オトコが好きなファッション!? ライターの本音トーク

客が布に囲まれて、アドリブで服がつくられる舞台、「仕立て屋のサーカス」が楽しいっ。

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コントラバスの演奏者に布を巻き付けて造形していく、ファッションデザイナー/アーティスト、スズキタカユキさん。

ええ、知り合い補正っていう、ひいきめ目線が入ってることは認めますよ。
認めますけども、まー、良かったこの舞台。
「仕立て屋のサーカス」、スペイン凱旋公演。

ちゃんとエンタメしてました。
ここに来る人を楽しませようとする意識が強かったような気がします。
演目は基本的に重めなアングラ系なんですが、それがわりと苦手な私でも気分が上がりました。
お客さんは、女性が2/3かそれ以上の比率。
お洒落でキレイな人が多かったな。
屋外のフリマやアートイベントに来たみたいな、気軽なムードで。

自身のファッションブランド「suzuki takayuki」をシーズン展開しながら、演劇やダンス、バレエの衣装も手掛けるスズキさんは、布を切って縫う即興の服づくりパフォーマンスを長年続けています。
その彼が音楽演奏の仲間たちと不定期公演しているシリーズが、「仕立て屋のサーカス」です。

私が行ったのは、2018年1月13日(土)の昼の部 @新宿・ルミネゼロ。
何年かぶりの2度めの体験です。
実は、スズキさんの即興服づくりそのものは、大昔にファッション雑誌の取材で私とカメラマンの前だけでやっていただいて以来、幾度となく拝見してます。
なので今回も、繰り広げられる内容は予想がついたはずだったんですが……。

開演前の会場はお祭り気分

_1080341.jpg中央のステージ周辺では出店がたくさん。
服売ってたり、本売ってたり、酒売ってたり、弁当売ってたり、いちご(!)売ってたり、胡椒(!?)売ってたり。

_1080338.jpg床座り推奨で、お客さんがどんどん中央の演者スペース近くに寄っていきます。
床に敷かれたのは、細かく切られたベージュのコットン布。

商業施設の「NEWoMAN」(運営はルミネと同じJRグループ)の上階に位置するイベントホールのルミネゼロに入ったら、いきなり皆がわいわい飲んだり食べたりしてましたから。
「舞台公演を観るんだ!」、と、こわばってた体が一気にほどけましたよ。
写真撮影自由、出入りも自由。
「サーカスの名のもとに」ってことなんでしょーが、新宿の駅ビルの中でこのムードって、いいなぁ。
天井から吊り下げられて中央に集められた細い布は、即興パフォーマンスの重要な役割を担ってることがあとで判明します。

_1080360.jpgsuzuki takayukiアトリエスタッフも参加(左)。

即興演奏に合わせて、ハサミでチョキチョキ、演者にぐるぐる

_1080447.jpgスズキさんが袋に詰めて持ってきた布や、床の布までも拾ってハサミでカットして、ミシンでダダッと。

_1080436.jpg大胆に動き回って、布と演者を一体化させるパフォーマンス。

大きな裁ちばさみを、カッチャカッチャ動かす様子は、さながら銃を回すガンマンのよう。
suzuki takayukiのアイコンである生成り(ベージュ)の布をベースに、バレエスカートのようなチュールも活用して、人間彫刻をつくっていきます。

音楽のテイストは……、そーですね、60年代後半のフリージャズの音数を少なくしたような、暗い路地裏の哀愁系。
メロディがなく、演奏も止まったり始まったりを繰り返す抽象的なもので、男性的な印象です。
好きな人にはたまらなく魅力的でしょう。

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上の開演前写真と比べて、垂れ下がった布の形が変わってるのが分かります?
この布(ロープ)にもスズキさんがハサミを入れてカットを繰り返した結果、こんな空間に!

フィナーレは、張り巡らせたフラッグがテントのように

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ミシン台の上によじ登り、袋から紙吹雪をつかみ出して舞い上げてフィナーレ。

フラッグの一本一本をスズキさんが壁に取り付けていき、センターを天井高く吊り上げて、テントのような空間をつくったフィナーレ。音楽が、デジタルビートのような盛り上がりを見せ、終わりに向けて疾走していきました。
やってることはすっごくアナログなんですよ。
人が照明機材を持ち歩いて照らし、人がロープをカットして張り巡らし、人が生楽器を演奏する。

私が予想してなかったのは、裸足でバタバタと歩き回るスズキさんが、布をつかった空間づくりに長く時間を裂いたこと。
休憩を含めてトータルで2時間ほどでしょうか、そのパフォーマンスの主題が会場全体をつくり上げることにあったのが、思いもよらない驚きに結びつくものでした。
スズキさんを始め、演奏者の曽我大穂さん、ガンジーさん(共に、CINEMA dub MONKS)、照明の渡辺敬之さんの各々の活動を知る人、またはまったく馴染みがない人は、私とは違った思いを感じるんだろーなー、とも思いましたわ。
予備知識なんかないほうがいいこともありますしね。
(このブログの全否定)

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終演後のサプライズ

すべて終わったあと、会場にいたスズキさんにずうずうしくも近寄り、ご挨拶を。
公演を観に来た、彼と面識もあるファッションデザイナーのあゆみさんも一緒に。
そしたら……、

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床からチュールと紐を拾い上げて手を動かし、ハサミを入れて、

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その場でブレスレットをつくってくれてプレゼント!
やることが素敵すぎる。

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suzuki takayukiのウールコート着てきてよかったねー、あゆみさん 笑

スタッフさんによると、公演終了後にスズキさんは、時間があれば誰にでもこのサービスをしてくれるそう。
そういう人柄なんですね、このお方は。

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バレエのチュチュを腕につけたようなアクセサリー。
写真は激しくピンぼけ。

おまけコメント

シャイで、決して出たがりではないスズキさんが以前、子供たちに教えるワークショップに参加していたとき、なぜこうした活動をするのか尋ねたことがあります。
その答えは、
「一人でも多くの人に、『モノづくりって楽しい』、と感じてもらい、何かアクションを起こしてほしいから。僕が見せることでそのきっかけになればと思ってます」
答えを聞いた私、
「料理するのも、部屋の模様替えするのも、考え方しだいで何でもモノづくりに結びつきますよね」
スズキさん、
「僕もそう思います」

当たり前と思われる日常的なことをやってても、「自分もモノをつくってるんだ」、という意識を持てたら、前を向いて進めるのかもしれません。

レディメイドのコレクションも手掛けるファッションデザイナーの中で、アート展を開催する人はいても、画家のライブペインティングのごとく人前でリアルタイムのクリエイティブを見せる人は世界的にも珍しいでしょう。
演劇にうとい人(私のような)でもワクワクできるこのイベントの体験を、ぜひ皆さんとも共有したいものです。

仕立て屋のサーカス
www.circodesastre.com

PS.
なんか頭ぼーっとしてて、気づいたらまっとうな紹介記事になっちゃったわ。
このフィガロブログでそういうのは気恥ずかしい今日このごろ。

© Kazushi Takahashi

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高橋一史

明治大学&文化服装学院卒業。編集者がスタイリングも手がける文化出版局に入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。担当ジャンルは、ファッション&音楽。退社後はフリーランスとして、原稿書き・雑誌編集・コピーライティング・広告ディレクション・スタイリングなどを行う。

kazushi.kazushi.info@gmail.com

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