Editor's Blog

森山未來が問う、日常を失った世界で、見えるもの/見えないもの。

森山未來さんは、2009年にフィガロの本特集(2009年12/20号)で取材をさせていただいてから、その後もたびたびお世話になることがありました。森山さんの俳優としての存在や佇まいが美しくて、独特の身体能力の高さやカルチャーのにおいに惹かれていましたが、ダンスを中心に活動するようになってからはさらに幅を広げられて、よく舞台を観に行くようになりました。
その後も弊誌の連載企画「フィガロオム」でもご登場いただいたり、『ヌード』展でのパフォーマンスにあたりインスピレーションを得るために向かったソウルへの展覧会視察を取材させていただいたり、さまざまな形でご登場いただいています。

そんな森山未來さん初のソロ全国ツアー『「見えない/見える」ことについての考察』が、横浜の赤レンガ倉庫1号館にて10月14日からスタートしました。
今回の公演は、2017年、東京都現代美術館のキュレーター・長谷川祐子さんから「朗読をしてみないか」という声がけにより始まったもの。朗読という形をとりながら、独自の音響にライティング、そしてダンスも織り混ざったパフォーマンス公演です。今回、ゲネプロへお邪魔してきたので少し、ご紹介できたらと思います。

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森山さんが織りなす影が美しくも不穏さを予感させる。

ベースとなる文学作品は、ポルトガルのジョゼ・サラマーゴ作『白の闇』と、モーリス・ブランショ作『白日の狂気』。『白の闇』は、ある日突然世界中の人間が盲目になってしまうというフィクション。まさに現代とリンクするパンデミックともいえる状況下で、人々はどのように新たな社会を形成していくのか、人々はどのように関わり合って生きていくのか、が展開されます。
森山さんが感じたのは、日々を生きていくなかで、自分が本当に見ているもの、見えていないものの内面的な盲目性について、非常によく考察している、考えている、ということだったそう。そこから、「いわゆる外的な、物理的な要素として盲目になるという話と、内面的に盲目であるのではないかという二つの話を考察させたらおもしろいんじゃないかな」というところへ思い至り、作品へと昇華していったそうです。

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赤や青、緑などさまざまな色の明滅のなか朗読の声が響く。

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朗読とダンスを織り交ぜて展開される、安堵と緊張感が交錯するパフォーマンス。

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森山さんのしなやかな動きとライティングが交差する。

今回の公演は、2017年初演の再演。激変してしまったこの世界で、この作品を上演することについて、「2017年の初演時には2020年の状況がこうなるとはまったく想像はしていなかったですけど、いま世界中に置かれている状況、僕らが置かれている状況、これからどういう風に生きてくのか、ある種の価値観が変動していったことは間違いないなかで、あらためてどういう風に生きていくべきか、手探りかもしれないですけど、いまこの状況においてこの作品をやる意味っていうのが、皮肉にも強く出てしまったんじゃないかなっていう印象はありますよね」と森山さん。

公演は横浜から長野、愛知、尼崎、堺へ、11月には福岡、長崎へと続きます。森山さんの朗読パフォーマンス、この機会にぜひ。

編集MIでした。

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201021-2020-10-14-16.57.52.jpg©︎RYUYA AMAO

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『「見えない/見える」ことについての考察』
神奈川公演:10/14~18 横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール
長野公演:10/21~22 サントミューゼ上田 大スタジオ
愛知公演:10/23~25 愛知芸術劇場 小ホール
兵庫公演:10/27~29 あましんアルカイックホール・オクト
大阪公演:10/30-11/1 フェニーチェ堺 大スタジオ
福岡公演:11/3 スカラエスパシオ
長崎公演:11/5~6 長崎市チトセピアホール
https://mienai-mieru.srptokyo.com

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