
『ライオンキング』と『アナ雪』、劇団四季の新旧の名作を観て......。
プロフィール欄の「趣味」の項目には「観劇」と書く、編集YKです。子どものころに父親に連れられた歌舞伎で演劇にハマり、大人になってからも歌舞伎、宝塚、ミュージカル、小劇場、オペラといろんなジャンルを雑食的に愉しんでいます。ディズニー映画が好きだったこともあり、親にせがんで劇団四季の『ライオンキング』を観に行ってから十数年......。今年、6月に日本初演の幕を開けた劇団四季のミュージカル『アナと雪の女王』、そして大人になって久しぶりに『ライオンキング』を観に行きました。
JR東日本四季劇場[春]、劇場エントランスに入ったところ。撮影:6月
今年、劇団四季は東京にふたつの劇場をオープンしました。地方公演や海外公演のチケットも取ってしまうような演劇好きの人はつい忘れがちですが、一般の方が「舞台」に行くのは、結構ハードルが高いもの。アクセスがよく、ともすると仕事帰りに寄れるような場所で、馴染みのあるタイトルのお芝居をやっているのは、観劇初心者にものすごく優しいつくりです。劇団四季が現在東京で運営している専用劇場は5つ。常にお芝居を上演する劇場を、都内にこれほど用意しているのは、ものすごく貴重なことだと感じます。
「有明四季劇場」入り口。撮影:10月
1月10日に、竹芝にできた商業施設「ウォーターズ竹芝」内に「JR東日本四季劇場[春]」が、9月26日には「有明四季劇場」が開場しました。現在、それぞれの劇場で上演しているのが『アナと雪の女王』、そして『ライオンキング』です。
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進化した視覚効果と、原点を感じるフィジカルな舞台。
『アナと雪の女王』©Disney_撮影:阿部章仁
『アナと雪の女王』の演出は圧巻でした。プロジェクションマッピングなどの視覚効果や照明、舞台装置を見事に組み合わせて、主人公・エルサが舞台上で吹雪を巻き起こします。どこに仕込みがあるのかわからないほど自然に、指先から光とともに雪が舞い、足元から氷柱が立ち上り、瞬く間に氷の城が出来上がり......。
2019年に東急シアターオーブなどで上演された劇団四季のミュージカル『パリのアメリカ人』でも、見事なプロジェクションマッピングでパリの街角や室内の装飾、場面転換が象徴的に演出されていました。それから2年、『アナ雪』での視覚効果は、まさしく魔法です。限りある舞台の大きさを、広大な大地や城に見せてしまう視覚効果の工夫は、最先端の舞台芸術の進化を見るようでものすごくワクワクします。
『ライオンキング』©Disney_撮影:上原タカシ
それとは逆に、日本公演回数13,000回突破という、日本演劇初の無期限ロングランを継続する『ライオンキング』。こちらは舞台にせり出す高さ4メートルの「プライドロック」を始め、高さのある舞台装置、中には竹馬などを使用し動物を多様に表現する、文楽から影響を受けたパペットなどフィジカルな表現が真に迫ってきます。バリ島などで観られる影絵芝居の演出、舞台を所狭しと駆け抜けるアフリカの動物たち……。初演から23年を迎え、四季の「古典」とも呼べるライオンキングは、天井の高い舞台で、役者が、目の前で躍動するという演劇の魅力の原点を味わうことができるでしょう。
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「できないことをできるようにする」パワー。
心潤されるのと同時に、舞台を観ているといろいろな気付きをもらうことがあります。「いま、ここ」でしか観られない、俳優の表情や発声。それに舞台演出や小道具に注目していると、一瞬たりとも目の前で起きている現象から目が離せません。特にディズニー作品の舞台版を観ていると、アニメーションで表現しているファンタジーを、どのように現実に落とし込むかという演出家の発想に驚かされます。「できないことをできるようにする」パワーをもらって、劇場から幸せな気分で帰路に就くのです。
そして劇場を後にするたび、「海外の学校で盛んなように、日本でも演劇教育が充実してたら……」と思うことも。子どもの頃に役者としての情操教育はもちろん、演出家のメソッド、大道具、小道具の製作や扱い、他の人と協力してひとつの舞台を作り上げる楽しさと大変さとを味わえたら、これ以上ない宝物になるはずなのに……。自分はもちろんのこと、将来の子どもたちにも生の舞台がたくさん観られるような未来を妄想しながら、ひとり電車に揺られて帰宅しています。
劇団四季では12月5日から、コンサート公演『劇団四季のアンドリュー・ロイド=ウェバー コンサート~アンマスクド~』が全国12都市でツアー開催される予定です。『ジーザス・クライスト=スーパースター』『キャッツ』『オペラ座の怪人』などの楽曲を作曲したロイド=ウェバー本人によるビデオでの解説とともに、生演奏と歌を楽しめるショーになっているとか。来年4月には映画『バケモノの子』の舞台化も決定、ますます目が離せません。
今年も残すところ2カ月、あと何回舞台を観に行けるか……と思案するYKでした。
●劇団四季 https://www.shiki.jp/
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