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かきものに耳を傾けて。

あずきで作った髭と一緒に、現代美術家・境貴雄が目指す場所。

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この奇妙なひげ「アズラー」は、いろんなメディアで取り上げられてきた。2014年春に幕を閉じた人気番組「森田一義アワー 笑っていいとも!」でも、タモリさんが髭をつけた。

発明したのは現代美術家の境貴雄さん。

あずきを顔につけ、ひげに見立てたファッションが日本で流行っているという架空の物語を作りました。それを世界中に広めるためにいろんな方に装着してもらって撮影しています。そのポートレート作品を、ウェブサイト中心に発表して拡散していくプロジェクトが「アズラー」です

 

始まりは、大学の3年生のとき。
京都と奈良の伝統建築を見て回る古美術研究旅行中、境さんの在籍していたデザイン科で課題が出された。

テーマは「伝統とデザイン」。

……和菓子だ! と境さんは閃き、京菓子を模した立体作品を提出した。その時和菓子の作品が妙にしっくりきて、あずきを使った立体作品を作り始めた。頭にかぶれる作品なども作り、その一環で髭の作品も生まれたのだという。

それが2007年のこと。それから12年間、アズラーは続いている。

実はわたしは、同じ形の集合体が苦手だ。俗に「つぶつぶ恐怖症」とも呼ばれることもあるらしい。しかし、アズラーはなぜか大丈夫なのだ。境さんいわく、1個ずつの形や大きさが異なると平気なことも多いそう。

というのも、この髭のあずきは、境さんがひと粒ずつ紙粘土で作って串に刺し、アクリル絵の具で微妙に色を変えているのだ。だから、ひと粒ずつ色や大きさが異なる。それでこそ、本物のあずきに近づけられるらしい。

それにしても、12年もあずきに向き合うのは飽きないのだろうか……。

飽きないですね。……多分、僕のもともとの性格だと思います。僕は、続ける中で見えてくるものがあると思うので。
あと、いろんな方々が装着しているので、交流が広がるんですよ。モデルさんが作品の一部になる、っていう活動に魅力や面白みを感じて、やめられないな、と

 

いままでで特に印象的だったアズラー撮影を聞くと、「まあ、どの人も印象的ですけど……」と前置きしたあとで、ベルリン出身のミュージシャン、マニュエル・ゲッチングという人の名前が出てきた。

ジャーマンプログレ、もしくはクラウトロックとも言われるジャンルの大御所で、CDも持っているくらい大好きなのだとか。11年前、そのマニュエルが境さんに連絡をしてきた。日本のフェスティバルで公演をするので、ぜひアズラーの作品を見たい、そしてモデルになりたい、と申し出てきたのだ。

バックステージで撮りました。僕の中で、彼は本当に歴史上の人物だったんですよ。そういう人が……自分の活動を通して出会えるんだっていう面白さと不思議さがありました

 

好きなものとやっていることの繋がり方が、感動的だ……。
もしや、あずきの密集している作品は、ミニマルミュージックやテクノに繋がる部分があるのだろうか。いや、それはさすがにこじつけか……。

いや、どこかで繋がっているかもしれませんね。そこに、マニュエルが何かしらの反応を示してくれたのかもしれないです

 

そんな境さんの大切なかきものは、高校1年生の時に描いた石膏デッサン。

美術高校に入学したばかりの春を懐かしそうに振り返りながら、ミロのヴィーナスを描いたデッサンを眺める。そして、「まだ下手なんですけど……」と笑った。

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いまとなってはもう、下手に描こうとしても、こうは描けないなぁっていうのがあるじゃないですか

 

下手な時には戻れない。それは、多くの人が共感できることだろう。
ちなみにこのときの絵は、どうしてとってあったのだろう?

僕、全部とっておいてるんですよ。うちの親も保管していてくれたみたいで。幼稚園に入る前、広告の裏に描いた落書きから現在の作品まで、ほぼ捨てていないです

 

それは……驚きだ。
わたしは断捨離を美学とする傾向にある。
でも境さんは、とっておいたものがちゃんといまの活動に繋がっている。後々の才能を伸ばすことにもなるという、お母様の教えだろうか。

むしろ捨てるっていうことが、僕の中でよくわからない。自分のアーカイブじゃないですか、辿ってきた道のりっていうか。
だから思い出の写真とかと一緒で、下手な作品をわざわざ捨てる必要もない、っていう気持ちで。押入れの中に、年代別に全部とっておいてますね

 

邪魔だから、恥ずかしいから捨てたいなどの衝動もまったくない、と境さんは言い切る。

見返しながら、当時どういう気持ちで描いていたのかなとか……まあ全部思い出せるわけじゃないですけど、やっぱり貴重だと思うんですよね

 

境さんがずっと愛情を注いでいるものは、アズラーだけではない。

中学生の頃から27、8年間、「電気グルーヴ」のファンだそうだ。年末は毎年リキッドルームで、石野卓球さんのDJを聴くのが恒例。

存在の仕方とか、格好いい大人像みたいなのは僕にとって彼らなので。憧れで、ずっと追いかけていますね

 

そんな電気グルーヴのメンバーをいつかアズラーにするのが夢だと言う。ただ、こうも付け加えた。

こっちから付けてくださいって言うのはおこがましいので、僕がもっと有名になって、何かの仕事で一緒にコラボできるのが理想かなって思いますね

 

境さんの一途で長い愛情は、これからも続く。

境貴雄 Takao Sakai
現代美術家。2007年に東京藝術大学大学院修士課程デザイン専攻を修了。在学中より和菓子や小豆をモチーフとした作品を発表する。小豆を顔に付けて髭に見立てた最先端ファッション「アズラー」の仕掛け人であり、これまでに4000名以上のポートレートを撮影し、多くの著名人もモデルとして参加。
テレビやラジオ、トークショーの出演、雑誌や新聞の掲載、伊勢丹やルミネといった商業施設でのイベント、ファッションブランドとのコラボレーションなど、アート界のみならずさまざまなメディアで注目されている。
また、ニューヨークでもアズラーのイベントを開催し、世界各国のウェブサイトで作品が頻繁に紹介されている。
https://takaosakai.blog.so-net.ne.jp

華恵

エッセイスト/ラジオパーソナリティ
アメリカで生まれ、6歳より日本に住む。10歳よりファッション誌でモデル活動を始め、小学6年生の時にエッセイ『小学生日記』を出版。現在はテレビやラジオ、雑誌などさまざまなジャンルで活躍中。
Instagram:@hanaechap
Twitter:@hanae0428

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