猫ごころ 巴里ごころ

アンチカフェって? 野外に自分のワーキングスペースをみつけよう。

 

潮騒の音をききながら、マックを膝の上にのせて、浜辺の階段に座って原稿を書いていると、緩やかな春風が通り過ぎていく。

春の訪れを感じるようになると、家の中でキーボードを叩いているよりも、つい外に出たくなる。いつの間にか猫のピカビアと海岸の散歩にいくついでに、ちょっと仕事をするのも悪くないと思うようになった。
昔南仏ニースに住む作家のJ=M=G・ル・クレジオが、近くの海岸に連れていってくれて、「僕はこの海岸に寝そべって原稿を書いている」といっていたのを思い出した。それで海辺に住むようになったので、実行してみると、なかなかいい気分に。まさか腹這いにはならないけど、階段に座って。
当時ル・クレジオは、「物質的恍惚」という新鮮な文体の作品を出していたけど、それはその海岸で書いたのかと妙に感激したのを覚えている。

フランスでも日本と同じく、コワーキング・スペース、「ビューロー・パルタジェ」が流行っていて、「アンチカフェ」というのがあちこちにあるという。どちらかというと、インテリアは無機質なオフィスというよりも、カラフルなギャラリーといった雰囲気のようだ。

 

 

先日フランスのネットをみていたら、戸外で見つける仕事場人気ランキングというのがあって、森の中や海の上、教会の中、修道院、川のほとり、孤島、などと並んでいた。やはりコロナ禍だし、閉鎖的空間に閉じこもるよりも、こうした自然の中で仕事をすれば、空気もきれいだし、ストレスも軽減されるに決まっている、とすっかり同調してしまった。
今回のコロナで得た教訓は色々あるけれど、やはり人間があまりにも自然から遠ざかりすぎた、というのが最も大きいことだと思う。

うちに出入りしている大工さんは、本職は漁師さんで、小坪で蛸を獲っている。仲間はカレイを獲っているというので、今度友人たちがうちに食事にくる時は、蛸とカレイを出すことに。逗子のスーパー「スズキヤ」さんがそれを捌いてくれるというし、いつの間にか地域密着ライフに。
メルシー 駿河湾!

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村上香住子

フランス文学翻訳の後、1985年に渡仏。20年間、本誌をはじめとする女性誌の特派員として取材、執筆。フランスで『Et puis après』(Actes Sud刊)が、日本では『パリ・スタイル 大人のパリガイド』(リトルモア刊)が好評発売中。食べ歩きがなによりも好き!

Instagram: @kasumiko.murakami 、Twitter:@kasumiko_muraka

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