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メリメロ・ドゥ・パリ/東京

ぬいぐるみのお猿に語りかけた、ジェーン・バーキンの日記。

イタリアを象徴するブランド「グッチ」が、今年9月26日にパリで初めてのデフィレを、伝説的なナイトクラブ「ル・パラス」で開催、ジェーン・バーキンはそこで「バビロンの妖精」を唄ったという。繊細な声で、ゆるやかな旋律を彼女が唄い出すと、会場はエモーショナルな熱気に包まれたそうだ。

このところパリでは再びジェーン・バーキン・ブームの到来、といえるほど、メディアに引っ張り凧だというが、それはジェーンの最新アルバム「シンフォニック・バーキン&ゲンズブール」のヒットのせいかと思っていたが、どうやらまた新たな話題が加わったようだ。

11歳から35歳まで、ジェーンがぬいぐるみのお猿に話しかけてきた日記がつい最近出版されて、脚光を浴びているという。ジェーンの、書き手としての隠された才能にだれもが驚嘆しているし、奇を衒うこともなく、事実を正確に伝えようとするシンプルな文体が、却って彼女の豊かな感性を浮き彫りにして、高い評価を受けている。

「親愛なるMUNKEYさんへ」と書かれた日記は、1巻目は11歳の1957年から始まり、35歳になる1981年までで、これから出版される2巻目は1982年から2013年12月11日までだというが、その日付はすでに報道されている通り、長女ケイトが自ら命を断った日なのだ。あまりにも衝撃の激しい娘の死後、日記を書き続けられなかったと告白している。

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華やかなスウィンギング・ロンドンの時代に思春期を迎え、当時ロンドンでもっとも流行りのクラブで、世界的な著名の作曲家で、007シリーズの曲を作ったジョン・バリーと恋に落ち、19歳で結婚したが、長女ケイト・バリーが一歳に満たないうちに、新婚家庭を出る羽目になった。

キングスロードでショッピングをしたり、その後ジェーンのトレードマークになるあの「籠」を、おしめを入れるために買ったり、ジェーン・ファンには堪らない日々が伝わってくる。

パリではフレンチ・ポップス界のスーパースターのセルジュ・ゲンズブールの妻となったが、嫉妬深いセルジュは、ロケ先まで若く素敵なジェーンに同行してアラン・ドロンに奪われないかを、見張っていたようだ。

それでもパリでは夜明けまでバーやクラブから帰ろうとしないセルジュとの日々に、疲れ果てていたジェーンの前に現れた新進気鋭の監督、ジャック・ドワイヨンの愛を受け入れてしまい、ふたりの恋人の間で何ヶ月も揺れ動く女心が克明に綴られている。

「どうして3人で暮らしてはいけないの!」と叫ぶジェーンは映画「突然炎のごとく」の一シーンみたいで、胸が熱くなる。

ファッション・アイコンというだけでなく、感情の揺れ動きを真摯に描写するジェーンは、これまで以上に身近に感じられるし、幼いケイトやシャルロット(まだルーは生まれていない)の姿が見え隠れするのも、この日記を一段と魅力的なものにしている。

日本語版の出版が待たれる。

村上香住子

フランス文学翻訳の後、1985年に渡仏。20年間、本誌をはじめとする女性誌の特派員として取材、執筆。フランスで『Et puis après』(Actes Sud刊)が、日本では『パリ・スタイル 大人のパリガイド』(リトルモア刊)が好評発売中。食べ歩きがなによりも好き!

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