
旅好きのパリのファッション・ジャーナリストが生み出したお洒落ブランド。
このところ初夏の日差しになってきたので、「I AM HAPPY ABOUT SIMPLE」とカラフルな極彩色の糸で刺繍されたカゴを持ち歩いている。普段はモノトーンなものを着ていることが多いので、そのカゴを持つと、一気に華やいだ気分になる。
アフリカンな手作りのカゴだけど、色使いがとてもセンスがいいし、丁寧に作られているので把手も丈夫で、つい重いものも入れてしまう。
日本にも少しは入ってきているそのカゴのブランド「キロメートル・パリ」は、パリの「ジャルーズ」というモード誌の編集をしていたアレクサンドラ・セネスが、立ち上げたものだ。旅行者が必要としているバッグやカゴや19世紀のメンズのシャツに、カラフルな刺繍をしたものなど、シンプルでセンスがあり、高級感のあるものを売り出していて、都市だけでなく、リゾート地でも人気が高まっている。
編集者からクリエーターへ、どのように変身していったのだろう。
「編集者だったころは、取材のためによくファッション・ブランドに招待されて、ヨーロッパだけでなくアフリカやアジアに旅をしていたの。20年近くそうした旅をしていたので、雑誌を離れて独立してフリーになると、これまで旅先で夢中になってお土産を探していた時の、あのワクワクするような情熱を、懐かしく思い出した。珍しいものを掘り出した時の、あの熱い思いが蘇ってきたの。それで旅に関係するものを、自分でも創ってみたくなったというわけなの」
旅人をハッピーな気分にしてあげたい、浮き浮きするような、陽気な夏を過ごしてほしい。そうしたアレクサンドラの想いが、色々なものに託されていったという。
今ではパリの一流ホテル、クリヨンから頼まれて、バスローブをデザインしたというが、現在も「ル・モンド」紙に挟まれた雑誌や色々なマガジンにフリーのジャーナリストとして記事を書いているので、これからもクリエーター兼ファッション・ジャーナリストいう二足草鞋は続けていくようだ。
私もパリで雑誌の仕事をしていた頃は彼女と親しくしていて、彼女をアレックス、と呼んでいたが、私生活も実にフリースタイルで、気ままに暮らしているようだった。
マレ地区にあったジャルーズの編集部にもよく遊びにいっていたが、彼女はその頃から写真のセンスが常にモダンで、ずば抜けていたものだ。
一見生粋のパリジェンヌに見えるが、実は彼女はアフリカのセネガル生まれで、それでも幼い頃にNYへ行き米国で教育を受けて、その後はフランスに移住して南仏アルルに住んでいたというから、生まれついてのコスモポリタンな環境だったのだろう。
旅人に特化した「キロメートル・パリ」は、どうやら生まれるべくして、生まれたブランドのようだ。
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