
韓国が生み出した、HYUKOHという唯一無二性。
こんにちは。編集REIです。
チャイルディッシュ・ガンビーノの新作『3.15.20』がリリースされました。あまり聴いてこなかったですが、圧倒的な挑戦が美しくまとめられた「Algorhythm」でもう虜。もうこれ以上の新しいことは、なんて思っていましたが、見事にやってくれました。
さて今回は、先日行ってきたHYUKOH(ヒョゴ)のライブについて。
2017年赤坂BLITZ「'tour' 2017 in Japan」以来のヒョゴ。今回はスタジオコーストということで、あの規模感でどんな演奏を聴かせてくれるのかと思えば。
開演時間になると、紗幕に包まれたステージがあらわに。彼らの影がぼんやりと浮かぶ中、紗幕が上がることはなくそのまま演奏がスタート。
ヒョゴって、彼らの圧倒的なセンスを楽曲やジャケットデザイン、衣装、ライブ中のMCからも感じるのですが、紗幕というこれもまたひとつのビジュアル効果ではありますが、紗幕がかかったことにより、これまで見せてきたヒョゴ4人の個体的な特徴というよりも、相対的なイメージとしてのヒョゴを伝えようとしている印象。まずはその‟ヒョゴ”が奏でる音に浸る時間を過ごします。
そして数曲を終え、ついにずっと待っていたご対面! かと思えば、幕が上がるとまさかの全員横向きで登場。
どれだけ焦らすんだ、ヒョゴ……。こっちを向いてくれ! しかも顔には仮面を被っているし、ファンはますます彼らの一挙一動に目が離せません。
ライティングは、夕暮れ時に見るようなピンクオレンジにたっぷりのスモーク。原色ではなく曖昧な色をさらに曖昧にした、徹底された掴みきれなさ。これによって、以前はひとりひとりの動きや表情、立ち振る舞いにまで注目していたのですが、今回は一歩引いて客観的に、俯瞰してライブを見る楽しさが生まれました。彼らがいま作ろうとしている、‟全体”としての美しさを体感しなくては、と。
そして数曲が続いたのち、仮面を外したかと思いきやこの日のために手作りされた被りもの(ボーカルのオ・ヒョクは愛犬を模したというハット、ギターのイム・ヒョンジェは民族風、ベースのイム・ドンゴンはニットマスク)にチェンジ。その間一切MCはなく、黙々と着替える姿を前に、一体何を見せられているんだ……? という不思議な気持ちになりつつも(笑)、思わず微笑んでしまうのは彼らのパーソナリティからくる愛くるしさ。
そう、彼らのすごいところは、とてもクールなことをしているのに、ユーモラス&キュートに落とし込んでいるところ。韓国アイドルに見るような心の掴み方をするのです。MCはいつも、「ありがとう。(歓声のあと、2分ほど沈黙)今日はたまごサンドイッチを食べました。」みたいな2言で終わってしまうんです。
膝カックンされたような気持ちになりつつ、不器用なMCにときめく私と他ファン。曲が始まればさきほどのトキメキモードから一変、ヒョゴの世界観へと一気に引き込まれます。
その後もライティングやスモークを巧みに使い、蜃気楼のようなビジュアル演出が続きます。
そんな中で聞く、オ・ヒョクのハスキーボイス! なんて色っぽくて男らしく、どこまでも届く強さがあるのでしょう(そもそも圧倒的に歌が上手い……)。彼が仮面を外した時は、会場中に悲鳴に近い歓喜の声があがりました。
そして今回、よりそのムードに引き込ませたのはグレーのスーツスタイル。
よくよく見ると、ひとりはロング丈のプリーツスカート、ひとりはスリット入りのプリーツスカートをはいているのです! ファッションセンスの高さでも注目を浴びていた彼らだからこそ、トレンド的にジェンダーレスを謳うために着ているというよりは、ジェンダーレスが当たり前のことと捉えているようなリラックス感。服に着られていない彼らの佇まいは見事でした。
これまでのライブからまた一歩深まった、ヒョゴの精神性を投影した演出とパフォーマンス。
素晴らしい体験でした。
これだからライブに行くのがやめられません。
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