った時、畑の向こう側に生えていた高さ20mのポプラがこちら側に倒れてきた。あまりに一瞬の出来事で、言葉を失った。

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子どもたちを学校に送ってから恐る恐る畑に行ってみると、いちばん心配だったマルメロの木が根元から下敷きに。ちょうど満開に花開いていたマルメロ。植えて3年目、去年は初めてたくさんの実をならせてくれて、今年も楽しみにしていたのでショックだった。見ると根元は折れていない。それで、チェーンソーで救出を挑む。

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実はこのマルメロ、いつからか傾いていて、支えをしてあげないとと思っていながら一年間そのままだった。助かったのは、おそらく支えをしていなかったから。おかげでポプラの重さでしなって横たわったものの、幸い折れることもなく助かったのだ。

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マルメロに乗っかっていたポプラをどかせると、立ち上がった!

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倒れたポプラの枝を切って支えにした。こうして蘇ったマルメロ。アスパラ畑の上に横たわるポプラの残骸をどかしながら、思考を巡らせた。りんごと同じバラ科のマルメロの花言葉は、幸福・魅力・魅惑など。女性性を表現する言葉が並ぶ。それは、愛と美の最高位の女神と讃えられた古代ギリシャ神話の女神アフロディーテにマルメロが贈られたことに由来するとか。一方、ポプラはヤナギ科で、古代エジプトでは復活やトランスフォメーションのシンボルと見られていた。

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男性的な大きな木が女性性を象徴する木を倒したことは、何世紀もの間、男性性が女性性のパワーを恐れ、女性を圧迫し、力づくで社会を圧政してきたことの象徴のように感じられた。

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2012年に2000年続いた魚座の時代が終わり、水瓶座の時代に移行し始めた。魚座の時代は、男性性(権力や争い)の時代。水瓶座の時代は、真逆で女性性(優しさ、愛、調和)の時代。権力主義の世界は崩れ、「魂の真実」「宇宙の真理」以外の生き方は揺さぶられ、生きにくくなる。時代が変化する時には、混乱や古いシステム、古い考え方の破壊がつきもの。私たちは今まさにそんな時代を生きている。しなやかに立ち上がったマルメロの木は、「神聖な女性性の台頭」のシンボルで、長らく続いた権力や争いの時代からの学びに支えられている。時代は繰り返すというけれど、むしろ韻を踏みながらインフィニティ、無限を描いて上昇していく。そんなイメージを持っている。

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満月の数日前、ナチュロパシーのセラピストのアンナマリアと、ラジャヨガの講師、イヴァンのリードでムーンサークルが行われた。カナダのネイティブアメリカンのクランと数カ月過ごしたアンナマリアとは、女性だけのムーンサークルのセレモニーを何度か行ってきた。今回のサークルは、お釈迦さまの誕生・悟り・般涅槃といった慶事をお祝いするウェーサーカのお祭りに合わせて行われた。

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古代の仏教の伝説によると、紀元前483年、牡牛座の満月の夜、ガウタマ・シッダールタ王子(釈迦)は最高の悟りを開き、「目覚めた人」となり、輪廻転生のサイクルから解放された。彼は永遠の私服を経験する悟りの境地の敷居に立ったものの、その敷居を超える前に立ち止まり、引き返し、悩み苦しむ人間を深い慈悲の心で見つめた。それで彼は毎年牡牛座の満月に地球に戻り、すべての人類を祝福し、彼らの精神的な進化を奨励することを決意したという。

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この夜、人類と地球に教えを与えたキリストなど偉大なマスターたちとの間にコミュニケーションの伝達路が開かれ、彼らの愛と知恵が世界に注がれて、全人類を祝福すると言われる。みんなで輪になって歌や祈りや花を捧げたその中央には水が置かれ、最後には水を小瓶に分けて持ち帰り、満月の月光を浴びさせて祝福のエネルギーをチャージ。この水は、毎日少しずつ水差しや水筒に入れて希薄させて飲み、もとの水にも水を足して天然酵母のように面倒をみる。イヴァンは、ウェーサーカの水は次の年のウェーサーカまで常に保つようにしているそう。

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ウェーサーカの水を入れたのは、カゾンチェッロのガブリエッラのジャムの瓶だった。たまたまちょうどいい大きさだったので持っていったものだけど、満月と魔法の庭と、大地にしっかり根をおろした女性の知恵と、天とこの世と命をつなぐ神聖な水は最高のコンビネーションだと思う。週2回汲みにくるこの湧き水に加えて飲んでいる。

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水を汲むとき、川を訪れるときなど、母なる大地の命の血、水に感謝して、アンナマリアに教わったネイティブアメリカンの水の歌を、北、東、南、西に向かって歌う。さまざまな先住民族は水には記憶力があることを知っている。ホメオパシーも水の記憶力を利用した療法だ。それが数年前科学的にも証明され、一般的にも認識されるようになってきた。水は言葉や写真、音にも反応してさまざまな姿でメッセージを届けてくれる。私たちの中に流れる川にも毎日感謝して、身体の中の水がいつも綺麗でいられるように食べたり、歌ったり、ポジティブな言葉を使ったり、美しいものに触れたりしたいと思う。

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先日セレーナのバールに行ったら、「私たちメッカの水で乾杯しなくちゃ!」というので何のことかと思ったら、常連のムスリムの男性からメッカから持ち帰った水をもらったそう。この男性は、毎朝起きたらいちばんにメッカの水を希釈したものをコップ3、4杯飲むのだそう。私の水と同じく、使ったら水を足し、ずっと飲み続けるのだ。

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私ももらったメッカの水。この水にはメッカの祈りのエネルギーがチャージされているのね、と言うと、「そう、それでこの水を飲む人たちがみんなムスリムなればいいと願っている。」と言うので苦笑い。

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それぞれが祈りを捧げた神聖な水は、天と大地とこの身体をピュアなエネルギーで繋げてくれる。私たちは誰も空気の次に水がないと生きていけない。そんな水に、私たちの中に流れる母なる大地の命の血に、それぞれが祈りを捧げ、みんなで分かち合って乾杯すれば、世界はきっと変わるに違いない。

小林千鶴

イタリア・ボローニャ在住の造形アーティスト。武蔵野美術大学で金属工芸を学び、2008年にイタリアへ渡る。イタリア各地のレストランやホテル、ブティック、個人宅にオーダーメイドで制作。舞台装飾やミラノサローネなどでアーティストとのコラボも行う。ボローニャ旧市街に住み、14年からボローニャ郊外にある「森の家」での暮らしもスタート。イタリア人の夫と結婚し、3人の姉妹の母。
Instagram : @chizu_kobayashi

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