
カールの猫シュペットは遺産相続したの?
チェロのレッスンを始めてもう1年近くになるのに、まるで進歩の兆しがない日々を送っている。自宅で練習してきてくださいね、と毎回石橋先生に言われているのに、返事ばかりでつい怠けてしまう。
第一自宅では聴いてくれる人もいないし、なんとも張り合いがなく、うちの猫旦那「ピカビア」ときたら、チェロを出してくると大慌てで逃げていく。香水も大嫌いだし、チェロはもっと嫌いのようだ。
エレガントなことがまるで分からなくて、無粋な猫なのね、とぶつぶつ言いながら、今日は仕方なく「喜びの歌」を弾いてみる。
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このところのウィルス騒ぎで外出を控えているせいか、自宅で過ごす時間が多くなり、ネットフリックスの大河ドラマ「ザ・クラウン」や、昨夏パリのマレ地区のギャラリーで、友人に紹介された作家で映画監督、アティーク・ラヒーミーの『悲しみを聴く石』やウィリアム・トレヴァーの短編集『密会』などを読んで過ごしている。
この世にカルチャーと猫が存在するかぎり、人間なんとか生きていけるものだ、とひとり納得しながら。
そういえば、最近うちのピカビアの写真をあまり撮らなくなったけど、それは甘えん坊のピカが、大抵いつも私に貼り付いていて、写真にすると自分のたるんだ首や、彫り深いほうれい線まで大写しになってしまうからだ。
少し前に知り合ったレイコ タジマさんのインスタに写っている猫さんたちは、おとなしく素敵なカーペットで静かに寝落ちしていたし、いつ見てもナイスショットばかりだ。どうやらご本人のレイコさんに似て、おっとりして、穏やかな猫さんたちのようだ。うちのピカのように、粗忽者の親とは大違いだ。
「埃ひとつないお家なのね」
いつもため息をついてしまう。
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猫といえば、カール・ラガーフェルドが亡くなって先日1周忌だったけど、あの遺産相続猫シューペットは、その後どうしているのだろう。どうやらいまもカールの生前と変わらず、料理人が特別にシューペットのために調理したご馳走を食べていて、とても元気だという。
だけど米国と違って、フランスでは動物は遺産相続できないので、相続はそのままになっているそうだ。その代わり「マイ・ペット・エージェンシー」というセレブのペット専門の事務所に入って、マネージメントを委託しているという。
シューペットのアカウントでのインスタも、いまでは38,000人ものフォロワーがいるし、日々更新されていて、悠々自適だという。
猫たちも、それぞれの人生を送っているようだ。
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