栗山愛以の勝手にファッション談義。

2023年SSパリコレこぼれ話。

宣言どおり、9月26日から10月5日までコレクション取材のためにパリに行ってきた。新型コロナウイルスの感染が拡大し始めていた中、ぎりぎりで渡航した2020年3月以来、約2年半ぶりの海外。新作やオフランウェイのレポートは日々フィガロジャポンのインスタストーリーズにアップしたのでぜひそちらをチェックいただきたいが、 せっかくの久しぶりのパリなので、こちらのブログではそれ以外のこぼれ話的なことをお伝えしようかと思う。

いつもより飛行機の出発時間が早まっていて免税店のオープンに間に合わずコスメチェックが十分にできなかったり、搭乗時間が長くなったせいで頭痛がしたりしながら無事フランスに入国。物価高やら円安やらも含めて、引き金となっているはずのロシアの蛮行を改めて恨めしく思いつつ、空港からはコロナ禍前と変わらずUberを呼んでホテルへと向かった。

到着日でもゆっくり休んでいる場合ではない。その日の夕方からプレゼンテーション、ショップでのイベントなどを我ながら精力的にこなし、最後のショーが終わったのは20時半すぎ。次の日は朝10時からショーが始まるし、そうゆっくりもしていられない。ショー会場はかのドーバー ストリート マーケットが手がけるスペース「3537」だったのだが、近辺にファラフェル屋さんが軒を連ねるのを思い出した。そこで、「L'AS DU FALLAFEL」に並んでファラフェルサンドをテイクアウトしてスーパーで買ったビールと共にホテルでいただく。冷めてもおいしい。満足して眠りについた。

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それからは怒涛の日々だった。
日中はショーや展示会を巡り、ホテルに戻ってからは睡魔と戦いながら原稿を書くというなかなか体力的にハードな毎日。そんなわけで、食事や買い物、アート鑑賞をゆっくり楽しむ余裕があんまりなく、隙間時間にショーや展示会場近くのスポットに立ち寄る程度だった。最新ファッションにどっぷり浸かれてこの上ない喜びではあったのですが。

いつもは「衣食住」の「衣」にしか興味がありません! と断言していても、パリコレに限ってはタイトなスケジュールで体力を消耗するうえに、道を間違えないように、スリにあわないようにと気を張って行動するからかちゃんとお腹が空く。せっかくならおいしいものが食べたいので、いつどこで食事時になってもいいように、常日頃からグルメ情報に目を光らせ、地図にたくさんの星印をつけているのだった。
今回は、アライアの展示会ついでに立ち寄ったショップ併設のゆったりとした雰囲気のカフェ、「DA ROSA CAFE」で食べた生ハムのリゾット、サン=ルイ島で行われた展示会のアポイントまでの待ち時間に立ち寄ったベルティヨンのアイス、展示会場の目の前のタイ料理屋「5 Baht」のカオマンガイ、最終日のディナーで訪れた「Au Coin des Gourmets」のベトナム料理などが心に残った。

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疲れ果てて外食する元気がない時や、入稿が切羽詰まっている時などはUber Eatsで有名店のメニューをオーダーできるのも助かる。四川料理「Trois fois plus de Piment」のヌードルや「ミズノン」のファラフェルサンドを頼んで原稿書きのお供にした。

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が、気づけば大半がアジア料理で、いつも堪能している王道のステーキフリットを逃しているのが心残り。コロナ禍で経営が苦しくなったのか、星印を付けていたお店がなくなっていたことも多々あり、寂しい思いもした。

そして私にとって取材の次に大事なミッション、買い物なのだが、何と私としたことがファッション関係のアイテムは一つも手に入れていない。「円安だから気をつけろ」とさんざん脅かされて腰がひけていたし(正しい)、どうしてもここで買っておかねばならない! というほど心がつかまれるアイテムとの出合いも残念ながらなかったのだ。
その代わり、といってはなんだが、ジュンヤ ワタナベでのニューロマンティック風メイクが記憶に新しいメイクアップアーティスト、イサマヤ・フレンチが手がけるブランドのマスカラとリングを「ドーバー ストリート パルファム マーケット」で購入した。これまで下向きに生えているまつ毛を無理やりビューラーで上げていたが、プラダの最新ランウェイでわざと下向きにつけまつ毛を付けているのを見て、「あえての下向きがいいんじゃん!」と勝手にポジティブに解釈し、最近はもうビューラーを使っていない。ピアス付きのパッケージも好みのマスカラで、バサバサにした下向きまつ毛を堂々と披露していきたいと思う。

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身構えていた帰国の際の書類提出については、いつか渡航する日のために、と粛々と受けていたワクチンの接種証明入手と「MySOS」アプリのダウンロードであっけなく終了。新型コロナウイルスについては、感染したとしても数日で外出できてしまい、大多数がマスクをしていないパリで過ごしていると過剰な怖れがなくなった気がする。帰国後はマスクを着用しているが、マスクありきの生活は当然、マスクもスタイリングのうち、という考えは薄れてしまった。早く日本でもメイクも含めたスタイリングをのびのび楽しめる日が来るといいですね……

リモートで何でもできる世の中になったとは言え、やはりリアルな体験はインパクトが違い、記憶にも残る。コロナ禍以降、このブログで何度もそう叫んでいる気がするが、百聞は一見にしかず。勝手知ったる日本とは異なる環境で行動し、世界中から集まった精鋭たちの多種多様なセンスを間近で見ることは大いに刺激になった。
来季も行く気満々です!

栗山愛以

ファッションをこよなく愛するモードなライター/エディター。辛口の愛あるコメントとイラストにファンが多数。多くの雑誌やWEBで活躍中。

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