旅するミュシャ#9 シスレーの雪景色

 ミュシャさん、今日はシスレーの雪景色を旅するよ。

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中島健太『旅するミュシャ-ルーヴシエンヌの雪-』2022年 油彩。

 

ミュシャ 梅雨目前の5月に雪景色なんて、画伯もなかなか勇気があるわね……。

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ただの紙袋もミュシャにとっては大事な隠れんぼのお気に入りスポット。誰かにとってじゃなくて自分にとって価値があるものを素直に選べば人生は楽しい(笑)。

 

 描いた頃はちょうど東京にも雪が積もる頃だったんだよ……笑。

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ミュシャ 画伯の季節無視のセレクトはともかくとちて、この作品自体はとても素敵だわ。

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アルフレッド・シスレー『ルーヴシエンヌの雪』1875年、油彩。オルセー美術館蔵。

 

 シスレーは印象派の画家の中でも風景画の名手として知られているんだ。生涯で900点ほどの作品を残したと言われているけど、風景以外のモチーフの作品はわずか20点程度と言われているよ。

ミュシャ とっても素敵な画家さんだけど、画伯は前回シスレーを紹介した時に「印象派の中で4番目に有名」と言ってたわ。それは何故かちら?

 それはね、シスレーは風景画の名手ではあるんだけど、彼と言えば「これ!」というモチーフが無いんからなんだよ。

ミュシャ どうゆう事かちら?

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オーギュスト・ルノワール『アルフレッド・シスレーの肖像』1868年、油彩、EGビュールレ財団蔵。

 

 たとえば、モネと言えば「睡蓮」、ルノワールといえば「ヌード」、そしてドガと言えば「踊り子」……といったような「〇〇というばこれ」という画題がシスレーには無いんだ。これは長い絵画史において名前を残すには致命的とも言えるんだよね。

ミュシャ 素敵な絵を描くだけではだめなのかちら?

 ルネッサンスから数えても700年以上の長い長い歴史の中で、多くの天才たちが傑作を生み出してきた。素敵な絵だ、というだけでは歴史にはなかなか残れないんだね。印象派の兄貴分カミーユ・ピサロはシスレーのことを「最も印象派的な画家」と評しているくらい、技術的にも優れた画家だけど「印象派」と聞いた時にシスレーをいちばんに思い浮かべる人はあまり多くないんじゃないかな?

ミュシャ 画家さんは自分とも、歴史とも向き合わなければいけないおちごとなのね。画伯は歴史に残れそうかちら?

 随分気の遠くなる話だけど、僕にしか描けない作品を人生をかけて追求していかなければいけないよね。シスレーは生前なかなか作品が売れなくて生涯経済的恵まれる事はなかったそうだけど、それでも描くことをやめなかった事は、心から尊敬だね。

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家に来た時から一緒の卵のぬいぐるみ。いまでも大事な大事なお気に入り。

 

ミュシャ シスレーさんの作品はとっても優しい雰囲気があってあたちは好きだわ。画伯も参考にしてみたらいいと思うわ。

 アドバイスありがとう笑。実直に作品作りと向き合いながら、それでも見逃される才能がある、というのが芸術の世界の厳しい現実でもあるけど、時を超えて誰かの心を打つことが出来るのも芸術の素晴らしさだからね。頑張らなきゃ!

ミュシャ あたちの毛並みもすっかり冬からは生え変わってるのだから、次は季節に合った作品をお願いちたいわね。

 了解しました笑。次回はその前に「第二回チャリティオークション」の結果のご報告をさせて頂くよ。

ミュシャ とりあえず、たのちみね。

中島健太

1984年生まれ。画家として情報番組コメンテーターやドラマの美術監修など多方面に活躍。今まで描いた作品1000点以上が完売している事から「完売画家」と呼ばれる。 全国で個展を開催。YouTubeでライブペインティング「旅するミュシャ」を放送中。ミュシャにはちょろい同居人と思われている模様。著書『完売画家』(2021年、CCCメディアハウス刊)が全国書店で発売中。現在はTOKYO MX「バラいろダンディ」の火曜コメンテーター(隔週)としても活躍中。
YouTube: 画家 中島健太
Instagram: @painterkenta
Twitter: @oilpainternk

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