ボローニャ「森の家」暮らし

世界は魔法に満ちている。気付きとインスピレーションの5月。

緑が眩しい5月。ひと雨降って晴れるごとに、植物は目を見張る速さで成長する。

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この時期、毎日なんの花が咲いたかな、蒔いた種や植えた苗はどれだけ育ったかな、と観察するのが日課になる。

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ハーブ畑には、チャイブやタイム、セージの花が咲いた。ミントはこの雨で目覚めから覚めたかのように一気に伸びて来た。

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フレッシュハーブはいろいろな料理のアクセントになり、爽やかなお茶にしても美味しくて大好き。

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先月植え直したイチゴ。フォーシーズンズと呼ばれるこのイチゴは、春から秋まで実をつけてくれる。毎日これをつまみ食いするのがみんなの楽しみ。

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小粒で甘酸っぱい森のイチゴ、ワイルドストロベリー。ジャムにしてみたいけど、生のままみんなのお腹の中に。

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今年はあまりグリーンハウスで野菜の苗を育てなかったけれど、ビーツやコリアンダー、レタスなど昨年の種が落ちてあちこちから生えてきている。グリーンハウスで種から育てているのは、トマトやズッキーニ、カボチャ、ディルなど。

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10種類のズッキーニやカボチャは、名前を書いたペンが水性だったのに気付かず、どれがどれだかわからなくなってしまった。毎年今年こそいつどこに何を植えたかわかるようにしようと思いながら、いつも出来ないでいる。(でも上の写真を拡大したら少なくともこれらの名前はわかりそう!)

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アカシアの花も満開に。そしていつものように養蜂家のルカが養蜂箱を持って来た。ここではアカシアの花が終わると、ハチたちは栗の花の蜜を集めにいく。

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季節になると子どもたちが楽しみにしている、アカシアの花のフリット。

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ヒヨコ豆の粉の液にくぐらせてカラッと揚げる。

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季節の味。ほんのり甘くて美味しい。子どもたちはこれをアカシアポップコーンと呼ぶ。

この1カ月、遠出をすることが多かった。

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平日、鈍行電車でゆるゆると久々にフィレンツェへ。ボローニャまで行ったら30分でフィレンツェにいける便があるけれど、最寄りの駅から鈍行でも1時間15分ほどで行けるので、結果的にこの方が都合がいい。フィレンツェには2006年バックパッカーの時に1カ月、2008年には語学学校のヴィザを取った時に2カ月住んでいた。ちょっとした遊園地のようで、とても楽しかった。

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13世紀から6世紀かけて作られて来たドゥオーモは、何度見ても圧倒的なオーラを放っている。

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今回フィレンツェを訪れたのは、ストロッツィ宮で開催中の、戦後ドイツを代表する現代芸術家、アンゼルム・キーファーの「Fallen Angels」展を見に行くため。1945年生まれのキーファーは、ナチスドイツなどタブーな歴史的な出来事、古代の神話、ワーグナーなど歴史や文学、哲学をモチーフとした作品を製作し続けている。ストロッツィ宮に入り中庭で出迎える巨大なこの作品は、展覧会のタイトルと同じ意味の《Engelsstrurz》。反逆した天使たちが大天使により天から追放される様子が描かれている。金箔の貼られた画面上部には、大きな天使。右手は剣を構え、左手が指すアルファベットは、ヘブライ語でミカエル。画面の下の方には追放された天使たちか、逆さまの人の顔がいくつも浮かび上がっている。何層にも貼られた服、分厚く塗られた絵の具ほか、錫や植物などさまざまな素材を組み合わせた物質性を強調するような作品作りはキーファーを象徴するスタイル。

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過去40年以上にわたる絵画作品が壁と天井に並ぶインスタレーション《Verstrahtle Bilder》(放射線絵画)。これらの絵画は製作後放射線にさらしたもの。会場中央に置かれた長い鏡が作品を映し、独特な空間に。それはまるで異次元へのポータルのよう。

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南仏に巨大なアトリエを構えるキーファーは、ヒマワリをモチーフにした作品をいくつも手掛けてきた。

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太陽、生命を象徴するヒマワリ。空高く高く育ったヒマワリは、やがて思い頭をもたげ、黒い種を落とす。本体が枯れ果てても、その種は横たわる男(それはヨガのシャヴァーサナ(屍のポーズ)をするキーファー本人)に降り注ぎ、やがて新しい日が生まれ、新しく芽が生える。

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ただただ太陽に向かって育つ大きなヒマワリは、その輝きを失って枯れても勇者の彫刻のように立っている。そして何百もの種を落とし、他の生命体を支え、そしてまた新しい生命のサイクルが始まる。ヒマワリの種に金彩を施し雨に見立てるとともに、生殖、命を思わせる作品も印象的。いまの私に最も響くキーファーの作品はヒマワリの作品だ。

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キーファー展を先に見に行って、その感想を90分熱く語ってくれた親友のユリア。主に繊維を使った作品を作るアーティストの彼女が展示を見に行った翌々週に、わたしも展示を見にいき、ふたりでまた展示やキーファー、アート、スピリチュアリティについて語り合った。私がキーファー展の会場にいる時、前日みぞおちに出来た脂肪腫を取る手術をしにいったユリアに、その後経過はどうか聞いた返事のメッセージがきて、その報告に驚いた。それはなんと脂肪腫ではなく、腹壁ヘルニアで、担当医師は脂肪腫だと思って引っ張り出すも、実はそれは内臓を包む組織だったことがわかり、それをなんとかするまで完全安静、大変なことになったという。それを知ったのは、キーファーの腹部からひまわりが生えたような作品の前にいる時だった。(この作品はユリアにとっても最も印象的な作品だったという。)私はそんなホラーな話を聞きながら、横たわったユリアの腹部から巨大なヒマワリが生えていることを想像した。ユリアはしばらくキリストが十字架に磔になった時に受けた腹部の傷の絵や彫刻をリサーチしていたそうで、自分の腹部の傷はまるでそれと同じだということに気付いたという。スピリチュアルな彼女は、何かその傷を自分の身体に現実化、融合したように思える。この肉体は、魂が一時的に宿り、物質的な世界を体験するためのアヴァターだと思う私たちは、ますますキーファーのヒマワリの作品に惹かれ、ユリアの身体にできたポータルは新しいクリエーションの始まりなんだきっと、とふたりで何か深く納得した。

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ユリアは幸い数日後新たに手術をし、事を得たものの、以前とは内臓の調子が(良い方に)変わり、生まれ変わったようだという。一見不運に思えることでも、何事にもきっと学びや発見があるはずだとポジティブにいると、きっと良い周波にチューニングでき、結果的に良い運の波に乗れると思う。誤診の被害の心労や怒りに浸らず(ちなみに2度目の手術は自費で何千ユーロもかかった)、好奇心で事を乗り越えたユリアは流石だ。お見舞いに持っていった庭の黄色系の花は、腹部にある第三のチャクラ、ソーラープレクサス(太陽神経叢)の色。フィレンツェに行くと購入するサンタ・マリア・ノヴェッラのローズウォーターは、キリストとマグダラのマリアに関係するエレメントで、ユリアに是非送りたいと思ったもの。見つけようと思えば、身の回りにはサインやシンクロニシティが溢れていて、一見関係なさそうなものが繋がっていることに気付くことが多い。この世はゲーム、舞台のようで、マジカルだ。

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ユリアとは来年1月にボローニャでコラボレーション展をする準備を進めている。週1、2回ボローニャの彼女の家でおしゃべりしながら一緒にクリエーションできることは本当に幸せな時。

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浮かんだイメージを私が形にし始めて、ユリアと魔法を掛け合って行く感じが製作工程。

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これはヒーリングハンドをイメージした手の作品。ユリアとのやり取りでどう仕上がるか、楽しみ。

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トスカーナのようなイトスギとオリーブとブドウ園の景色が広がるこちらは、アドリア海の町リミニの丘の上。ここに新しくB&Bがオープンした。

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B&Bヴェルデ・オリーヴォ(緑のオリーブ)は、オリーブとブドウ農園の中にあるファームハウスを改装したもの。

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9月にオープンしたばかりで、まだ夏は未経験。これからこのプールは大活躍するに違いない。

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今日は仲良しのヴェロニカのママ、レッラの60歳の誕生日会。レッラ(写真中央)は新しいもの好きなので、ヴェロニカはニューオープンのここでお祝いすることに決めた。

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アンティパストからセコンドまで、魚介料理が次から次へと登場。

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シェフはフラヴィア。実家はパティスリーで、物心ついた頃から料理やお菓子の仕事をしてきた。テーブルをサーブする夫のダニエレは、ランドスケープデザインやインテリアデザインをしてきた。この土地は数代前からダニエレのファミリーのもの。ふたりのさまざまな情熱をひとつにまとめてB&Bを開くことにしたそう。

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クラシカルなファームハウスを上手に改装した居心地の良い部屋は3つ。

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サイドテーブルやスツール、鏡など、部屋のアクセントになるような家具は、ふたりの家具ブランド、フォルメ・エクレッティケのもの。いつかうちにも迎えたいものがたくさん。

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二人の娘たちもB&Bやグラフィックなどいろいろ手伝ってくれるそう。この日は長女とボーイフレンドがテーブルをサーブしていた。フラヴィアは料理がとても上手でレストランもできそうだけれど、今のところ宿泊者のみに予約制でランチやディナーを提供することを検討中という。さすがランドスケープデザイナーがいるだけあって、外の空間もとても素敵で、うちもこんなものを置いてみたい、あんなものも植えたみたいと夢が広がった。とっても話もあって、また是非訪れたいと思う。

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その翌週、電車でひとり、リミニに向かった。ヴェロニカが駅まで迎えにきてくれて、向かったのは丘の上のヴィッラ。ここで、週末楽しいクリエイティブマーケット、ジプシーガーデンが開催された。

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この扉をくぐってレッツゴー。

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ヴェロニカの友だち、イザベッラが主催する年に2度のこのイベントは、大好評につき徐々に大きくなってきて、今回は140もの出展者が参加。

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ライフスタイル、ファッション、コスメ、雑貨などなど幅広いカテゴリーの出展者たちは、400もの応募者から選ばれた。

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それだけのことがあり、みんなレベルが高い。

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ローカルブランド、リミニリミニバッグズは、ビーチパラソルの布のバッグブランド。

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こちらもはラベンダーを使った商品のほか、こんなテラコッタのストーブやアロマポットが素敵。

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ペットとファッションを楽しみたい人に。

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ヴィンテージの服に絵やメッセージを加えた楽しいファッション。

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クッキーだけでなく袋まで自然素材。

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子ども服もヴィッラ内観も可愛い。

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今回ジプシーガーデンで、オープニングのスタッフの乾杯のワインやフードの提供と写真を担当したヴェロニカは、6月に生まれる初めての甥っ子(か姪っ子。生まれてからのお楽しみ)に子ども服やぬいぐるみを買い込んでいた。そして自分用にこの子も。

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しばらくぐずついた天気が続いていたけれど、この週末は完璧な晴天。出展者も来場者もみんな幸せそう。

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誰よりもこの天気を喜んでいたのは、主催者のイザベッラ。とっても可愛くて優しさが溢れる彼女は、お母さんの助けもあるものの、こんな一大イベントをひとりで担っていて、本当にすごいと思う。ヴェロニカの周りにはこんなパワフルでユニークな女性がたくさんいる。

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それから友だちのワイナリー、オッタヴィアーニでヴェロニカのクライアントと会って、私も仕事の打ち合わせをして、ランチ。葡萄畑の緑と絵に描いたような青い空を誰もが楽しんでいた。

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その後ガソリンスタンドに寄って、併設のバールでコーヒーブレイク。3時にここでビールを飲む常連さんとバリスタのなんでもない会話を小耳にしながら、ジプシーガーデンやワイナリーにいた人たちやその場で感じた感覚と、この空間での感覚の差は、なんとも興味深かった。いろんな世界が同時に存在すること、パラレルワールドのテイストを体験した気がした。

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新しい小さな仲間を旅の友に、3時間弱ドライブ。向かったのはトスカーナ。

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アレッツォ近くの丘の上にある小さなボルゴ(集落)。ここに、小さな楽園がある。

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イル・カント・デル・マッジョ(5月の唄)は、シモーナの両親が安泰な職場を離れ、夢を追って、衰退していた集落の家を徐々に買い取り自ら修復し、30年前からオステリアと宿泊施設を営んできたもの。

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オステリアには日本人料理人も何人も修行にきて、シモーナの料理を受け継いだシェフが始めた同名の店が京都にある。数年前に、オステリアは昔からのお客さんだったアンドレアがシェフに。シモーナは6つあるB&Bの朝食と、料理教室、完全予約制の1テーブルレストランを担当している。

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集落から少し歩いて丘の頂上に。

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オリーブの樹の向こう、ブドウのツルの先にはプールが。

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あたりには多彩な植物が絶妙なバランスで植えてあり、水場にはカエルたちが賑やかに鳴いている。それはまるで私の理想郷。

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部屋に行くと、ベッドの上に贈り物が。

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シモーナのバラのクッキーに、バラの花びら。こんな素敵な演出をしてくれたのは、先月うちにも遊びにきてくれたガイア。今回のトスカーナへの旅は、ガイアが提案、アレンジしてくれたもの。彼女が地元のとっておきのところに連れて行ってくれるという。ツアーの名前は、レ・マンジャローゼ(バラを食べる女(ひと))。先月ガイアと一緒にきてくれたフランチェスカも合流。フランチェスカの前の夫は、この近くのワイナリーのオーナーで、ヴェロニカはそのワイナリーのコミュニケーションを担当していた時期があった。ガイアもそこで働いていたことがあり、こんなご縁でみんな繋がった。前の夫のいちばん良かったことは、素敵な女友だちがたくさん出来たことだとフランチェスカは笑う。それに、ガイアのワインつながりのフランス人の友だち、マリー。マリーはボルドーからキャンティの田舎に引っ越したばかり。彼女は失恋から生活をガラッと変えようと決めたそう。そう決めた途端、導かれるかのようにいろんなことが起こり、住んでみたかったイタリアに越してきたという。今はボルドーのワイナリーの仕事を遠隔で行なっていて、新しい生活スタイルを楽しんでいる。

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夕暮れ時、ガイアの古いフィアット・パンダに女5人ギュギュッと乗り込みガタゴト山道をドライブしながら、世界を旅したガイアの珍話逸話に驚いたり笑ったり。いくつも小さな集落を通った。ガイアはいつかこの辺りの集落の家を買って暮らしたいという。トスカーナはイタリアの中でも大人気でツーリストも多く、外国人が集落を買い占めることも稀ではない。ガイアのお父さんはアメリカ人で、かつてワインを通じてトスカーナをアメリカ人に知らせたという知る人ぞ知る存在。

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すっかり日が暮れて着いたのは、川の上に建つカーザ・エ・チリエージェ(家とサクランボ)。

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石造りの古い家を改装して住宅とレストランにしたのは、ロベルタ夫婦。ガイアは傷心でイタリアに帰ってきた後、しばらくロベルタと一緒に暮らしていた。ロベルタが切り盛りするレストランは金、土、日のみ営業で、完全予約制。メニューは毎週発表され、セコンドのみ選択肢がある。厳選したローカル素材でノーウェイスト、無駄を出さない料理を丁寧に作っている。こんな姿勢のお店、大好きだ。

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ガイアは市場で見つけたというバラの形のミツロウのロウソクをつけ、ローズクオーツを贈ってくれた。それでみんなでマッスルテストをして、それぞれ相性の良い石を選んだ。その間、ガイアはローズクオーツのクオリティをクリスタルの本から読み上げた。ローズクオーツはローズクオーツ精神的な潤いをもたらす石。

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ロベルタの素材を活かした料理は、シンプルかついろいろ発見があって、とても楽しかった。緑のイラクサのポルペッタにはすぐそこの山のヤギのヨーグルトソース。鮮やかな赤いビーツのパンにはヤギのチーズ。ハーブの香り高く、レシピを聞きたいくらいの美味しさ。

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野生のフェンネルとイワシのパスタの次は、ヒヨコ豆のディスクにグリンピースのフムス。ほんのり苦味のあるチコリのソテーとカリッとオーブンで焼いたヒヨコ豆がアクセント。

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ドルチェでひときわ輝いていたのは、エルダーフラワーとリンゴの香り高いシャーベット。エルダーフラワーシロップは毎年うちでも作っていたけれど(今年は昨年のものがまだあるので作らなかった)、今度私もシャーベットにしてみようと思った。

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ワインはガイアが自分のワインセラーから持ち込んでくれた。ロゼから始まり、ラベルに花びらが描かれていたり、どれもテーマに即したもの。このフランスワインのラベルには、Les Belles Filles、ビューティフルガールズ。ガイアは粋な演出のマスターだ。

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翌朝。日の出に合わせてプールがある庭に。

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いつどこで見ても、新しい1日の始まりにみる太陽の美しさには感動する。

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プールサイドでいつものようにメディテーションやヨガをしていたら、マリーがやってきた。マリーの両親はプールで働いていたので、マリーは小さい頃からどこででも泳いできたという。明け方のプールの水は冷たく、「息が出来ない!」と行っていたけれど、「こんな素敵なところで朝から泳げるなんて贅沢、贅沢!」と呼吸を整えて、何往復も泳いでいた。マリーは大学を出てすぐカンボジアでワインの輸出の仕事をしたり、ユニークな経験をたくさんしてきた。誰もがどん底を経験しても、それにしがみつかずに思い切って古い概念や足を引きずられるような気持ちを断ったら、新しい扉が開いた経験をしたことがあると思う。一見マイナスな経験の向こうには、必ずギフトがあるものだ。

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シモーナが焼く美味しいパンやケーキを朝食にみんなで食べたら、バラ好きのメッカのバラ園、ロゼート・フィネスキを訪れた。

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5月から6月中旬まで期間限定でオープンするバラ園には、5,000種類ものバラが育てられている。園内には30羽もの孔雀が闊歩していて、時々優雅なダンスを披露してくれた。

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このバラ園は、今バラ園を管理する三姉妹の農家のおじいさんが趣味でオリーブ園の中に植え始めたのが始まり。その後、当時医師をしていたお父さんがバラを収集することに夢中になり、家族とよりバラ園で過ごすくらい没頭していた。それで一時は6,000種ものバラがあったそう。

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バラには長い長い歴史がある。5,000年前にはすでにバラと人類の絆があり、モダンローズの誕生は150年前。大航海時代、アジアの植物が盛んにヨーロッパに持ち込まれるようになり、バラという花自体に革命が起きた。

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バラの特性(花びらは必ず五の倍数だそう!)、バラを通した文化交流、バラにまつわる物語は数え知れない。こんな話を聞くと、バラはますます魅力的に思える。

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演出に事欠かないガイアは、今まで履いたことがなかったというシルクの花柄パンツを履いて登場。素敵よ!

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2時間以上バラの世界に浸かり、それぞれ印象に残ったバラ物語を胸に、ふわふわした気分でイル・カント・デル・マッジョに戻る。シモーナの庭のバラがテーブルを飾り、ガイアが持ってきたロゼをマリーがグラスに注ぐ。

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シモーナの料理もロベルタと同じく、素材が喜んでいるような料理。テーブルにも料理にも散らされたバラの花びらは、野菜の色鮮やかな料理にさらに彩りを加えて、さらに美味しく仕上げてくれる。

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菜食は味気なくてつまらない、と思っている人はいまでもいるだろう、でも私はまったくそうは思っていない。中央にはナッツでできたチーズ2種類、右の青い色は健康食品スピルリーナ(海藻)の色。

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私はベジタリアンの料理を好んで食べるけれど、レーベルを貼られるのは好きでない。頑なになりすぎず、身体が欲するものを食べるようにしている。ベリタリアンの料理は豆料理が欠かせず、肉を焼くだけに比べて時間がかかるけれど、前日に豆を浸したり、圧力鍋を使ったり、準備をしておけば何てことはない。あとは慣れだ。そして彩りがとても大事だと思う。料理はまず目で味わうのだ。

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グリンピースのスフォルマートには、畑のプリプリのグリンピースが鞘ごとのせられていた。

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ドルチェはローストしたイチゴ、ゆず風味のなめらかなホワイトチョコレート。カボチャの種のソースは、ガイアがコペンハーゲンのレストラン、ノマで買ってきたもの。

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こんな素敵な週末を企画してくれたガイアに、今回のテーマを文字にして贈った。本当にありがとう。

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そして愛を込めた美味しい料理を次から次へ提供してくれたシモーナには、屋号をもじって、インカント・ディ・マッジョ(5月の魔法)とテーブル近くの木の枝に飾った。見ようとする人にだけ見つけられる文字。

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それは、テーブルの上のバラの花びらにハートを見つけてワクワクするようなもの。こんな発見にいつも心ときめかされる。

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世界はそんな魔法が散りばめられている。私はそんな世界を選んで生きる。そんな思いをかみしめた、マジカルな五月に乾杯。

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私もユリアも虜になったキーファーの世界を、2年に渡ってヴィム・ヴェンダース監督が追ったドキュメンタリー映画『アンゼルム"傷ついた世界"の芸術家』が6月21日から日本でも公開になる。ユリアはプレビューを見に行って感激していた。イタリアでは5月いっぱい上映していたものの見逃したので、日本にいる方は是非お見逃しなく。また、キーファーの個展が現在26年ぶりに北青山のギャラリーファーガスマカフリー東京で開催中。来年には京都の世界遺産、二条城で開催されるそう。これも機会があれば彼の圧倒的な世界観を体験しに訪れて見てほしい。

小林千鶴

イタリア・ボローニャ在住の造形アーティスト。武蔵野美術大学で金属工芸を学び、2008年にイタリアへ渡る。イタリア各地のレストランやホテル、ブティック、個人宅にオーダーメイドで制作。舞台装飾やミラノサローネなどでアーティストとのコラボも行う。ボローニャ旧市街に住み、14年からボローニャ郊外にある「森の家」での暮らしもスタート。イタリア人の夫と結婚し、3人の姉妹の母。
Instagram : @chizu_kobayashi

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